第11話 よそよそしい鋼の魔女

 バラとモンを引き連れて歩くこと30分。俺たちはリサの家についた。


「煙突から煙がでている。家にいるようだな」


 俺は、ドアをノックしようとする。と、バラがおもむろに俺を制した。


「親分、支払いを踏み倒すような輩の家に踏み込むんだ。ドアをノックだなんてお上品過ぎやしねーか?」

「そーでやんす。親分はいい人すぎるでやんす」

「こんなドア、これをこうして、こうやってこうだ!!」


 ドガぁ! ドガぁ!! ドガぁ!!!


 バラがドアに猛烈なタックルをぶちかます。ドアは、少しずつ少しずつ隙間が開いていき、


「でやんす!!」

 ザシュ!!


 モンが絶妙なタイミングで投げナイフを挟み込む。


「アニキ! こんなドア吹き飛ばすデヤンス!!」

「ありがとよぉ! モン!! うおお! 蒙古覇極道!!」


 バラは距離をとって腕をグルングルンと回すと、猛ダッシュでモンがナイフでこじ開けたドアにショルダータックルをおみまいする。


 メキィ……バキバキバキバキ!!


 ショルダータックルを受けたドアは真っ二つにぶっこわれ、バラはその勢いのままゴロゴロと家の中に転がり込んだ。


「さあ、親分! アニキにつづくでやんす!」

「あ、ああ……」


 さすがは銀の勇者といったところか、バラの剛力も、モンのナイフ投げのテクニックも冒険者として一流だ。


 リンのやつ、いきなりドアが壊れて、めっちゃ驚いてるんじゃあないかな?

 だが、俺の予想とは裏腹に、リンは安楽椅子をキイキイとゆらしながら、優雅に紅茶を飲んでいた。


「ようこそ、 さん。そろそろ訪ねてくる頃だと思ったわ」


 ん? 宅地建物取引士?? 

 なんだなんだ? リンのやつ前に合った時は、俺のことエラブって呼び捨てで呼んでいたのに……今日はずいぶんとヨソヨソしい。


「やいやいやい!! そこの女!! 親分から聞いたぞ! この家の代金、しめて金貨2枚もの大金を、この三ヶ月、一度も返済していないそうじゃないか!!」

「親分が、女将さんにどやされて困ってるんでやんすよ!! とっとと払うもの払うでやんすよ!!」


 ならずもとしてならしてきたバラとモンが、ものすごい剣幕でリンを恫喝する。が、リサは涼しい顔をして紅茶を一口すすると、とんでもないことを言い放つ。


「いやよ。あんたたちには、銅貨1枚すらもったいないわ!!」

「は? いやいやいや、どうかしてるんじゃあないのか? 金貨2枚出すって言ったのは、リサ、おまえ自身じゃないか!!」

「あら? 私、そんなこと言ったかしら??」

「はぁ!?」


 だめだ、話にならない。この3ヶ月で、リサにどんな心境の変化があったんだ?


「と・に・か・く!! あなたに支払うお金はもないわ!!

 不満があるなら、あなたが前世から受け継いだで、力ずくで奪えばいいじゃない!!」


 リサが言い放った瞬間、


(……聞こえますか……聞こえますか……)


 突然、頭の中に、転移執務室のおねーさんの声が聞こえてきた。

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