優柔不断な彼氏が追い詰められたら

矢斗刃

 優柔不断な彼が追い詰められたら!?

寝起きで走りだしている俺には三分以内にやらなければならない事があった。


「あと三分で地球は滅亡します!」


布団から起きて、寝ぼけ眼の俺はテレビの前でそう言われて・・・走り出す。

まだ何もやれていない。

このままでは終われない俺の人生。

何もかもどうなっているかもわからない。

やることと言えば、好きな人に告る事以外考えられない。


「はぁーはぁー。」と普段運動をしていないから、100メートル走るだけで、こんなにも息切れして疲れている。

幸い近所にいる幼馴染だ。まだ時間はある。

目の前に彼女の家がある。

ピンポーン、ピンポン、ピーン、ピーン、ピーーン、ピィーーン・・・とからかうようになるインターホンに若干の苛立ちを感じている。

ピッピッピンピンピーン。

いるはずだとピンポンを連打してドアから出てくるまでがもどかしい。

世界が終わると言うのにアイツは一体何をしているのだろうか?

前に上がってもいいと言われているが・・・勝手にそんなことできるわけない!

俺も未だ理性があるとは・・・こんな時だからこそ冷静であれと自分自身に言い聞かせる。

常識人だからな。そんな奴はピンポンの連打はしないだと!

地球が滅亡するかもしれないこんな時にそんな些細なことは関係ない!

「りん、いるー?!」と叫ぶがその間もピンポンを連打している。


あーあもどかしい。どうしたらいいんだと頭を抱えている。


「もう、うるさい!なに!今良い所なのに!」とちょっと怒っている!

「はぁーふざけるな!世界が滅亡するかもしれない所なんだぞ!なにそんなに呑気なことを!」

「はぁー?何言ってんの!!」と喧嘩になりそうになる。

「ふぅーいいか。」と落ち着く、地球よまだ滅んでくれるなよ!

「うん、なに改まって?」と女ではあるがボーイッシュな印象があるりん。

しっかり正面にいる彼女を見る。


「俺はりんが好きだーーーーーー!」


言ってやった。長年言えなかった言葉を言ってやった!

「はぁー?何を突然急に言い出すのよ!」

「急にじゃない、いや世界が滅亡するかも知れないこんな時だからこそちゃんと伝えときたかったんだ!」と思わず腕を握って言う。

「ああ、もうちょっと来て!」と手を引っ張って家の中に連れていかれる。

「?」

なんだこの展開は速くないか?いや世界が終わるのだから家に入れるのもありなのかもしれないが・・・

「これ見て!」とテレビの前まで連れて来られる。


「何を悠長な!この間も世界が崩壊するかもしれないんだぞ!」

「いいから見なさい!」と怒ってムスッとしている。

「むっ。」とそこまで言うのならとテレビに目を向けると・・・


「地球、あと3分で終わるなら!絶賛上映中!」とドヤ顔を決めている主演の男優がいる。

「はい、ぜひぜひ皆さん、映画館に足を運んで見に来てください!貴方なら3分以内で地球が終わるとしたらどうしますか?」テレビの向こうで最新映画のコマーシャルが流れる。


「・・・。」

「・・・」気まずい。

「あははははーこんな事あるんだなー。じゃー。」と言って立ち去ろうとする。

「まてーぃ。」とグッと腕を握られる。

「イッ。」と変な声を出す。まるでやられ役のような。

しまったこのまま俺は振られてしまうのか、確かに世界が終わる。

このままでは俺の世界が終わってしまう・・・

彼女が腕を握る力が強い。

「私は迷惑を被った!慰謝料を払っていけ!」と目が恐い。

「はぁー俺だって払って欲しいわ!朝から紛らわしい番宣しやがって!」とテレビを睨む。

くっそめっちゃイケメン俳優め!嫉妬するぞ!


「私も好きだから、ちゃんと付き合え!」と彼女は言ってくる。まるで俺より男らしい。


「はぁー?」と正面で彼女を見ていて後退る。

「逃げようとすんな!ちゃんと私を見て答えろ!」と俺の襟首を持って男っぽい幼馴染だ。

女の子らしさなんてないのになぜこんな女が好きなのかわからない。

「えーとさっきのは勢いと言うかノリドッキリみたいな!」

「それにしては息が荒くて、真剣だっただろうが!」

「そんなことは・・・。」とあっちの方向を見てはぐらかそうとする。


この状況が一体何年続いただろうか?


「ああ、もうわかったよ!付き合うよ。」

「ならいい。はい、愛の言葉を言え!」


「好きです。付き合ってください。」なんか無理やり言わされてないか?


「ほら仕事でしょ。弁当持って行きな!」と自分の弁当を俺に差し出してくる。

「ああ、行ってくる。」

「はいはい、行ってらっしゃい。」と見送る。

「まるでカップルみたいだ。」

「今日からそうなっただろうこのゆうじゅーめ!」と背中を叩かれる。

「いて、はいはいそうだね。」とこの部屋から出て行った。


「まったく何年待たせるんだよ!」と呟いたのは内緒だ。

「それが3分で・・・この映画二人で見に行くか。」とまだ番宣している初デートが映画館で上映中の〝地球、あと3分で終わるなら!‘’に勝手に決めていた。


後日デートした映画の内容が若干今のやり取りに似ていて二人真っ赤になるまだ付き合い始めてうぶな二人だった。

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