残酷な世界なんて呪いましょう

芳乃しう 

第1話 部屋

私は世界を呪う他ないのでしょうか? あ、どうも失礼しました。名乗りもせず突然このようなネガティブ〜な話をするのは気分も害されたと思います。私の名前は......やっぱり名前なんて些細な問題ですね。読者皆様の想像の名前でお楽しみください。星宮きらりとか乃木坂椿とかカッコ可愛い名前をどんどんつけてください。どのような名前でも私のものと違う美しいものになるであろう事実は心躍るものです。けれども何かしら私が私だとわかるようなシンボルだとかそう言うのは必要かなと思うので、黒髪で紫の花飾りを付けた制服に身を包んだ女子高生を思い浮かべてもらえると私がぼやんと形を作るでしょう。可愛く想像してくださいね、と言うのもなんだか烏滸がましいですが可愛いのは事実なので私は別に否定しないことにします。語り手がどんな見た目をしているか決定したところで私の一人語りを始めたいと思います。つまんない、面白くない、早くどこかに行けば?これらの言葉はよく同級生に言われた言葉ですが、運よく主人公ポジションを任されたような気がするのでこれらの言葉は無視したいと考えています。我ながらなんという余裕なのでしょうか。この余裕さは核戦争を起こしかけた米国の某大統領もぜひ官僚は君にとラブレターをよこすほどの余裕さです。三年前の私は余裕がなかったので同級生の何人かはしばらく学校に来なくなりましたが。余裕がないと恐ろしいですね、人間というのは。そこから成長した私は人間らしさを失ったと考えることもできますが、余裕がある人間は大人ともまた言われるので、オッケーですね。社会に万歳! ちなみにこの一人語りは今自室でしています。ぶつぶつ声が聞こえるのはお兄ちゃんも不気味に思うかも知れませんがお兄ちゃんはお兄ちゃんで大抵おかしい人なので別に大丈夫でしょう。血は争えないと言うことなのだと思います。私が隣の部屋にいるのに今日も彼女とイチャコライチャコラ。親がいないのをいいことにやりすぎです・・・ろくな大人にならないんでしょうね、彼らは。さっき灯油をお兄ちゃんの部屋の前に塗っておいたので、彼らのうち一人は絶対転けて頭を打つことになるでしょう。愉快です。あ、私は別に悪くないですよね?言っても聞かない相手には手を出す以外の方法がないのです。これでも譲歩した方なんですよ、可愛い私は。火をつけないだけマシです。火を付けるのは秘技ですけどね。滅多に出さない最終兵器です。勘のいい方ならお気づきですね。私をいじめていた同級生は私に家を燃やされて途方に暮れたのです。ふふっ、思い出すと少し愉快ですね。わた、わた、私の・・・と泣きながら何を言いたいかわからない彼女の顔は大変そそられるものでした。その日私は下着をびしょびしょにしながらファミレスのドリンクバーで祝杯を挙げたものです。友達宅は大火事、私は大洪水です。家に帰ってきてからはもう最高でした。盗撮していた彼女の顔を見ながら狂ったように何度も絶頂に至ったものです。放火はとても楽です。灯油を撒いて、そこに火炎瓶を投げ込む。燃えてしまえば証拠も残りません。残ったのも、同級生だけでした。しかし、家を燃やされた子は感情を失ってしまったようで、もう私は自慰のタネにも使えません。使えば楽だけど失ってしまうものも多い。そういうわけでやはり放火は最終手段になり得るということです。惜しいですねこのジレンマは。おや、何やら女性の喘ぎ声が壁越しに聞こえてきましたね。ベッドもギシギシ音を鳴らしているようです。前戯も無しとはやはり性欲ばかりの私の兄とその彼女はろくな大人にならないに違いありません。リビングに移動しましょうか。お気に入りの猫ちゃんの人形ももちろん私の両手に抱えられてリビングへ直行です。さて、そろそろ語り始めましょうか。マッチを滑らかに指に添わせて。ドアが開いたら擦れるように、そっとお兄ちゃんの部屋の前に。お兄ちゃん達が言葉を失うまでの間。少し短い時間ですが、世界を呪って生きる私の生き様をとくとご覧いただきたいものです!!そういえば死ぬ直前ってセックスの100倍気持ちいいらしいですね。彼らも絶頂の中で死を迎えられて幸せでしょう。


まずは私が生まれた時のことから話しましょうか。身長体重とも平均的でなんてことなかったようですが、どうも表情が死んでいたようです。けれども女の子ということで親戚一同とても私の誕生を喜んでいたそうです。何が嬉しいんでしょうね?日本では一日に1500人も生まれるなんともありがたい神の力が働いているというのに。その代わり1000人が死んでしまうんですけどね。私はごく一般的な名前をつけられ、普通に育てられるはずでした。はずでした、なんてことを言うと何か子育てに予定外のことが起きたように思われますが私は今の今まで手のかからない子として両親からもおばあちゃんやおじいちゃんからも可愛がられています。可愛いのは当然なんですけどね、えへへ。問題を感じたのは私の方です。これは全部あとから気づいたことで、当時の私は知る余地もなかったことですが、幼稚園時代の私というのも中々にやんちゃなことをしていたようです。ボロを出しやすかったとも言えるでしょう。そんな中でここまで何事もなく成長できたのはとても運が良かったのだと思います。嘘です、何事かはあったんです。一人だけ、犠牲になってもらうほかなかったのはとても残念でした。いや別に残念ではないんですけどね、あいつが悪いんだし。子供というのは純粋無垢なもので、なんでもはっきり言いますし、やりたいことはなんでもやるのです。そのため口論は絶えませんし、喧嘩も絶えません。私がしていた純粋無垢的な行動はいろいろありますが代表的なものをいくつか。まずは積極的に刃物を使う遊びをしていました。当時の私はカッターで人を切ると大声を出すか黙るかが面白くてしょっちゅう人を切っていました。ふふっ、なんで気づかれなかったんでしょうね。不思議です。水が近いところか、私の近くに他に自然に皮膚が切れるようなものが置いていたのかも知れません。それか単に気づかれなかったんですかね? 今となってはどうでもいいですけど。次に友達ごっこです。いやぁ懐かしい。当時の私は今みたいな陰キャではなく陽キャでしたから友達がたくさんいたのです。というのも私のおやつが増えるようにしたかっただけなんですけど。男子には耳元で「好きだよ、〇〇君」と言い頬にチュッとするとみんな私にメロメロでしたし女子も「可愛いね」と声をかけるとすぐ仲良くなれたものです。当時の私なら湘南の海でもナンパしまくりのビッチになれていたでしょう。みんなからおやつをせしめていたというわけです。ただおやつが目的だったので彼らは半分、いや9割ほど目障りな存在だったので次の三つ目の話につながります。私は彼らが私に過度に関わらないように調整をしていました。2階から落としてみたり、わざと積み木を顔にぶつけてみたり。物理的に距離を取ろうと言うお話です。バレないようにね、刃物の時とは違ってそこはなぜか理性が働いていたわけです。

「ごめんね、大丈夫?」

とわざとらしく声をかけて先生に後は任せる。こんなことを何十回も繰り返したわけです。最終的には積み木が悪ということになっていてとても面白かったです。2階に塀ができたのも爆笑ものでした。全部私がやったのに、と。ふふっ。以上が幼稚園時代の私の純粋無垢的行動ですが、いやぁ私らしいですねぇ。可愛くてチュウしたいぐらいです。今しちゃいましょう、手の甲にチュっと。ああ、何か性的なものが湧き上がるようです。じわじわと広がっていくのが感じられます。私は指を少しだけ陰部の中に入れます。くちゅくちゅと何やらいやらしい音がします。ああ、ああなんて可愛いのでしょう私は。ダメです、このままではイってしまいます。

「はー・・・ふぅ・・・」

限界のところでは理性を働かせて溢れんばかりの性欲を抑え込みます。まだクライマックスには早いですからね。そんなこんなで私の幼稚園時代の続きの話をしたいと思います。私は幼稚園の先生にも誰からもよく可愛がられていましたが、一人だけ私のことを疑っていた先生がいたのです。その方は20代後半の女性の先生でした。初めて会った時から私にあまりいい印象を持っていなかったようで。何か怯えた表情をしていたのを覚えています。こんなに可愛いのに。目をつけられていたというのが分かりやすい表現で、積み木での事故と転落事故と出血事故が回数を重ねてきたあたりで私を監視するようになりました。当時の私は天真爛漫でしたから、監視される前も後も大して行動に変容はなかったわけで、事は起こります。なんとみられてしまったのです、私に無理矢理チュウしようとした男子の頬をカッターナイフで切りつけたところを、そしてその男子を踏みつけていたところを。視線を感じて振り返ったんです、私は。ばっちりと目があって数秒間互いに見たままでした。なんだかシュールで笑えますね。あ、ああ、あああああああ。と意味のわからないうめき声をあげて彼女は血を出して泣く男子に近寄っていきました。私は直感で何か不味い気がするるなと思いました。私の快活で楽しい生活がどこか遠くに行ってしまわれるように感じられたのです。私は好きなものはとことん好きになる性格の人間ですから大好きなこの生活に終止符が打たれるなんて! と思い私はその時夕方のアニメの後にやっていたサスペンスドラマを思い出しました。瓶で人の頭を叩くとそこから動かなくなるのだと。だから、私は投げました。私がお気に入りにしていた少しデカい石を頭に。そのあとはまぁ大変でしたね。泣きじゃくる私と男の子と動かない先生の三人が発見されるんですから。あ、もちろん私は嘘泣きでした。泣くと大人は私に寄り添うのをよく知っていたのでこれでもかというほど可愛らしく、庇護欲をそそり立てるような泣き方で騒ぎを見にきた先生に抱きついたものです。下部の膨らみに頬を擦りながらもちろん私は言いました

「〇〇君(名前が思い出せません)が、無理矢理私の体を触ってくるの、それで、私、私・・・うぇーん」と。もちろん右手のハサミを掲げるのも忘れていません。その先生はもちろん私の見方をしましたが、結局怪しいところは残ったわけです。どうなるのかなと子供ながらに不安でしたが、今回の事件をなかった、というより一連の事件をなかったことにしたかった幼稚園側は幼稚園を閉園してしまいました。死者一名、負傷者は全体合わせて両手の指では数え切れないほどです。今では幼稚園跡が何もない私の街のスポットになっているらしいですよ。ふふっ。地域の観光振興に一役買ったというわけです。これなら公務員の試験を受けた時も話のネタになるかも知れません。もちろん言うわけはありませんが。私は当然容疑者扱いを受けていました。何せ石に私の指紋が付いていた訳ですから。しかし私はまた泣きながら言うのです。

「怖くて、ぐす・・・わた、私。石・・・投げっちゃた・・・」

そう言うわけで無罪放免とされました。賢い私も可愛いですね。精神鑑定なんかもされる予定でしたが、いつの間にやら切っていた指の治療と私の両親が猛反対したことで無くなったようです。今でも指には切り傷の跡が残っているんですよ、人差し指の第一関節辺りに。ぺろっと舐めてみました。さっきまで食べていた茶菓子の味がほんのりとします。あの時は鉄の匂いで酷かったものですが、思い出というのはやはり、あとから思い出すと美化されるものなのですねぇ。ふふっ、美味しい。本当に美味しい。私の指の切り傷はこれほどまでに甘美で濃厚な匂いと思い出を含んでいるのです。ああ、興奮してきました。絶頂は最後に取っておこうと思いましたが、いいですよね、幼稚園編が終わりということで亡くなった先生の分も、いいですよね。ね?ね?私はもうたまりません。理性が保てなくなりそうなのを脳細胞の一つ一つが指摘しています。カチッと何かが外れた音がしました。ここからは読者の皆様の想像にお任せしましょう。


換気!消臭!清掃!ついでに服も着替えました。幼稚園時代を懐かしんでキャラもののパンツを履いて、ワイシャツを一枚だけ着ることにしました。裸ワイシャツです! 可愛いでしょう、えへへ。ペロペロと指を舐めてしゃぶり続けるのは幼稚園児みたいで端ないのでやめることにします。私は成長したので、大人なので! 幼稚園時代のお話だけでなんだかお腹いっぱい、というか絶頂を迎えたのでそう感じているだけかも知れませんが次は私の小学生時代の話をしていきたいと思います。しかしパンツにワイシャツ一枚だと暖房が効いていないこの部屋ではとても寒いですね。心はほっかほか、なんなら先ほどまで私の体は文字通り火照っていたわけですが今ではそのことが私の体を冷やしているようです。机の端に置いていたお気に入りの猫ちゃん人形はそんな私を見て興醒めしたのか体を冷やしています。端ない姿を見せてごめんね、と私はぺこっと頭を下げ彼女と一緒に炬燵に潜ることにしました。ああ、暖かい。行為の後の炬燵は最高ですね。心と体の乖離が少しずつ溶け込んでいくような気がします。素肌でコタツの火に当たるのはいささか危ないような気もしますが、不注意で寝でもしなければ大丈夫でしょう。そういえばこの子との出会いも小学生に入ってからだと思います。幼稚園の一件があった後、私は近所の公立小学校へと進学することとなりました。不幸なことに私の周りには幼稚園時代の知り合いなんていうものは存在しておらず、またあの一件から私は大人しく生きることを肝に銘じました。何かまた起こしてしまえば今度こそ楽しく暮らせなってしまう。子供というのは思い込みが激しい生き物なので、私は体の内から出てくる衝動をなんとか抑えに抑え小学校生活を送ることを心に決めていました。そんな時にやってきた子がこの子です。おじいちゃんが友達がいない私のために入学祝いとして三毛猫の様相をした人形を私に送ってくれたのです! 私は大いに喜びました。これでどうにでもなる、と。その日からは楽しい日々が続きました。暴力的衝動を全て彼女にぶつけ、誰かを切り刻みたいという衝動を全て彼女にぶつけました。私の生活はとても満たされていきました。お母さんに嘘をついてまで学校を休んで彼女とのひと時を過ごしたものです。縫い目の一つ一つが彼女との思い出を彷彿とさせます。今では自慰行為のみに使うようになった彼女ですが、それでも親友であることは変わりありません。いつも私のそばにいました。そしていつも、私を見ていました。彼女に嘘はつけません。あの時も、そばで私を見ていましたから。小学四年生にもなると次第に私の学校生活の風向きが変わったように思います。私のことをとやかく言う輩が出てきたことが最初の理由でしょうか? 男子が私の体を執拗に触ろうとしてきたり、私に悪口を言うようになったのです。気持ち悪いだとか、魔女だとかそのような侮辱を私にけしかけてきたのです。破壊衝動が起こせない学校の中で私のフラストレーションはたまるばかりでした。彼らはそれを抵抗していないと解釈して私を責め立てます。私は、心底学校にいきたくないと思うようになりました。彼女と過ごす方が何倍も楽しいからです。私が学校を休みがちになって、あれは一週間ほどのことだったでしょうか。その状況に変化が訪れました。名前が思い出せませんが、プリントを届けにきてくれていたある同級生の女の子が私に構うようになりました。彼女は家に来て仕切りに

「あいつらはもう大丈夫だよ、ほら学校に行こ?」

と私に声をかけていました。話によると彼女は私をいじめていた男子たちを先生に告発することによって学校が安全圏になったことを私に伝えているようでした。また

「一緒に学校で勉強して、遊ぼ!!」

と可愛らしく私に声をかけるのでした。私は彼女のことなど心底どうでもよく感じていたので、毎回素っ気ない態度を取っていましたが、彼らが私をいじめないのならばいいかなと思い。次の週から学校に行くことにしました。子供ながらに賢かった私は小学生は普通学校を休んだりしないということを社会的に理解していたので純粋に彼女に対して感謝を送りました。おや? 私はふと視線を感じました。玄関の方から誰かがこちらを見ている気がするのです。彼女のことを思い出したからでしょうか? まあいいでしょう。そんなわけで私は再び学校に通うことになりました。相変わらず友達と呼べるような人間は存在しませんでしたが、頻繁に彼女が私と一緒に行動することが増えていきました。彼女は中学受験を控えているということで学校の外で遊ぶようなことはありませんでしたが、彼女ばかりにかまってもらうのは、むず痒い気分がしていた私は、彼女をお家に招待することにしました。私のお気に入りのお人形さんを見せたら彼女も満足して後ろめたさもなくなるであろうと考えていたのです。あの日のことはよく覚えています。嬉しそうに笑いながら、とびっきりのお気に入りの服を持ってくると言っていた彼女の顔はとても美しかったものです。一目惚れ、してしまったのです。とても可愛い、あの柔らかそうな手を握りたい、血色が良くてプルンとした唇を奪いたい、彼女の陰部を弄りたい、整った綺麗な顔を殴りたい、細い手首を刃物でスーッと切り付けてみたい、ツヤツヤとした綺麗な黒髪に火をつけたい。放課後、彼女を手招きしました。おいで、おいで私の家においでと。彼女はとても楽しそうでした。無邪気に笑って、お土産だよ、とお菓子を持ってきてくれて。そして私の部屋に入った時に。私は彼女の頭を砂でいっぱいにした麻袋で、後ろから殴りました。コテっと倒れ、動きません。今、思い出してもあの興奮は忘れ難いものです。好きな子を、好き放題できる。

「......ッ......ハァ........あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

私は襲い掛かりました。抵抗できない彼女の服を切り裂き、柔らかい手を力一杯握り、唇を乱暴に奪い、彼女の陰部を執拗に弄り、キスをして彼女の顔を殴打して、手首にカッターで線を入れ、黒髪に火をつけました。何度も、何度も、何度も絶頂しました。場所も弁えず、部屋中に私の香りをぶち撒けて。ああ、楽しかった。とても楽しかった。今思い出しても、それだけで至ってしまいそうです。だけど、その時の私はあることに気づいてしまいました。冷や水をぶっかけられたような感覚でした。猫ちゃん人形が私を見ていたのです。見たことのないような鋭い目つきで、私が絶頂に至るのを見ていました。私は熱が冷めていくようでした。水風呂に使った時のような冷たさ。心地よい落ち着きの中で私は彼女をまず一階まで引きずっていきました。血をガーゼで止めて、ペットボトルの水を髪にかけて、丁寧に私の存在を消していきました。残ったのはうすら汚い女の子でした。汚い、見ていられないような触りたくもないような、汚い女の子でした。私は女の子を自転車に固定して、外に出ました。そして飲酒運転の常習犯の大学生に、私と自転車と彼女だった体は轢かれたのでした。死者一名、重症者一名。私は何ヶ月か意識を失っていたので、彼女の最後を見ることはなかったです。しかし原形がわからないようだと言われたその姿には、まだ私の興味が残る物でした。私は長い入院の期間を経て家に戻ってきました。何ヶ月かぶりの自宅はとても心地が良くて、さまざまな些事が一気に終わったような解放感に満ち溢れていました。綺麗に整頓された部屋に戻ってくると、猫ちゃん人形が机の上にちょこんと座っていました。あの時のような鋭い目つきはそこにはもうなく、優しい目で私を迎えていました。

「君も、大怪我をしたからね。許すよ」

そういう風に言った気がしました。言外に、次は許さないと言われているように思われました。その日から私は猫ちゃん人形を自慰の道具として使うようになったのです。ほら、許して。可愛い私だよ。以上が私の小学生時代の話となります。長いこと喋りましたね。私は隣にいる猫ちゃん人形に目を向けました。今日も優しい目で私を見ています。その目を壊さないように、私は猫ちゃん人形に陰部をなすりつけました。猫ちゃん人形は全部見ている、冷めた冷淡な目で私を見ている。あとは読者の皆様方の想像にお任せいたしましょう。そして今の私に直接つながる中学生編に入るわけです。

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