第27話長野の№112




買取りの個室では、魔石が山積みだらけでテーブルからこぼれ落ちた。

ああ、床には数十個も転がっているよ。


担当職員を入れて5人がアタフタしてた。


小声で「これが青い魔石なの・・・」


「こっちの大きな黄色魔石の方が高いはずよ」


担当職員は、キッとキツイ顔になった。


「無駄口を叩くのは、後にしてちょうだい」


後輩の2人は、バツの悪そうにしてた。

そして集計が終わったようで紙に殴り書きされている。


黄魔石  321個×4万円=1284万円

青い魔石  34個

大黄魔石  55個


「今日は、魔石が多いようですが、ダンジョンで何かありましたか」


「え!なんと言いますか・・・地下7階に行きました。そしてオーク150体と戦いました。もう死ぬかと思いましたよ」


あ、呆れ返った顔で見られたよ。


「よろしけれなメモリーカードをください」


あ、忘れてた。

ボディカメラからメモリーカードを引き抜いて手渡す。


手元のノートパソコンに差込んで見てる。

ああ、早送りしてしているな。

あ、ストップして「ギャー、ギ、ギ」などが聞こえ出す。

「ベキ、バキ」と骨をへし折る音まで・・・



女性職員の顔の変化が激し過ぎて感情が分からん。

メモリーカード抜き抜いて「宮下、これを副局長に、急ぎで」


宮下と呼ばれた男性が受取って足早に立ち去った。


「それでは、改めて黄魔石321個で間違いありませんね」


「はい、間違いないと思います」


嫌々、数えてないよ。

数えるのあきらめた。


「それでは、1284万円を振込みで処理します」


ああ、この金額を現金でくださいっと言っても無理がありそうだ。


俺は、担当者に礼を言って分かれた。




エレベータで上がって部屋に入ったら荷物が届いていた。

部屋の清掃も済んであってゴミ箱は空っぽだ。



ダンボールを開けて取り出す。

オークの骨で作った矢尻だ。


もう1つの箱には、カーボン製の矢だ。


その矢には、矢尻はない。


なので骨の矢尻を1つ取る。

骨の矢尻なんて、よく作った物だ。

先は尖っていいる矢尻には、ネジがついてるタイプだ。

よくもネジなんか・・・職人技かも。


矢に矢尻を回しながら付ける。

最後はペンチでギュッと絞めて完成だ。


ああ、119本も同じ作業か、内職をしてる気分だ。


やっと終わった。



あの時の戦いで俺の矢は、めちゃくちゃ踏まれて使い物にならない。


それを予見したように注文して良かった。

無限バッグに入っている大きな骨を武器に出来ないかと考えた時だ。


そして閃いた!


巨大オークの骨で矢尻を作る発想はヤバイ。



それにしても業者に頼んだ時は、相手も驚いていた。


だから言い値で注文したら引き受けてくれた。


あ、矢尻は後で明細書を送るって言ってた。

どこだ・・・あった。


1個800円か・・・高いの安いのか分からん。

まあ骨だから特注だ。


矢は、1ダース29250円×10=292500円。

ちょっと注文にこだわり過ぎた。

しかし頑丈でいい矢だ。


ユミが回復したら無限バッグを持たせよう。

あの時、かろうじて弓は無事だった。

ユミの矢も探したがなかった。


しかし、今度から特注の矢がある。

矢が無くなった無限バッグから、この矢を使えばいい。

あれ!無限バッグは、俺専用だ。しかし、ユミは仲間だから大丈夫だろう。





あ!目覚ましが鳴った。

スマホを取って急いで止める。


ああ、連続予約してたんだ。

予約解除を忘れた俺が悪い。


仲間がダメージ食らったから今日は、休みだ。



テレビを見ながらミックスナッツを食べる。

これも部屋に常備されてた。

中々の味で美味しい。


そして紅茶を飲む。


部屋の電話が急に鳴った。

え!誰だろう。


電話に出て驚いた。

三山さんだ。


「あんた、今日は休むみたいね。だったら付き合いなさい。ここの駐車場に待ってるから」


言うだけ言って切ったよ。


何だろう・・・変は頼みなら断ろう。

そんな考えを巡らせて着替えて行ったよ。



車に乗るよに言われて乗ったら走りだした。


「あんたには、普通自動二輪免許をダイレクト受験してもらうわ」


「え!なんで・・・今からですか」


「そうよ・・・なんか文句でもある。このタブレットで勉強しなさい。学科試験は全て載ってるから、技能試験も動画があるから本能に従いなさい」


え!めちゃくちゃだよ。


「勉強してないのに取れますかね」


「だから勉強を今からするのよ。あなたは知らないけど冒険者は、頭も運動能力も半端ないのよ。1度見たら覚えるわ」


なんとなく、そうだろうと思っていた。


「なぜ、普通自動二輪免許を取らせるのか理由を教えてください」


「ここのダンジョンは、1週間って言ったわよね。長野に帰っても長野の№112のダンジョンで黄色魔石を持って帰って欲しいの・・・冒険者ギルドのお願いかな」


お願いって言っても・・・すでに村長にも話が付いてるのだろう。




あ、あれが運転免許試験場。


試験場の受付で待っていた女性から住民票の写し、運転免許申請書、筆記用具を手渡された。

運転免許申請書には、必要事項も書かれていて、顔写真も貼ってあった。

ハンコも押されてたよ。



俺の到着に合わせるように適性検査が始まった。


学科試験は、スラスラと書いた。

俺も驚いた。


技能試験もNGはなかった。


後は合格発表を待つだけだ。

ああ、緊張してウロウロ歩き回る。


「あんた、デンッと座れないの・・・」


そんな事、言われても・・・


合格だった。

嬉しくなって三山さんを見た。

何見てんのって顔だ。


ここは「よく頑張ったわ」と言う場面だよ。



応急救護講習はパスだ。

冒険者登録時の講習映像にあったからだ。

それに試験の費用も冒険者ギルドが支払っていた。


普通自動二輪免許証を何度も見かえした。

ちょっと変な顔なのは何でだ。



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