最強の魔人が一匹の下等生物に殺される話

零二89号

霧の魔人

最近、とある人間が我ら魔人を殺して回っているらしい。まったく、情けない、生物でありながら生物離れした力を持った我々がたった一匹の下等生物如きに殺されるなど。


他の魔人の弱さに落胆していると、古びた石造りの家の木製の扉が音を立てながら開いた。

「霧の魔人だな?」


そこには人間の雄がいた。褐色の肌と漆黒の髪を持ち、整った顔立ちをしている。

「なんだ貴様は?」

「お前を殺す者だ」


「我を殺す?冗談は程々にしろ」

我は男の服に注目した。


男の服は青を基調としており黄色い線が入った服だった。

「その腰に下げているもの……まさか」

「八大魔剣だ」


「馬鹿な!!」

八大魔剣は確かに我々魔人が人間を強くする為に武器の魔人ハンドルのやつが作った魔人の力が宿っている剣、だが……


「それ全て、自分一人で集めたのか?」

「ああ、そうだ」


八大魔剣は世界中に散らばっていた、中には海の底に沈んでいたものもあるほどだ。


「なるほど、八大魔剣それがあれば魔人を殺すことも容易だな」

「ああ、お前は今からこの魔剣達によって殺される」


「ふっ、そういう言葉はな……」

我は一瞬で男の眼前に移動した。


「俺を倒してから言え!」

我は男より遥かに大きな拳を振り下ろす。


ドゴーン!!という音が鳴る。

「ふっ、他愛もない」


次の瞬間、背中に痛みが走る。

「何!?」

振り返ると、そこには先ほどの男が血塗れの剣を持って立っていた。


「ほお、どうやら魔人を七体も殺したのは伊達じゃないようだな」

「褒めても魔剣しか出ないぞ」

男はそう言って魔剣を我に向ける。


「いうではないか」

我はゆっくりと構える。


「大人しくしていろよ」

男はそう言うと、一気に跳躍し我が眼球目掛けて剣を伸ばす、がそんなものは無意味だ。


我は体を空気に変え、男の攻撃を容易く避ける。

「さすがは魔人最強、そう簡単には攻撃させないか」


「当たり前だ」

我は男の独り言に反応する。


「喋る事は出来るんだな」

「死ね」


我は不可視の刃を男に向けて放つ。

だが男はその刃を魔剣、ペルシウスで一刀両断する。


「不可視の刃のからくりは知っている、風を三日月の形に圧縮し、解放時の風圧で敵を斬る。風切り音等を聞いて軌道を予測すれば対処は容易い」


「ならばこれはどうだ?」

我は男の背後で体の空気化を解除し、右腕に竜巻を纏わせる。


「はあ!」

男が振り向くより先に我は右腕を振り下ろす。


だが、地面に右腕が触れる前に、纏わせていた竜巻が真っ二つになり消滅する。

「貴様、何をした?」

右腕の下にいた男の問う。


「斬っただけだ、ペルシウスの能力でな」

魔剣ペルシウスの能力、覚えている限りそれはあらゆるものを切り伏せるというもの、それならば不可視の刃や竜巻を斬ったのも納得がいく。


「じゃあ、これならどうだ?」

私は体を中心に高熱の蒸気を全方向に向けて放つ。


「それがどうした?」

男はペルシウスを鞘に納め、別の魔剣を抜く。


それは、魔剣ゴルゴス、刀身部分の自在な伸縮そして大きさや小ささを自在に変化

させる物だった。


「伸びろ、ゴルゴス」

男がそう唱えると、刀身が我の肩と同じ大きさになり、我に向かって伸びる。


「ふんっ!」

我は右手をかざして、ゴルゴスを右手に刺して固定する。


「戻れ、ゴルゴス」

今度は男の唱えに反応してゴルゴスが元の大きさに戻る。


「はっ!!」

我は蒸気の放熱を止め、男に向かって走り始める。


すると男はゴルゴスを鞘に納め、別の魔剣を取り出す。

「燃えろ、テイル」

すると、取り出した魔剣が燃え始める。


燃える魔剣テイル……八大魔剣の中で刀身が燃えるだけの最弱の魔剣だったはず。

「バカめ!選択を誤ったな!」

我は右手を拳の形にして振り下ろす。


そして、男がテイルを縦に構える。

それに我の拳が触れた、すると突然拳が燃え上がった。


「何!?」

更に、炎は右手から広がり一瞬で右肩まで到達した。


「ふんっ!」

我は不可視の刃で右肩を切断した。


「よくもまあそんな簡単に腕を切り落とせるな」

「この程度、すぐに回復する」

男は我と会話している間にテイル引っ込め、別の剣を取り出す。


「壊せ、ベンド」

すると男は取り出した魔剣を右肩があった我の肉体の切断面に向かって投げる。


ザクッ


ベンドが刺さった。

「ふんっ、こんなもの」

我は指でベンドをつまんで投げ捨てる。


「!?」

だが次の瞬間、異変に気付く。

普段ならすぐに生えてくる右腕が、生えない。


「貴様、まさか……」

我は男が何をしたのかを察して男を睨み付ける。


「お前が思っている通り、ベンドの能力を使った」

ベンドの能力は一時的に傷つけた生物の傷を修復不可能にするもの、それによって

俺の右腕は今再生出来ない。


「貴様など、左腕一本で十分!!」

すると男は別の魔剣を取り出し、我の額に向かって投げる。


「落ちろ!サンダー!」


「遅すぎてあくびが出るわ!」

頭を右に動かした瞬間、いつの間に抜いたのか魔剣ゴルゴスが我の首に刺さり男は我の頭を無理やりゴルゴスで動かしてサンダーの軌道上に戻す。この間約2秒である。


サンダーが我の額に刺さり、続けて雷が我に落ちる。

「ぐおおおおお!!!!!」

魔剣サンダー、その能力は雷を呼び寄せる。


「作れ、クーラポン」

男は魔剣ゴルゴス納め、別の魔剣を取り出しそう言った。


すると、我の周囲に人間サイズの剣が大量に現れた。

「こ、これは一体……!?」

「貴様もクーラポンの能力は知らないようだな」

男は余裕そうに語りだす。


「クーラポン能力は、八大魔剣の複製を無限に創り出す」

「なっ……!?」

我が驚愕している内に、周囲に現れた剣が我の体中を突き刺していった。


(くっ、ベンドの複製もあるな?そのせいで回復できん……!!)

「ならば!」

次の瞬間、我は自身の体を空気に変化させた。


「死ねえ!!」

我は不可視の刃を放った、だが……


「そこか」

男は我の叫び声と不可視の刃のが現れた方角から我の位置を予測しペルシウスの複製で空気状態である我を傷つけた。


「ぐあああ!?」

我の空気化はダメージを受け自動解除されてしまった。

「最後は自分の力で死ね」

「何?」


すると我の肉体が内側から切られているような感覚を受けた。

「な、なぜ……」

「これだ」

男はそう言って一本の魔剣を見せる。

「刀身が……ない!?」

「最後の魔剣エイルアル、その能力は刀身を空気にして自在に操る」

「お前と戦う前、予め空気にしておいた、お前空気にあった刃を吸い込み、俺が空気化を解除した結果、体中を内部から切り付けられたのさ」


「なんだ……と」

我の意識はそこでなくなった。


◆◇◆◇◆◇

後書き

いやあ、やった!書けた!バトル物書きたいな~と考えていたら、突然このアイデアが頭に浮かんで、気付けば既に書き始めていました。けどバトルが書きた過ぎる余り世界観や設定が蔑ろになってしまいました。またバトルものを書く場合は気を付けないとな、でも書きたいものが書けて大満足。それでは!!!

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