こちら米異不動産

羽弦トリス

こちら米異不動産

俺と、明美の生活拠点を探すために、スマホで検索した、米異不動産へ日曜日に向かった。

自動ドアのむかいに不動産屋さんがいた。

メガネをかけた、中年オジサンが、

「これは、これは。いい物件ありますよ。飯、風呂、部屋がある家です。ちょっと寒いですがね!」

「えぇ〜、どこ?」

「網走です」

「網走刑務所じゃねえか!」

「それはそれは」

「誰も喜んでねぇわ」


俺と明美は並んで、カウンター席に座った。

担当は明美の顔をみて、

「旦那様、奥さんブスですね」 

「ふざけんな!」

「ふざけてのは、奥さんの顔ですよ」

「いいから、いいから、カミさんをいじるな?」

「え?」

「え?じゃねえよ!」

「すいません。私、耳にピーナッツ入ってるんで」

「何で、ピーナッツなんだよ」


不動産屋はPCを開いた。

「お客様、家賃はどのくらいをお探しで」

「まぁ、10万円くらいかな」

「階数は?」

「2階以上」

すると、明美が、

「不動産屋さん、それと防音と。夜が激しいんです」

「はい、かしこまりました。……と、3件ありますね」


不動産はコピーして、2人に見せた。

2人は何やら、相談して、3件とも内見をお願いした。


「では、内見にむかうので、お車を準備いたします。入り口の外で待っていて下さい」

不動産は2人を乗せて運転した。

「お客様、内見の前に腹ごしらえしましょう。うまい、ラーメン屋があるんです」

「是非」


「いや〜、やっぱりラーメンはシンプルに、醤油ラーメンですな?お客様」

「はい。あの縮れがいいですね?」

自動車は閑静な住宅街へ向かった。


「お客様。この辺りに、美味しいタピオカの店があるんですよ」

明美は、

「行きたい!」

3人は、タピオカジュースを飲んだ。

「あなた、美味しいね」

「あぁ、そうだな」

「不動産屋さんって、色んなお店知ってますね」

「まあ、職業柄。甘いの飲んだら、唐揚げ食べたくなりましたね。有名な唐揚げ知ってるんで、そこ行きましょう」


3人は唐揚げ屋に向かった。

そして、二度揚げの唐揚げを食べながら、2人は唐揚げを絶賛した。

「お客様、もう、17時です。帰りましょう」

「……」

「……ピクニックじゃないか!」

「え?」

「内見させろよ!内見を」

「そんな事言われましても、私は残業したくないので」

「もういい。他の不動産屋に行く」

「そうですか。ここで、降りて下さい!」

「あぁ、そうするよ」


夫婦は見知らぬ土地の、田んぼのど真ん中に取り残された。


終劇

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こちら米異不動産 羽弦トリス @September-0919

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