【短編】敵はバッファローにあらず?

水定ゆう

バッファローを追うバッファロー?

 ある所に全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが居たと言う。

 そのモンスターの名前はレイジング・バッファロー。ある所では村を破壊し、またある所では大地を引き裂いたと言う。


 そんな荒苦しいレイジング・バッファローの群れを追う影があった。

 ハッスル・バッファロー。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れだ。


 そんな中、レイジング・バッファローは全身を赤くヒリつかせ、ハッスル・バッファローにお尻を突かれる。

 痛い痛すぎる。お互いに共存する生態系が同じなせいで、こうして日々ど突き合いを繰り広げていた。

 

「「「ムォー!!!」」」

「「「ズモー!!!」」」


 お互いの絶叫がこだまし合う。

 その様子を見ていた若い冒険者の二人は、ふとおかしなことに気がついた。


「うわぁ、レイジングとハッスルの群れだ。あんなのに巻き込まれたら即死じゃ済まないぞ!」

「いや、即死以外にどんな死に方があるのよ」

「んなことはどうでもよくて」

「自分で振っておいて自分で見放さないでよ! で、なにがどうでもいいのよ」


 少年冒険者はボケを放棄し少女冒険者はノリツッコミに奔走する。そんな傍に見えた荒々しい光景の真後ろ、二種のバッファローを追う影があった。


「いやアレだよ、アレ! ハッスルのお尻、大きな傷痕があるだろ!」

「なに言って……な、なにあの剣の痕。痛々しいわ」


 なんとハッスル・バッファローも痛みに襲われていた。しかも深々と入った剣の傷。一体誰が付けたのか。そう思い見回すが姿はない。


「やっぱりいないな」

「きっと何処かに行っちゃったのよ。ほら、私達も行くわよ!」


 そう言うと、少女冒険者は少年冒険者の腕を引く。

 きっと凄腕の冒険者が居たんだろう。その程度の認識でその場を後にすると、小さな黄色い生物が徘徊していた。


「ピヨ!」


 レイジングとハッスルを追うその生物はなんと剣士。

 名前はヒヨコ勇者。何者にも負けないその剣士は後に魔王を倒すことを誰もまだ知らない。

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