だから自分には詩を書く事が出来ない

榊琉那@屋根の上の猫部

形にもなっていない何か

自分には詩を書く事など出来ない。

理由はわかっている。

自分には目に見えているものしか書けないから。

創造者クリエイターが持っている、見えない部分を見るまなこ

それは自分は持っていないもの。

どんなに欲しくても手に入れる事は出来ないもの。


自分の奥深くにある、闇の部分。

そこには創造力の詰まった箱があるはずだ。

中には言葉の結晶や音の香りが入っている。

優れた創造者ほど、巨大な容積を誇る箱を持っているはず。

でも自分にはその空間にすら近づく事が出来ない。

入口さえどこにあるかわからない。

入り口の鍵さえ誰が持っているかわからない。


自分には、創造者がどのように作品を具現化するのかわからない。

新しいものを生み出そうとしても、出てくるのは偽りのカケラ。

目で見えたものしか作り出せない。それはただの飾り物。

欲しいものは洗練された自分の言葉。輝きのある美しい言葉。

嘘で固められた言葉なんて要らない、必要ない。


創造者には見えるだろう。自分の底にある深い空間。

可能性に満ちた場所。素材がゴロゴロ転がっている場所。

創造者は言葉の結晶を拾い、磨いていく。

人には当たり前に出来るだろう事が、自分には出来ない。

自分の言葉が見つからない。


扉の鍵を持っているのは、自分の中にいる狂気なのか。

それとも、うろついている絶望だろうか?

どちらも自分の中にいるはずだが、

姿を見せようとする事はない。

もっとも、出来る事なら会いたくはないのだが。

しかしながら、いつかはじっくりと向き合わないといけない。

その時が来るのはいつだろうか?


意を決して闇の部分に向かったとしても、

闇に自分が立ち尽くすだけ。

手探りで掴んだものは、封印していた過去の後悔。

そんなものはいらないと投げ捨てる。

結局、先には進めないではないか。


だから自分には詩が書けない。

詩のようなものを書こうとしても、

出来上がったのは何かの残骸のようなもの。

創造力の箱を見つけて綴る自分の言葉。

姿を見せるのはいつの日か。



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