「グキボン」と呼ばれた思春期の頃

逢坂 純(おうさかあつし)

思春期の少年の一大問題!!!

大人と言うのも子どもと一緒で、結構残酷なものです。思春期の少年の僕は、そんな大人の一人に純粋な心を汚された犠牲者の一人だったのです。それも立派なお医者様に……。

僕は後天性てんかんという病気でした。3歳の頃に頭を開いて手術し、今現在に至ります。僕はそのために幼いころから、てんかんの痙攣の発作止めの薬を飲んでいました。

薬と言うのは、副作用を伴います。そのてんかんの薬も、それに漏れず副作用がありました。僕の薬の副作用は、歯茎が丸く腫れるというものでした。僕はその副作用の効用を後になって知るのですが、その当時は歯茎が腫れていたのが薬の副作用によるものだったとは、思いもよりませんでした。通常の歯茎はキュッと絞った三角形を形作るものなのですが、僕の歯茎は、丸く膨れてピンク色になった歯のクッションのようでした。その時僕は中学生でした。思春期の真っただ中でした。そんな僕は、腫れた歯茎を必死で隠そうと、常に口を閉じて毎日を送っていました。

大人と言うのは、残酷なものと先ほど言いましたが、子どもというのも、無神経で残酷なものです。

僕は膨れた歯茎のせいで、クラスメイトの友人から「グキボン」というあまりにも不本意なあだ名を付けられていました。

本当に子どもというものは、残酷なものです。

「グキボン」、あまりにも無神経な、中坊が見た目だけで付けたネーミングセンスのあだ名ではないでしょうか。

ある日の病院の診察日に僕は、いつも通っている脳外科の先生の診察をいつものように受けていました。どんなタイミングで歯茎についての話題になったのかは忘れましたが、僕が歯茎が腫れている話しを主治医に言いました。すると、主治医は笑いながら

「あはっはははは!それは薬の副作用のせいだよ。気になる?」

と余りにも軽口で言ったのです。

「言ってなかったっけ?薬変えようか?」

思春期だった僕の歯茎の黒歴史を返してくれよーー!と僕は思いながらも、

「はい……、お願いします」

とだけ言いました。

薬を変えたそれからの僕の歯茎は、腫れも引き、人と話しをする時も、三角歯茎で大口を開けて笑うことができました。あの時、偶然にでも歯茎が腫れている話しを主治医にしていなかったら、もしかしたら未だに僕は「グキボン」と呼ばれていたことでしょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

「グキボン」と呼ばれた思春期の頃 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画