城崖ダンジョン編
社畜、お見舞いされる
ダンジョンブレイクが起こってから数日が経った。テレビでは未だに新宿の悲惨さが中継されている。どうやら色々と大事な建物が壊れたり、食い荒らされたりして大変らしい。オマケにモンスターの死骸の処理にも時間が掛かっていると言う。
「これ俺関与してないよな……してないよね…？」
病室のベットの上でニュース番組を見ながら呟く。
俺は疲弊しきってあの場で倒れた後、新沙によって病院へ連れてこられたらしい。
そのおかげか今の体調は絶好調だ。
先程の俺の呟きに答えるかのように、お見舞いをしに来てくれた新沙がベットに腰掛けながら冗談めかしたように答える。
「もしかしたら関与してるかもね〜」
「……勘弁してくれ。ダンジョンブレイクも冥層主も倒したんだからお咎め無しでも……流石にダメか」
「そこら辺は大丈夫だと思うんだけどね〜実際ゆーくんがダンジョンブレイクを片付けたから多くの命を助けた訳だし」
確かにそう考えると、助かる希望もマイクロ単位で見えてくる。しかし不安が完全に拭えた訳では無い。
国がどう動くかで俺の人生は左右されることになるだろう。
新宿には大きな被害が出たが多くの命が助かったことを喜ぶか、命なんてどうでもいいから新宿の被害分の金を支払えということになるか……流石に国までは腐っていないことを願うばかりだ。
「あはは〜でもゆーくんさえ生きてれば全部おっけーだよ！」
「それはお前だけだ」
そう言って新沙の頭を叩く霧世さん。彼女もお見舞いに来てくれたらしい。
キッと睨む新沙を無視して、霧世さんは俺に話し掛けてきた。
「高橋、お前の処分が決まった」
「！……どうなりましたか？」
俺は霧世さんの言葉を藁にもすがる思いで待った。
「良かったな。お咎め無し、ついでに報奨も出るらしいぞ。ああ、後総理からもメッセージを貰っている」
そ、総理？随分とスケールがデカイな。
霧世さんはメッセージ表示と唱えると、空中に半透明の板が現れた。半透明の板をスクロールし、板をタップした。
すると俺の目の前にも半透明の板が現れ、そこには厳格な顔つきをしたイケおじが椅子に座っていた。
「『まずは……新宿を救ってくれて感謝する。本当は直接会って話したかったのだが、このような形になってしまって申し訳ない。私も新宿ダンジョンの件で忙しいものでね。っと、話が少しズレてしまったな。今回のダンジョンブレイクは新宿に大きな被害をもたらしたが、その引き換えに救われた命も多くある。よって賠償金や金銭の支払いは無しだ。それと君には報奨もある…それは、S級探索者ライセンス、及び逸脱者のライセンスの贈呈だ。他にも報奨金等があるが、そちらは既に口座へ振り込んでおいたから確認してくれ。それでは』……とのことだ。理解出来たか？」
「え、えぇまぁ…はい。多方は…」
S級探索者と逸脱者ライセンス……俺には縁の無いものだと思っていたが、まさかこう言う形で手に入るとは……人生何があるか分からないな。それに報奨金……一体幾らぐらいだろうか…？
多分今日中に退院は出来るだろうし、確かめに行ってみるか。
「さてと…要件はもう伝えたし、私はもう行く。どっかの誰かさんの後処理をしないと行けないからな」
「……アハハ、よろしくお願いします…」
「ククク、冗談だ。まあゆっくり休めよ。お前も大事なウチの社員なんだからな」
それだけ言って彼女は病室を出ていった。手をぷらぷらさせ、しっしっと言いながら霧世さんを睨む新沙を宥める。
霧世さんが出ていった直後にコケたような音が聞こえたのは恐らく気の所為だ。
しかしゆっくり休めと言われたが、何をしようか。
もう退院できるぐらいには体は好調だし、何より少し身体を動かしたい気分だ。
どうしようかと頭を悩まえていると、新沙が顔を覗き込んで来た。
「どうしたのゆーくん何か悩み事？」
「いや、悩み事まではないんだけど……少し身体を動かしたいなって」
「あーここ数日ずっとベットの上居たもんねー」
新沙の言った通り病院に運ばれてから数日間はベット生活をしていた。お陰様で身体が硬い。
「んーじゃあ、リハビリ程度にダンジョンでも行こうよ！」
「……新沙、君には怪我人を労るという心が無いのかい？」
「でも身体動かしたいって言ってたじゃん！」
……そういうことじゃないんだけどなぁ。でもまぁ確かに、リハビリにちょうど良いかもな…
「新沙」
「何何？！」
「行くか、ダンジョン」
その時の新沙と言えば、生えていないはずの犬も尻尾が幻覚としてみるほど嬉しそうだった。
－－－－－－－－－－－
えちょまです
第二章、城崖ダンジョン編開幕です！
さて、第一話は病院からのスタートとなりましたが、リハビリの為にダンジョンへ行くことにした優希と新沙。どうなるんでしょう？
それじゃ
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