【KAC20242】ある天才科学者の部屋

かごのぼっち

ブラックボックス

「こんにちは。 かごのぼっちテレビ局の独人ぼっちです」


─ぺこり


「今日はミドガルズエンドの西街、ジャンクストリートの外れにある、ブラックボックスと呼ばれる、名前の通り真っ黒な箱を思わせる外観の建物にお住まいの『マキナ=プロメット』さんのお宅に来ております!」


 独人のアップから画面が引いてブラックボックス全体を映す画像になり、独人は米粒ほどの大きさになる。

 黒い箱の様な建物にショッキングピンクの文字で大きく店の名前が書いてある。


『めたもるふぉ〜ぜ!』


「『めたもるふぉ〜ぜ!』マキナ=プロメットさんの運営シているお店の名前です! 彼女は可愛いモノ好きで、異世界の言葉で可愛い文字を使用して、『変身』と言う『ドイツ』の言葉を『ニホンゴ』と言う文字で店の名前に掲げているそうです。

 それでは、そのへんのお話もうかがいたいと思いますので、さっそく中に入れてもらいましょう!」


─うぃ〜ん


─♪(入店お知らせ音楽)


「いらっしゃいまて〜♪」


「はい、見ての通り建物の一階の一部は店舗となっております。 お邪魔します!

 えと、このお店の従業員の方でしょうか? 私、かごのぼっちテレビ局の独人ぼっちと申します。」


 メイド服を着た、可愛らしい小さな女性店員のアップ。


「こんにちは。 店舗の案内はあたち、『まかろん』が担当させていただきま〜つ♪」


─ぺこり


「まかろんさん、本日はどうぞ宜しくお願いします!」


─ぺこり


「それにしても広いお店ですね? 皆さん観てください、ゆうに巨人族の家族が住めるくらいの広さはありますよ!?」


 カメラが独人から店内を一周パーン(平行映写)する。


「それは言いすぎでつお? 仮住まいくらいしか出来まてんからね?」


「失礼しました、それでも十分な広さだと思われますよね?

 そして、この大小様々な商品の数! 数! 数!

 この商品のほとんどがオリジナル商品だと言うのだから驚きです!」


 まかろんから独人、ゆっくり引いて店全体が映し出される。

 店は全体的に薄いピンクと白が基調の雰囲気で、商品自体も可愛らしいデザインが所狭しと並んでいる。


「はい、しかしここの商品のほとんどがジャンク品からの再生品となっておりまつ。

 ほぼ原型は留めておりまてんが、店の名前に偽りはありまてん! 立派に変身を遂げておりまつ」


 まかろんアップからの商品のクローズアップ。

 独人へと戻って。


「はい。 では、その商品の一部を観てみましょう! どれも可愛らしいですね。 そして、店内に良い香りが漂っております。 ジャンクストリートには場違いの様なファンシーさがありますね!!」


「はい、ありがとうございまつ。 では、こちらへどうぞ〜♪」


 独人がまかろんの案内について行き、ゆっくりと店内を歩き始める。


 まかろんが商品の前で足を止めて振り返る。


「こちらがノーマルのオートマタの『またど〜るちゃん』でつ。 これも異世界の言語が使われておりまつが、本来の意味は全く別の意味で『闘牛士』と呼ばれる職業を表すそうですが、こちらはマキナたんの造語となりまつぉ」


 オートマタを舐め回すようにカメラが動く。

 骨格だけなので、ただただ人型の人形を呈している。


「いや、名前よりもジャンク品からオートマタが作れるんですか!? しかも人型の!? 凄い技術ですね!?」


 独人の驚いたリアクションからのまかろんのアップ。


「はい、こちらはまだ骨格だけとなりますので、ご注文を受け次第こちらのカタログから顔・髪型・髪の色・瞳の色・身体・声にいたるまで用途に合わせて選んでいただけまつ。

 もちろん、オプションもございまつが、そちらはお見せできませんのでご注文の際にご覧になってくだたい」


「そんなまかろんさんも、オートマタだと聴いておりましたが……どこからどう見てもオートマタには見えませんね? 失礼ですが、本当なんですか!?」


「はい、あたちも『またど〜るちゃん』でつお? ほら、ご覧になってくだたい」


 まかろんの瞳が極彩色に映る。 


「またど〜るちゃんの瞳の色は基本設定の色は決められまつが、プログラムに異常が見られる場合や、他の起動プログラムに応じて瞳の色が変わるシステムとなっておりまつ。 どうでつか?」


 独人の驚いた顔。


「オートマタだと解っていても、こうしてマジマジと目を見つめていると恥ずかしくなって来ますね!?」


「ありがとうございまつ♪」


 まかろんが徐ろに歩き出す。


「次はこちらの『すみれちゃん』を紹介しまつ。 すみれちゃんはこの様に外観は可愛らしい鉢植でつ。 ご覧の通り、一見何の変哲もないただの鉢植でつが……大きな声では言えないので近くに寄っていただけまつか?」


 カメラがまかろんに近づく。

 小さな口のどアップだ。


「ちょっと近過ぎでつね?」


 まかろんの顔が画角に収まる程度に引く。


「実はこの商品……セイレイヲヨビヨセルセイレイホイホイ……なんでつよ♪」


「気の所為せいでなければ、今とんでもない事を聴いてしまいましたが、凄い商品だと言うことは判りました! とてもジャンク品から再生したものだとは思えませんね!」


 驚きのリアクションを取っている独人からまかろんへとパーン。


「他にも紹介したい商品が目白押しなのでつが、どうぞホームページをご覧くだたい♪」


 まかろんは深々とお辞儀をした。


「まかろんさん、お店のご紹介ありがとうございました。 さあ、続きましては店の奥の扉から住居区へと入って行きます」


 独人は商品の間をゆっくりと進みながら、店の奥の扉の前まで移動する。


 カメラが扉に掲げてある、手作り看板をクローズアップする。


『ここから先は

     マキナのおうち♡』


「はい、ここから先はマキナのおうち、だそうです! さっそく入ってみましょう♪」


─ガチャ…


「おわっ!?」


 独人の驚きの顔からドアの向こう側へカメラが進む。


 何か乗り物に乗った小さな少女が映る。


「こちらの家のお嬢さんですかね? はて、マキナさんはお一人でお住まいだと…」


「何を失礼な事を言うておる? ボクが天才科学者デウス=プロメットの孫にして、冥王の姉! マキナ=プロメットその人だ!!」


 ゆっくりと近づいてマキナのズームアップ!


「あほか! 近いわ!!」


 少しカメラが引く。


「これは失礼しました。 あまりにお若くあられましたので、混乱したようですね。 こうして改めて見ると、とても聡明で叡智に溢れた風格が駄々漏れですね!?」


 カメラに映されているのは、オマルの様な風体のオリジナルと思われるマギアライドに乗った、猫の着ぐるみを着た少女。


「そ、そうか? そんなに漏れ出しておったか……ぬうぇへへへ……」


 すぐにカメラを通路へ移す。

 通路は車が通れそうなほど広く大きい。 店と同じで薄いピンクや白が基調の内装が続く。


「それでは案内してもらいましょう! 外観からは想像出来ないくらいに広いですね!? ここからは乗り物で移動ですか?」


「このジャンクストリートには人間やドワーフの他、巨人族も多くすんでおるからの、建築基準や企画もそれに合わせて作っておるのだ。 

 中は広いから乗り物も用意しておるが、キミも乗るかね?」


 入口付近に五台ほどマギア・ライド(以降ライド)が用意してある。


 よく見るとマキナのライドは緩やかな流線型をとりつつも、何やら動物や魔物をイメージした作りとなっている。


 マキナの乗っているライドは全体的に黄色く形はアヒルに近い。 他のライドを見てみると、黒猫、ドラゴン、ミノタウロス、マンティコアと全て違う形をしている。


「の、乗ってみたいですが、レポートが出来なくなりそうなので、私は歩いて行こうかと思います」


「何だ、つまらんのぉ……中は広いんだぞ?」


「そ、そんなにですか?」


「まあ、ついてくれば分かる」


「そ、それではお言葉に甘えてこちらに……」


 独人はドラゴンのライドに跨ると、ハンドルを握って起動ボタンを押した。


 静かに浮かび上がり、ドラゴンの目が薄っすら光る。 


「うむ、それが良かろう。 では案内しよう、ついてくるが良い」


─ルルルル…


 とても静かで、非常に安定した滑らかな動きで進み出す。


「え!? これ、凄いですね!? 信じられない乗り心地の良さで、移動もとてもスムーズでノンストレスです」


「そ、そんなに褒めても何も出んぞ!?」


 斜め後ろから映るマキナの耳が赤く染まっている。


 少し進むと大きな扉の前で止まった。


─ルル…


─ウィーン


「さて、ここが飛竜艦ドラグーンのドッグだ。 今は製造はしておらんが、見ろ! 自慢のニーズヘッグ級飛竜艦ドラグーンソロモンだ!!」


 カメラがドッグに入りその広さや大きさが、画角に入り切らないので、カメラを回すように映し出す。 扉のを入って足元に深く掘り下げた形で地域ドッグへと続いている。


飛竜艦ドラグーンのドッグなので大きいのは当たり前ですが、店の外観からはとても想像出来ない広さです。 地下都市を思わせる広さと数々の施設。

 それこそ大勢働いている様に思われますが今日は休業ですか? そしてここにはいったいどれくらいの従業員がいらっしゃるのですか?」


「ん? 店のオートマタを除けば、ボクの専属スタッフはマギアロイド一人だ。 従業員は一人もおらんが、弟子なら最近出来た巨人族の者がおる。

 今日は所用で皆外出中だが、弟子の他にも居候が四人と弟子のマギアロイドが暮らしておる」


「こんなに広いのに従業員が一人もいないなんて……驚きですね!! それなのにこんな巨大な建造物を作れるだなんて、途方もなく時間がかかってしまいそうですが……」


「ん? こんなものその気になれば一年もあれば作れるだろう? バカなのか?」


「ばっ!? ……いやまあ、それが本当だとするならば、貴女に比べたら私はとんでもなくバカですね?」


「従業員はおらんが、ここではドローンがほとんどの作業を担っている。 全て私が同時に操作するので、ほら、あそこに操縦室があるだろう?」


 カメラがマキナのアップから引いて、その指差す方に向ける。 ドッグの中央辺りにガラス張りの部屋があり、ドッグ全体を見回せる様になっているようだ。


「あそこからヘッドギアを着けて何百機ものドローンを操作するのだ」


「な、何百っ!? そんなに同時に操作とか……出来るんですか?」


 独人の驚いた顔からのマキナのアップ。


「出来ない事を口にするほどバカではないが?」


「そうですね、失礼しました。 本当に驚く事ばかりです。

 そして、とても機械的な施設なのに全然油臭くないと言いますか、何かフローラルな良い香りがしますね?」


「ふふ、そうであろう? ここはむさ苦しい男の家ではない、可愛らしい女子の家だぞ? 臭いとか言われると心外だが」


「いやいや、そんなつもりは毛頭ありませんが、科学者のイメージが遠退くほどに女子力が高いと申しますか……」


「そ、そうか? うへ、うへへへへへ……」


 マキナの顔が緩むとカメラはすぐに独人へと戻り…。


「……さ、次を紹介してもらいましょう!」


「ふ、ふむ?」


─ルルルルン


 再びライドに跨ると次の部屋へと案内される。


「あの、こちらは居住区なんですよね?」


「まあ、居住区と言うかプライベートな空間と思って欲しい。 先ほどのドッグも仕事ではなく趣味だと言えよう。 そしてここ。 ここは研究室になるが、私にとってはリビングのようなものだ」


─ルルル…


─ウィーン


 二人はライドを降りて、研究室へと入る。


「さて、何か飲むか?」


「いえ、仕事中なので遠慮いたしますが……ゆったりくつろげるソファがあったり、大きな可愛い冷蔵庫、ちょっとしたシステムキッチンなどがあったりと、およそ研究室の雰囲気ではないですね?

 あの奥にあるタコのようなオブジェ?は何ですかね?」


 カメラが部屋を一通り映した後、奥の施設をクローズアップする。


「魔導炉か。 魔力を増幅させる為の機械だが、名前を聴きたいのだな?」


「いえ、名前はいいのですが、そんなことより、魔導炉って個人が持てる様なモノなんですか!? 国家に一台レベルの施設じゃないですか、しかもこんなにコンパクトとか!?」


「ふん、そんな事より名前の方が大事であろうに?」


「そうですね、お店の名前『めたもるふぉ〜ぜ』とありますが、変わってますね?」


「お? ふむ。 異世界の言葉『ドイツゴ』で『変態』の、を『メタモルフォーゼ』と言うのだが、それを字体が可愛い『ニホンゴ』の『ヒラガナ』とやらに変換したのだが、可愛いであろう?」


「『変態』……ですか?」


「左様。 ん? 何だその目は? 蝶が幼虫からサナギに、サナギから成体になる事を変態と言うであろう?

ジャンク品をより良い品物に変態させるのだ、変身では生ぬるいと言うものだろう?」


 マキナのドヤ顔のアップ。 少し鼻の穴が丸くなっている。


「は、はあ…」


 独人は目が丸い。


「それでだな? この魔導炉は『くら〜けん』と言うのだ。 格好良いであろう?」


 マキナの鼻の穴が丸くなる。


「は、はあ…」


 独人の目が丸い。


「……ノリが悪いな? どうして『くら〜けん』なのか聴かないのか?」


 マキナのアップ。 目がキラキラしている。 もちろん鼻の穴は丸い。


「魔導炉の下から脚のように管が四方八方に伸びているからでしょう?」


 独人はすんとした顔をしている。


「なっ!? ……つ、つまらん!! 次行くぞ、次!!」


「あっ!! ちょ、ちょっと待ってください、まだ研究内容を窺ってませんよ? マキナさん!?」


─ルルルルン!


 マキナがライドをぐんぐん走らせて奥へ進む。


「ちょちょちょ!! マキナさん? 通り過ぎましたがここは何ですか?」


「ん? トイレと風呂があるだけだが?」


「少し拝見してもよろしいですか?」


「んん!? そ、そ、それは……ちょっと待て!! ここで待っておれ? いいか? 動くでないぞ?」


 マキナが少し慌てている様だが、見られては困るモノでもあるのか、先に扉の向こう側へと行ってしまった。


 少し待つとドアからひょっこり顔を見せてニッコリと笑った。


「よいぞ、入れ?」


「……? では、失礼します」


 カメラがドアの向こうへと行こうとすると、何故か独人が止まった。


「マキナさん?」


「な、なんだ?」


「その格好はいったい…?」


 カメラが独人の背後から扉の向こうを覗き見る。


「ぬ? これから入浴シーンを撮るのであろう? さ、さすがに裸にはなれんぞっ!?」


 先ほどの猫の着ぐるみを脱ぎ捨てて、マキナは平べったい身体にぴったりと張り付いた紺色のスクール水着を着ている。

 緩やかな微妙な起伏が逆にイヤラシさを醸し出している。

 何故か胸のところに『まきな』と名前を貼り付けている。


「そんな事打ち合わせしてませんよね?」


「視聴者へのサプライズであろうに?」


 身体をクネクネとよじらせてモジモジしている様子だ。


「別に風呂には入りませんよ?」


「そ、そうなのか!?」


 マキナの驚く顔。


「そうですよ?」


 独人の表情の失せた顔。


「まあ、とりあえず中を案内してください」


「うむ。 まずトイレだが巨人族用と他種族用と二つある。 何の変哲もないぞ?」


─ガチャ…


「ここは?」


 カメラが独人の後についてドアの向こうへと向かう。

 ドアを堺に緑が生い茂り、まるで森の中に迷い込んだ様だ。


「トイレだと言っておろう?」


 足元はフサフサと短い芝が敷き詰められていて、真ん中に設置されている木の切り株の様な便器?を中心に木や草花が周囲を取り囲んでいる。

 耳を澄ますと鳥の鳴き声や水のせせらぎ、そよ風が梢を撫でる音がして、木漏れ日が目に心地よい。


「こんなトイレ見たこともありません!」


「さもありなん。 普通のトイレを見たいなら他所を取材すれば良いのだからな?」


「て事は……、お風呂もこんな感じだと言う事です…」


─ガチャ…


─ドドドド……


「かああぁぇええええっ!?」


「どうだ? 入ってみたくなるだろう?」


 カメラがゆっくりと風呂場へと移動する。


 すると先程から聴こえてくる音の正体が眼の前に現れる。

 正確には一番奥にあるのだが、パノラマに広がる大温泉の向こう側に大きな滝が落ちているのだ。 風呂場全体が巨大な岩風呂を呈している。


「巨人族でもゆうに入れる設計で、深さもちゃんと段々と深くなっておるのだ。

 男女分けられる様に、入口は二箇所あって、パーテーションで仕切れる様になっておる」


「これは凄い……」


「ふふふ、そうであろう、そうであろう、どうだ? 一緒に入ってみるか?」


 マキナが上目遣いでカメラに目を遣る。


「そ、そうですね……って、これ温泉ロケじゃありませんからね!? つ、つつつ、次の案内してください!」


「何だ、つまらんのぉ……」


 マキナがアヒルのライドに跨る。


「ちょっとマキナさん?」


「どうかしたのか?」


「着替えないんですか?」


「……なんだ、着替えが見たいのか??」


「そっ!? そんな事を言ってるんじゃなくってですねぇ!? 僕は─」


「─わかっておるわ。 別にこのままでも良かろう? 何か困る事でもあるのか? あっ……キミはもしかして、このロリボディのボクに欲情しておるのだな!? 助平め!! うわははははは!!」


「ちょっ!? 違う!! 違いますからねっ!? ぼ、僕はもう少し凹凸が欲しいんです!!」


 マキナを足の下から少し頬を膨らせた顔まで、カメラが舐め上げる。


「ぬ? 本当に失礼なヤツだな!? 次だ、次へ行くぞ!!」


─ルルルルン…


 しばらく道なりに行くと、ついに通路の突き当りに辿り着いた。 

 最後の一部屋だろうか、巨人族では入れない扉が一枚あった。


─ルルルル…


「さあ、最後の部屋だが、ここはボクのプライベートルームだ。 まだ誰にも見せた事がないのだが、仕方あるまい」


─ガチャ…


 ドアを開けるなり、先程までとは違う良い香りが流れ出て来る。 


「それでは、失礼します…」


「うむ」


「これは……」


 カメラが二人の間を掻い潜り、マキナのプライベートルームへと入る。


 ピンクと白を基調としている事には変わりない。


 窓にはレースのカーテン、小さなプランターが並べられている。


 その下に可愛らしいベッドがあり、ハートの眼帯をしたクロネコのぬいぐるみが転がっている。


 その横には机があって、パソコンとヘッドギア、そして周辺機器が揃っている。


 クローゼットの中は洋服や小物が所狭しと収納されている。


 少し大きなオリジナルモデルのオーディオ機器が壁に内蔵されていて、スピーカーシステムも一通り揃っている。


 壁にはメイガスを中心に左右にモモキッス、それを取り囲むようにモカ・マタリ、モイラ三姉妹、サマエル、ヘレンが勢揃いしたポスターが貼り付けてあり、その横にはマキナ、クロ、シロ、アハトの家族写真が大きく引き伸ばされて貼りつけてある。


「どうだ?」


「……ええ、普通ですね?」


 マキナの眉が少しつり上がり、声のトーンが高くなる。


「キミは本当に失礼極まりないな!?」


 独人はマキナの顔を見て、ニコリと微笑んで言う。


「普通に可愛らしい女の子のお部屋ですよ♪」


 途端にマキナは、ぼっと音がするように顔を赤面させて、あわあわと声を上ずらせる。


「なっ!? キミはボクを口説いておるのか!? そうなのか!?」


「口説いて落とせるなら、それも良いかも知れませんね?」


「ぼ、ボクはそんなチョロい女ではないぞ!? そんな、そんな……ふにゅん……」


 マキナが腰砕けに地べたへとへたり込む。


「ふふ、冗談ですよ? 今日は数々の素敵なお部屋を拝見していただき、大変ありがとうございました!

 住む家はその家人の人となりを現しているものです。

 天才だ、変態だと噂の絶えないマキナさんですが、実は普通の可愛い女性だと言う事が解りました!」


 カメラの向こう側に訴えかける様に話す独人。


「ふにゃ?」


 力無くカメラを見るマキナ。


「今日はマキナ=プロメットさのお宅を拝見させていただきました!

 次回はマダム・ヘンリエッタさんの豪邸へとお邪魔します!

 お楽しみに!!」


─ぺこり



      ─了─

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