土の宇宙

鉈音

土の宇宙

            \世界が箱型であること/

            を発見したのは錬金術師達

            だった。彼らが言うには、

            この世界には8つの頂点が

            存在し、我々の体を無限に

            圧縮すればそこから外側に

            出られるのではないか、と

            いうことだった。なるほど

            ビッグ・バンや超ひも理論

            よりは直感的だ。二次元の

            体を捩り絞り、細く細く、

            /つまり、こんなふうに\

\体を細く。線のように/\変えて、通り抜ける。/\……うまくいかない。/

所詮我々の体は二次元図形であるから、どれだけ体を絞ろうと、一次元図形には

なれないということなのかもしれない。あるいは、どれだけ細い線になろうとも

頂点はしっかりと閉じていて、貫通することはできないのか。それとも、8つの

頂点のどこかに「正解」があって、そこからしか出られないのか。いずれにせよ

我々に許される手段は多くはない。二次元平面上に存在する我々は、三次元立体

である箱には際限なく収容される。それはある意味ではいいことだ──この世界

に終わりが訪れることはない。少なくとも、収容限界という意味では。しかし、

都合の悪いこともある。我々にとって、三次元立体は越えようのない線、いや面

となるからだ。一次元図形である線が二次元平面上をどれだけ伸びていこうと、

二次元平面を脱出することはできない。線は所詮二次元図形の断面に過ぎない。

/体を細く。線のように\/変えて。貫通する──\/──うまくいかない。\

            \アプローチの問題か?/

            しがない字の身ではあるが

            いろいろと試してみよう。

            今回のように、箱の表面に

            取り付く機会はそうない。

            どのようにしてこの機会を

            得たのか──それはまあ、

            錬金術師達の研究成果、と

            しておこう。ご存知の通り

            錬金術は、三次元の図形を

            扱う学問、そして技術だ。

            /高次元図形の解釈は、\

            \我々には少し難しい。/

            我々が生活しているのは、

            あくまでも二次元平面だ。

            錬金術師ではない私には、

            あまりに難解な理論は理解

            が及ばないが、箱、つまり

            正六面体が対応する元素は

            土。万物根源、アルケーは

            土だったわけだ。とはいえ

            それがわかったところで、

            今役に立つとは思えない。

            /最後にもう一度挑戦だ \

                         \

                           アブラカダブラ……

                           ……あれ?

                           あっ、出られた!!

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土の宇宙 鉈音 @QB_natane

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