明日また

@3232742096

第1話  

「あっそうだ。今度、紹介したい人がいるんだけど。」


 結がその言葉を口にしたとき、危うく卵焼きを、丸呑みしそうになってしまった。とりあえず何か反応しなければと私は卵焼きを飲み込んでから、 


「えっ ついに?」


  と今まで感じていた疑問のなかで、最上位を占めていたものを答えた。確かに、遠くで一人暮らしをしている娘が、こんな梅雨の時期に帰ってくるなんて、どうしたものかと思っていたのだ。


「まあ大切な人の1人や2人はいますよ〜」


  結は顔を赤くして照れているが、2人いても困る。それにしても娘が結婚を考えてる人がいたなんて、全く知らなかった。


「彼氏ができたことも知らせてくれなっかったし、よっぽど真剣だったんだ。」


 と私がしみじみとしていると、


「あっでも、彼氏じゃなくて彼女なんどけどね。」


 と結はなんてことのないように言った。私は次に、納豆かけご飯に取りかかろうとしていたが、慌てて箸を置いて、


「女の子なの?」


 と驚いて言った。結は私の顔色をうかがうようにまゆをひそめて、


「やっぱり、反対する?」


 と残念そうだ。

                          

「反対はしないけど…」


もちろん、反対をするつもりなど微塵もない。ただでさえ、多様性の社会だと唱えられているから、それが当たり前だと思う。けれど、どうしてだろう?と思ってしまうのだ。


 結は昔から、好きな子ができたら、しょっちゅう私に報告していた。

真人君が好きになったんだ。好きな人ができたんだ。とか、高校生のときは、韓国の人気ボーイズグループに夢中になって、私と東京までグッツを買いにいったではないか。     今までを思い返すと、女の子が好きだと言ったことは一度もない。それなのに、相手が女の子だなんて、急に恋愛対象が変わることなんてあるのだろうか。 


「今までは男の子が好きだったのに?」


と思っていることを口にした。すると娘は呆れた様子で、


「お母さん。それはかなり時代遅れだよ。今は別に誰でも好きになっていいんだから。調べれば、いろんな恋愛の形があるってすぐ分かるよ。」


とやれやれとため息をついた。


そんなふうに言わなくてもと内心ムッとしたが、娘の彼女さんに会うためにも、色々調べようと思う。


正直パソコンも使い慣れないのだが。

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