やらなきゃだめなのに

水乃流

第1話

 俺には三分以内にやらねばならないことがあった。三分間といえば、カップラーメンができるまでの時間。そうそう、麺が伸びないようにお湯を入れてから三分以内に……って違う違う、そじゃない。俺はカップラーメンが食べたい訳じゃない。いや、わざと放置した方が麺が柔らかく、つゆがしみて美味いなんて話もあるけれど、俺的にはやっぱり開発者が指定した時間通りに食べるのがいいと思って……違う、いや、そう思っているのは違わないが、今はそれが本質じゃない。三分なんだ。三分以内に……三分……「三分間待つのだぞ」って、それはレトルトカレーのCMか。見たことないけど。今なら電子レンジでチンなのになぁ。いかん、いかん。食べ物から離れないと、って、違う、三分間だよ、三分間。

でも、日本人としては、三分間と言えばやはりウルトラマンの変身時間だよね。地球の環境下では、ウルトラマンの巨体は三分しか維持できないと。スーパーマンが太陽系で(クリプトナイトという弱点はあるけれど)無制限で活動できることを考えると、ウルトラマンは厳しい条件で戦っているんだなぁ……って、そうじゃない。ウルトラマンの時間制限は、テレビ的な理由で付けられたんだよ。だいたい、どうみても三分以上戦っているじゃないか。忘れた頃にカラータイマーがピコンピコン赤くなって、いや、もう三分過ぎてますやん的な。制作側も三分って設定忘れてるんじゃないかってくらい。だったら、最初から時間制限なんて設定加えなきゃいいのに。成田亨の描いたウルトラマンのデザインにカラータイマーがないのは有名な話じゃないか。それを継承して「シン・ウルトラマン」に登場するウルトラマンはカラータイマーがないんだよ……って、それもちがーうっ!

 なぜだ!時間が限られているのに、思考がまとまらない。考えなきゃならんことがあるのに、考えがあちこちに飛ぶ。くそっ、これも敵の妨害工作なのかっ!だが、負けるわけには、負けるわけには行かないんだぁぁぁっ!


「はい、時間切れ~」


 なんだとっ!もたもたしているうちに三分立ってしまったというのか?くそ、お前の仕業かっ!貴様、何者だっ!


「え? それ聞いちゃう? うーん、じゃぁ言っちゃおうかな」


 私は、君。逃避という名の君自身さ。


………………


「……ってなことがありましてですね」

「あのね、言い訳はいいから。三分以内にふたつの薬液混ぜないとだめって知っているでしょ? もう少し、上手い言い訳考えてね。あ、単位は上げられないから」

「そんなぁ~」

現実は、甘くない。

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