第24話アイテム




地下6階通路でゴブが勢いよく飛んだ。


そのまま骨トンファーを真横に振って、巨大オークの腹を斬り裂く。

え!そして裂いた中に、たまたま入ってしまう。

それは偶然の出来事だった。


「なんで、そんなことなるんだ」


そんな時だ。

巨大オークは「ドン、ジャ」と倒れ込んで、のた打ち回る。

ああ、小腸が腹から飛び出しているぞ。

暴れるから「ベチャ、ベチャ」って音がしてるよ。


動きが止まったと思った瞬間に、裂いた腹からゴブが出てきた。

なんと抱えた物を放り投げる。


その時に「ブチ、ブチッ」て切れる音がした。


巨大オークは消えて、魔石と投げた物が残った。


赤い血の塊のようにも見えた。


「これって何だ」


「ギ、ギャー、ギャー」


このまま放置も出来ない。

リュックからタオルを取り出して拭いた。

あれ!これって胃袋。


パンパンに膨らんだ胃袋だ。

30センチ×40センチの胃袋って、巨大オークから考えて小さい。

その胃袋から何か白いものが出てる。


取りあえず胃袋の中に入っている物を掴んだ。

それは、1本の骨だった。


「え!この骨が胃袋に・・・めちゃでかい骨だぞ」


まだ何か入ってる感じだ。

しかし、中は黒くて歪んだ空間のように渦を巻いている。

手を入れても大丈夫なのか疑問だ。


「ギャー、ギャー」「ギャー、ギャー」とうるさくゴブがわめく。


良いもの取って来てやったぞ。

そんな風に言ってるような気がする。


その言葉を信じて手を突っ込む。

お!感じるぞ。

感じたままの物を取り出す。


俺の手は、無くなってなかった。

手には、黄色い魔石だ。


出るよ出るよ、出た物に驚愕してしまう。


130センチの骨6本。

170センチの骨8本。

直径10センチの大きな牙40本。

薄い黄色の魔石1個。

黄色い魔石6個。


これって共食いしたって意味なのか・・・

凶悪過ぎる展開だぞ。


それに胃袋の大きさに対して、あまりにも量が多過ぎだ。

これって何でも大量に入っちゃう胃袋かも。


あ、胃袋が小さくなりだす。

なにも考えずに魔石をあわてて戻す。

あ!元の大きさに戻ったぞ。

これって魔石から魔力をもらってる感じかも・・・



そして170センチの骨を入れたり出したりして試した。

胃袋を突き破ることもない。

これって使えるぞ。


血で汚れたタオルで胃袋の出口を縛る。

新しいタオルで入口を結んで、タオル同士を結ぶ。

胃袋バッグの完成だ。





巨大オークを倒しまくる。

折りたたみバッグに入れて4個たまったら、胃袋バッグに移す。

ああ、強く結んだから、ほどくのが面倒だ。


固く結び過ぎなんだよ。

持った感じも軽くて胃袋バッグは、便利なんだよね。



あ!そうか・・・

折りたたみバッグに胃袋を入れて、口を1つ開けた状態にすればいい。

カラになった折りたたみバッグに胃袋を入れて、ファスナー部分に口が開いた状態にする。

開いた入口は、オドロオドロした空間のままだ。

見ていたら気分が悪くなってきたよ。

だからタオルで蓋をして隠す。




大きな魔石を20個以上も入れた。

それなのに全然重くない。


「ギ、ギャー、ギ」


ゴブが指差す。


「あ!階段だ」


腕時計を見る。


18時22分。


帰る時間を入れて、引き返すしかない。



「今日は、帰るぞ」



「ブヒブヒ、ブー」


「ギャー、ギャー」


「ブヒブヒ、ブー」


「ギャー、ギャー」


「ギャー、ギャー」


「ギャー、ギャー」





それにしてもダンジョンから出る時は、躊躇ちゅうちょしたよ。

胃袋バッグが消えてしまう可能性もあったからだ。

バッグを抱えて出た俺は、なんだったんだ。

出口を出てもバッグは消えなかった。

胃袋の入口は、勝手に閉じてた。


そんなバカな・・・


手を近づけるとスポッと手が入った。

入口が手を包んだ状態だぞ。

胃袋にも、それなりのルールがあるらしい。

地上では、あの空間を見せられないルールが・・・




買取りの個室で、胃袋バッグから大量に魔石を取り出した。

骨は保留だ。



「それは、なんですか!!」


「巨大オークの胃袋です。大量に物が入ることが分かったので使ってます」


「よろしければ、わたしも手を入れても大丈夫でしょうか」


「大きい薄い黄色い魔石1個は、取ってはダメですよ。取ったら縮んでしまうので」


「わかりました」


恐る恐る手を入れようと「あれ!手が入らない」


「そんなバカな」


俺は、横合いから手を伸ばす。

簡単に手が入った。


「見てください。ちゃんと入ってます」


買取り係りの彼女の手は、何か得体の知れない物に阻まれていた。


「もしかして、俺だけしか使えないのかも・・・・・・」


巨大オークから奪った胃袋に、最初に手を入れた。

死んだオークの胃袋を奪って、持ち主が俺に代わった感じかも・・・

そんな風に説明したよ。


「明日もダンジョンに行かれますか」


「はい、行きます」


「何時に行かれますか」


「そうですね・・・今は、20時22分なので9時に行きます」


「申し訳ありませんが、9時まで預かっても良いでしょうか。珍しいケースなので調べさせてください」


「壊した場合は、弁償ですよ」


「それは分かっております。ちなみに弁償の金額は」


「そうですね・・・3億円で」


権力の前で、俺なりの交渉で上手く乗り切った。


「明日の9時には、返してくださ」


もし、使え無くなったら3億ってくれるかな・・・




ああ、レストランのバイキングに間に合わない。

無常に閉店の札が掛けられていた。


21時に閉店。


俺は、一瞬。

同じ階の高級レストランを思い浮かべる。

ああ、やっぱり無理だ。


エレベータで1階に行って、コンビニで弁当を買った。

俺みたに買う客が並んでた。


弁当と菓子パンとお茶を買って帰る。





最上階の部屋に入って弁当を開ける。

あ、目の前に高級そうなお茶セットや紅茶セットが棚にあった。

あれ!あれれ、こっちにはブランデーだ。

これってジャパニーズウイスキーの1本6万円だ。


シャンパン、赤ワインもあるぞ。


嫌々、その前に酒なんか飲めないよ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る