呑気すぎる浪人時代

久石あまね

楽観的にもほどがある

 僕は高校3年生のときに高校を辞めました。

 なぜ辞めたかというと勉強についていけなかったから(言い訳)、全く勉強しなかったからです。ハンドボール部に所属していたのですが、頑張るわけでもなく、適当に参加するといった具合で、勉強が全然できないといった環境でもなかったのですが、なぜか怠けていて全然勉強しませんでした。


 おかげで留年しかけて、なんとか進学できたのですが、年上の先輩に恋して、勝手に失恋し、完全に生きていく気力を無くしたので、進学と同時に学校を辞めて、通信制の高校に入り直しました。


 通信制の高校は月2回の通学でよく、身体に負担はなく、気分よく通えました。

  

 そしていよいよセンター試験がやってきました。     


 しかし僕は2教科受けて急に集中力がなくなり、ソワソワしだして、帰りたりと思って、何を思ったのか、そのまま帰りだしたのです。しかし試験の途中で帰ることは許されず、全教科終わるまで保健室で寝かされました。(試験内容の流出を防ぐため)


 そしてしばらく経ってダメ元である私立大学を受験したのですが、男なのに急に恐くなり、試験会場から逃げ出してしまったのです。

 

 戦わずして逃亡したのです。落ちるのが怖かったからでしょうか。


 自分でもよくわかりませんが、急に理性を失い逃げ出したのです。


 ノイローゼだったのかもしれません。


 そして春になり浪人時代に入りました。


 浪人時代は予備校には通いませんでした。


 いわゆる宅浪ということをしました。  


 しかし僕は家に友達を呼び、プレステのサッカーゲームをしたり、公園でキャッチボールをしたりしました。


 特にキャッチボールにハマり、貯金を切り崩し、オーダーメイドをして自分専用のグローブまで作ったのでした。

  

 そしてあかつきには、草野球チームまで作って代表にまで僕はなったのです。

 

 そしていつの間にかノイローゼも次第に落ち着いてきたのです。


 草野球のおかげでしょうか、いや友達のおかげでしょうか。


 僕は草野球のおかげで完全に元気になっていたのです。


 そして11月になり、母親が一通の地元の私立大学の願書を持ってきました。歴史を学べる学科がありました。試験科目も現代文だけでした。


 僕はそこの大学を受けることに決めました。


 でも全く勉強をしていなく、受かるかはわかりませんでした。


 とりあえず試験科目は現代文だけなので、漢字の勉強だけしました。今更読解力は上がりません。もう手遅れです。


 試験の日がやってきました。


 僕は問題を見て心の中でガッツポーズをしました。なんと漢字の問題が知っている漢字だったのです。


 僕はついていると思いました。


 しかし、文章問題は壊滅的で、運任せで問題を解きました。


 数日後郵送で合格通知が届きました。


 僕はなんと試験に受かったのです。


 漢字の勉強だけで大学に受かったのです。


 なんて運の良い男なのでしょうか。


 1年前のあの試験のときの恐怖感はこのときの幸福のために用意されていたのでしょうか。


 神様のはかりごととしか思えません。

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