猛るケモノの王

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

決闘、スタンバイ!

 遊技ゆうぎには三分以内にやらなければならないことがあった。いや三分どころか、できるだけ迅速に。さもないと一分遊戯となってしまう。

 出せるカードはある。あるが、しかしこれは諸刃の剣もいいところだ。これしか出せなかったとしても、出すべきかどうか逡巡するような恐ろしいカードなのだ。

時間ときは進んでるぞ」

 含み笑いの色を滲ませた宮内みやのうちの言葉を聞き流そうとするも、カードを持つ手がおののいた。

「まさかおまえ……!」

 遊技が何を躊躇ためらっているのか、宮内は

フィールドにはレアカードもたくさん出てるんだぞ!」

「それでも!」

 遊技は不敵に笑った。笑いきれてはいなかった。仄昏ほのぐらい色がその目に宿っている。

 きっかり一分を消費して、遊技はついに手持ちのカードを場に出した。


     *


 公式大会では禁じられているカードがある。ゲームバランスを著しく損なうたぐいが大多数を占める。

 だが、この決闘は公式ではない。ゲームショップ『ヴァンカド』の闇のゲームだ。全てのカードがアリだし、カードに書かれた効果は絶対の、アリアリルールである。しかも、より展開をスリリングにするため、持ち時間三〇分の切れ負けルールも導入されていた。

 開始の宣言は、

「カードに書かれた効果は〜」

「「絶対〜!」」

 だった。


     *


 場に出されたカードを見て、宮内も審判も小さく悲鳴をあげた。

『全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ』のカードに見えた。


 その効果は『全てのカードを破壊する。それらは再生できない』


「いや、待て」と審判役の店長木村庄助が両のまなこを見開き、訴える。「これは——」

「そうだ、これは『祝福をたたえながら突き進むヌーの群れ』だ。ここでダイスを振る。成功すればATアタックタイムへ突入する!」


 転がるダイス。止まった目は——


「あスカだね」と審判。

「バッカじゃないの! こんなことなら『高確率で勝利をもたらす魚の群れ』のカードにすべきだった!」

「はいはい、6の目が出るか手持ちがなくなるまでカード捨てて」

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