猫又に取り憑かれちゃった僕の彼女。

猫野 尻尾

第1話:取り憑かれた女。

一話完結。


いきなりだけど、僕の彼女は猫の妖怪に取り憑かれちゃったらしい。


日本には昔から「猫は年をとると猫又になる」って言う都市伝説がある。

猫又は不思議な妖力を持っていて人間に取り憑くって言う。

猫又は尻尾が二本ある猫の妖怪ってことらしい。


僕の名前は「犬山 犬児イヌヤマ ケンジ」職業は物書き「小説家」

そして僕の彼女の名前は「猫山 寝子ネコヤマ ネルコ


僕とネルコは地方にプチ旅行に行た時、良さげな古民家に泊まったんだ。

僕は何もなかったんだけど、ネルコだけが災難に見舞われた。

それはなんと古民家に猫の妖怪がいきなり現れて、ネルコを見るとこれ幸いと


「あんたに取り憑かせてもらうから」


そう言って神通力とやらを使ってネルコの体を乗っ取ったんだ。

つまりネルコは猫の妖怪に取り憑かれたってことかな。


そのせいか、ネルコは旅行から帰ってきてから猫みたいな動きをする

ようになった。

猫の妖怪に取り憑かれたからと言って僕に危害を加えるつもりはないみたい

だけど、やたらくっついてくる。

いわゆる猫特有にグリーミングってやつかな。


妖怪に取り憑かれるまえは、少し冷めてた僕たち。

ネルコはあまり積極的に俺を相手にしなかったのに・・・今はね・・・

めちゃ積極的。

だからこうなって僕としてはネルコが猫の妖怪に取り憑かれたことは

まんざら嫌じゃない。

以前より僕たちの関係がよくなったからね。


まあ、それでも取り憑かれたなんて心配っちゃ心配。

とりあえず病院へ連れて行ったけど、妖怪に憑かれたなんてこと言っても

信じてもられないだろうし、まあ医者の治療の範疇にない・・・当事者に

しか分かるはずがなかった。


こうなったらイタコだろうと思ってネルコをイタコさんに見せたら、猫又

って妖怪に取り憑かれてるって言われた。

だから、そんなことはもう分かってるんだよ。

猫又を祓う方法が知りたいんだ、こっちは。

でも猫又に一度とり疲れたら祓うことはできないんだってよ。


そう聞いてなぜか僕は少しだけホッとした。

猫又を祓うことができないってことにだ・・・。

なんだよ、僕は内心じゃ今のままのネルコでいいって思ってるんだ。

無理に祓うことなんかないんだ。


だからこれからは僕は猫又に取り憑かれた女と一緒に暮らすことになるんだな。


「おっはよ、ケンジ・・・」


「朝からそんな目で俺をみるなって・・・」

「これから仕事なんだからな・・・誘惑するなよ」


「誘惑なんかしないよ・・・ケンジの勘違い、私はこういう目なの」


「仕事の邪魔するなよ、そろそろ新作でも書かないとおマンマ食い上げに

なっちゃうからな」


「横にいていい?」


「いいよ・・・」


僕が仕事してる時はネルコは僕にくっついてこない。

ちょうどいい距離感。

離れずくっつかず・・・そういうほどよい関係がいい。


ただ、ひとつだけ心配なことがなくもない。

それは猫には発情期があるってことだ。


猫の発情期は年に2、3回やってくるらしい。

ネルコは猫又に取り憑かれてるだけに春になって発情でもしたら・・・

想像するとちょっと怖い気がする。

どなっちゃうんだろう?


男は僕だけだし・・・もしかして欲求不満の解消に迫ってでも来られたら、

仕事になんかなんないだろ?

それに僕の体力だって問題だし・・・最近運動不足だからな・・・。

フィットネスにでも行こうかな。


僕が執筆してる間、ベッドの上で気持ちよさそうに寝てるネルコは可愛い

もんだ。


物書きは基本的に猫が好き?

案外そうかもしれない・・・僕が知ってる有名な作家さんちにも猫ちゃんが

いる・・・もっとも猫又に取り憑かれてる彼女なんて僕の家くらいだろうな。


厳密には僕の彼女は猫じゃないし・・・見た目の容姿は人間の女。

中身が猫又なだけ・・・。


まあ、取り憑かれたままでも、いい関係でうまくやっていけたらいいかなって思う。


僕が仕事してる時は、ネルコは分かっていて僕にくっついてこない。

ちょうどいい距離感。

離れずくっつかず・・・そういうほどよい関係が僕にはちょうどいい。

暖かい日差しのように・・・。

彼女も僕も・・・猫又に感謝か。


おしまい。





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猫又に取り憑かれちゃった僕の彼女。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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