「うつ伏せになって両足を開き手は後ろに組んで」 と彼女は、言うのです。

逢坂 純(おうさかあつし)

僕が夢にまで見ていた初体験はロマンチックの欠片(かけら)もなく、僕は自分で自分の上着のシャツもズボンも、そしてこの日に備えて準備した勝負パンツの実写苺のボクサーをも脱いだのです。

ピアサポートという言葉を皆さんは知っておいででしょうか?ピアサポートの事をご紹介する前に、まずピアサポートの『ピア』という言葉の意味からお伝えしますね。ピアという言葉は『仲間』『同じ境遇にいる者』という意味なのだそうです。そしてピアサポートというのは、その当事者同士にしか分からない気持ちや悩みに共感して、相互に助け合うということを指すそうです。

僕は現在、47歳です。僕は統合失調症という精神疾患を患っています。25歳の時の初診で統合失調症という病名を診断されましたが、多分、発病は20代の学生時代の時からあったようです。

20代30代を闘病に奪われ、暗い青春時代を過ごしてきたような気がします。

この話は、同じ統合失調症の友人O村君が僕にしてくれたピアサポートの話です。

僕は20代前半に統合失調症を発症したので、社会経験も全く足りておらず、女性経験も全くないという所謂(いわゆる)童貞と呼ばれる非モテ属性の部類に入る男でした。

女性に興味があるくせに、自分が傷つくのが怖くて、女性と上手に関われていなかった自分がいました。そうしていつの間にか僕は歳を取り、その時僕はもう45歳になっていました。僕は未だに童貞でした。

同じ統合失調症の友人O村君は女性経験が豊富で女性経験のない僕に「風俗に行こう!風俗に行こう!」と熱心に自身の風俗愛をトクトクと語ってくれていました。僕はと言うと、歳を取っても夢見る夢子ちゃんだったようで、素敵な彼女が僕の前に現れるのを、ずっと待っていました。

そんな時、友人のO村君が僕を風俗店に誘ってくれました。それまでも僕は、10歳近く年下のO村君に、自分は女性経験がなく、女性経験豊富なO村君が羨ましい、と言っていました。

そんな僕にO村君は、

「絶対に人生観が変わるから!」

と言って、僕を風俗に連れて行ってくれました。

O村君の助けを借りなければ、自分ひとりの力では、何も起こせなかった僕に手を差し伸べてくれたのが、O村君でした。

O村君のお薦めの店は、人気店らしく大変な混雑ぶりでした。僕は異様な雰囲気で男どもが沈黙して狭い室内のソファーに座っているだろう待合室で待つことに耐えられず(妄想)、他の店に行こうとO村君に頼みました。O村君は自分のお薦めの店に行けないことを少し残念に思ったようでしたが、統合失調症の僕のことを考えてくれて、混雑していないもっと空いている店に行くことになりました。

次に訪れた店は、お客さんは僕とO村君だけでした。

僕は早速部屋に通されると、素敵な薄手のキャミソールを着た20代後半の女性が僕を迎え入れてくれました。

O村君に言われた通り、僕はその彼女に

「歳は恥ずかしくて言えないのですが、実は僕まだ童貞なんです」

と言いました。そんな風に女性との関係が無かった僕は女性のことが怖かったのかも知れません。女性と関係を持つチャンスはそれまでに幾らかあったように今考えれば、そう思うのですが、しかしどうしてそうできなかったのか?それは、蟷螂(かまきり)の雌(めす)が出産後に雄(おす)の蟷螂を食べてしまうことに似ているような気持ちがあったからかも知れません。傷つくのはいつも男で、女性はそんな僕を喰らって栄養にしていたのかも知れません。

しかし、僕は女性との縁が無い代わりに男運だけは恵まれていたように思います。

O村君のお薦めの店は、人気店らしく大変な混雑ぶりでした。僕は異様な雰囲気で男どもが沈黙して狭い室内のソファーに座っているだろう待合室で待つことに耐えられず(妄想)、他の店に行こうとO村君に頼みました。O村君は自分のお薦めの店に行けないことを少し残念に思ったようでしたが、統合失調症の僕のことを考えてくれて、混雑していないもっと空いている店に行くことになりました。

次に訪れた店は、お客さんは僕とO村君だけでした。

僕は早速部屋に通されると、素敵な薄手のキャミソールを着た20代後半の女性が僕を迎え入れてくれました。

O村君に言われた通り、僕はその彼女に

「歳は恥ずかしくて言えないのですが、実は僕まだ童貞なんです」

と言いました。

すると女性はキャミソールを一気に脱ぎ捨て、

僕にも裸になるようにとそっけなく言い放ちました。僕が夢にまで見ていた初体験はロマンチックの欠片(かけら)もなく、僕は自分で自分の上着のシャツもズボンも、そしてこの日に備えて準備した勝負パンツの実写苺のボクサーをも脱いだのです。そしてその彼女とはお風呂に一緒に入りました。体を綺麗に洗うためです。お風呂の中で僕は彼女と談笑して、とても愉しかったのを覚えています。

その後、僕は僕が希望したマットプレイをするために、

すると女性はキャミソールを一気に脱ぎ捨て、

僕にも裸になるようにとそっけなく言い放ちました。僕が夢にまで見ていた初体験はロマンチックの欠片(かけら)もなく、僕は自分で自分の上着のシャツもズボンも、そしてこの日に備えて準備した勝負パンツの実写苺のボクサーをも脱いだのです。そしてその彼女とはお風呂に一緒に入りました。体を綺麗に洗うためです。お風呂の中で僕は彼女と談笑して、とても愉しかったのを覚えています。

その後、僕は僕が希望したマットプレイをするために、空気の入ったマットの上で横になりました。いや、うつ伏せになったのです。

「マットの上でうつ伏せになって、両足を開き、手は後ろに組んで、目を瞑るように」

そう彼女は、言うのです。

まるで外国のポリスの尋問のようでした。

「銃は持っていないです~~~!!」、と僕はマットの上にうつ伏せになりながら、後ろを振り返ろうとすると、彼女は「振り向かないで!」とピシャリと言いました。僕は納得いかないなーと思いながらも、沈黙して、また手を後ろで組み、目を瞑りました。

次の瞬間、僕の身体の上にヒヤリとした冷たい感触と、相当な重みを感じました。痩せているように見える彼女の身体の重みです。

「女性の身体って重いんだ……」

と、うつ伏せで目を瞑らされ、手を後ろに組まされながら、僕は初めて女性という生身の人間を知りました。

「これがマットプレイか~」

僕はいつか観たやらしいビデオの中身とリアルな重量の違いに驚きながら、彼女の身体を背中に感じていました。

最後に彼女は「手でやりますか?それとも口でやりますか?」とやっと風俗嬢らしいことを言ってくれたのですが、僕はその時「……手でお願いします」と言ってしまいました。それは店の壁に貼ってあった「女の子たちは生身の人間です」という文言が書かれてあったからです。

念願叶わず、僕は服を再び自分で着、店を出た後、逆に清々しい気持ちになりました。僕のその店での思い出と言えば、僕の背中に圧(の)し掛かった彼女の重みとお風呂での愉しい会話ぐらいでした。

去り際、僕は彼女に「お客さん、面白い人(変な人)だね」と言われました。

そして僕は店を後にしました。でも僕の心の中は、逆に清々しさに満ちていました。もはや、僕の中では自分の童貞観念は黒歴史から脱したと思ったのです。

一足先に店を出ていた友人O村君は、店から出てきた僕を見ると、

「どうだった?」

と笑顔を向けてくれました。

その笑顔を見て、僕も今日、ここに連れてきてもらって良かったな、と笑顔になったのでした。

僕はまだ道程半ばです。

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「うつ伏せになって両足を開き手は後ろに組んで」 と彼女は、言うのです。 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

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