ランダムポップの宝箱

竜田くれは

宝箱の仕組み

 家に帰る途中、跳ね回る宝箱を見つけた。

「なんだあれ……」

 周りの人々は誰も反応していない。それが見えていないようだ。

 バウンドする宝箱は道行く人々を避けながら進んでいく。

 興味が湧いたのでついていくことにした。

 幸い宝箱の移動速度は自転車程速くはなく、早歩きで追いかけることができた。

 宝箱は路地の行き止まりで動きを止めた。

 RPGで配置されてそうな場所だな、と思って観察していると、宝箱の背後にワームホールが開いた。

 そこから出てきたのは手足の生えた宝箱だった。

 それは動かない宝箱の方を向くと、手を器用に扱い箱の中身を取り出し始めた。

 取り出した謎の珠や札、宝石などをワームホールに投げ込み、新たにこけしや本を丁寧に並べた。そして、箱を閉じた。中身を入れ替えられた宝箱は光輝き、再び跳ねて何処かへ行ってしまった。

 それを追おうとすると、作業を終えた彼、ないしは彼女?は話しかけてきた。

「追わない方がいいと思いますよ」

「どうして?」

「探す楽しみが減るではないですか。代わりに質問があれば私がお答えしましょう」

「それはあるけど、何で話せるの?さっきのは何なの?」

 箱の上部をパカパカと開閉しながら宝箱は答える。

「そうデザインされていますから。先程のは入れ替え作業ですね」

 宝箱は続ける。

「時間が経った宝箱は中身が賞味期限切れになったり、プレイヤーにとって需要の無いアイテムになったり、空になったりする為こうして中身を入れ替えて補充するのです」

「なるほど、時期によってアイテムが違うのはそういうことだったんだ」

 そしてここで補充していたのか。

「それでは、ごきげんよう」

 そう言い残すと、宝箱はワームホールに消えていった。

 実際に開けてみたかったな、なんて宝箱のことを考えながら家に帰ると、自室にワームホールが開いた。

 そこから出てきたのは一つの宝箱。

 ランダムポップかな、開けてみようと手を伸ばすと、開いた口に噛まれた。

 ミミックだった。

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ランダムポップの宝箱 竜田くれは @udyncy26

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