【KAC20242】結局内見って何をするの?

姫川翡翠

東藤と村瀬とひとり暮らし

「よう村瀬」

「おう、東藤」

「すまん。ちょい遅れた」

「そんで今日はどこ行くん?」

「なんも決めてないけど……やったら俺今ヘッドホン欲しいし電気屋行かへん?」

「ええで。こっからバスで行けたよな?」

「そのはず。知らんけど」

「ちょい待ち。調べるわ」

「はよ調べろや」

「やかましい」

「そういや村瀬、結局就職は東京なん?」

「ん? ああ、4月から半年間東京で研修でそのあと配属先が決まる感じやけど、まあ東京やろな」

「えー、じゃあお前ひとり暮らしやん」

「そうなりますな」

「いいなぁ。俺もひとり暮らししたい」

「東藤もしたらいいやん」

「だって俺の就職先全然実家から通えるんやもん。普通にお金もったいない」

「まあそれはそう。バスここやって」

「なんか並んでるなぁ」

「ちょっと遅れてるらしい」

「だるいって」

「ひとり暮らしなんやけど、僕こんど内見行くねん」

「そんで?」

「普通に内見てなにすんのかなぁって」

「そういえば俺1回だけ内見行ったことあるわ」

「いつ? 最近?」

「最近と言うか、いや、ちゃうで? 俺受験のとき関東の大学受けて落ちてるやん? その時に一応ひとり暮らしする予定やったから内見行ったんよ。全然意味なかったけど」

「つっこみにくいわ」

「そもそもつっこもうとするなよ。デリケートな部分なんやぞ」

「それやったら晒すな」

「てへっ☆」

「きっしょ。で、そん時は内見どうやったん?」

「正直滑ったんがショック過ぎて当時の記憶ほとんど消えてる。自己防衛お兄さん」

「あー」

「でも確か、ロフトがあったな。3階建てのアパートやったんやけど、1階が一番安くて、しかも1階の部屋だけロフトついてた。だから即決。1件目で内見終了」

「でもロフトって意外と使いづらいって聞くくない?」

「それはそう。でも俺はロフトに住みたかったから」

「どういうことやねん」

「でもとにかく一階はやめといた方がいいらしいけどな」

「防犯的に?」

「虫が湧くらしい」

「それはあかんわ」

「内見と言えば、水回りもちゃんと見といた方がいいで」

「ほうほう。まあ特にトイレ風呂は大事よな。キッチンもそうやけど」

「そんでどんな家具を置くかもある程度決めた上で間取りとか確認するといいで。加えてコンセントの位置もな。家電置きたいのにコンセント無いとかなったら困るしな」

「急にそれっぽいこと言いだすやん。どうしてん」

「いや別に」

「お前Google先生見てるやんけ。ズルすんなよ」

「見るに決まってるやろ!?」

「逆切れすんなや」

「バスこれ?」

「あ、うん」

「そうかぁ……東京行っちゃうと遠くなるな」

「……ちゃんと定期的に帰ってくるよ」

「俺も遊びに行くし泊めてぇや」

「もちろん。なおさらちゃんと内見していいとこ住まなあかんな」

「ロフトあるとこにしてな」

「もうええてロフトは」


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