第7話 魔界住宅内見係①

「こちらが最新式のスライム専用のお風呂でございます」

「すごいですね」

「これがあれば毎日べたべたくっついてくる砂とか木とかきれいになるね」


 今日も内見係のお仕事です。魔王グダエラ様がお帰りになってしまったからか、急遽社長も帰ってきました。もう少しいなくても大丈夫だったとは思いますよ? あぁ、のっとりなんて考えてませんよ。……うん。だって、私は――。私の夢は――。


 ぺらりぺらりとシタッパーズの物件書類に目を通す。沢山あるスライム用の物件。少しずつだが決まっていってる。

 内部にスライムの移動に適した道付き住宅。

 これもいいなぁ。

 スライムのうるおいボディを保つミスト室。

 これもいいなぁ。


 実物を見て確かめにいく。ちゃんと説明出来ないと内見係失格だよね。

 あぁ、これ魔王グダエラ様が見てたらいいなぁって言ってそう。

 って、何考えてるの私。グダエラ様はもうお城に帰ったじゃない。

 さみしくなんてない。たった数日一緒だっただけでもありえないことだったのだ。

 あぁ、でも高級お菓子は返してもらえないか交渉したい。したいけど……。

 涙が滲んでるのはきっと寂しいとかじゃなくて、そうお菓子のこと。お菓子返してよね。返しにきなさいよ。ごめんなさい。魔王様に何言ってるんだですよね。


「ん……?」


 書類の上に長く伸びた影が落ちる。なんだこれ。

 後ろを振り向くとそこにグダエラ様が立っていた。


「え、グダエラ様? 帰ったのでは?」

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