黒歴史エッセイ『振られつちまつた悲しみに』~反面教師的恋愛噺~

村田鉄則

振られつちまつた悲しみに~反面教師的恋愛噺~

 大学1回生の春、出会いの春、別れの春、二階から落ちてくる春、様々な春があるが、志望大学に受かって、新生活を送り、心ウキウキさせていた俺は、春の陽気に踊らされ、恋というものをしたくなった。

 俺は当時、彼女いない歴=年齢で(今もだが)まだピチピチの18歳だった。

 恋という漢字とへんという漢字は似ているが、今から話す俺の恋物語は、へん物語に違いない。

 

 大学1回生、自主映画制作サークルに入った私は、サークルの先輩や同期の映画の制作スタッフに入ったりして、いそしんでいた。

 反面教師的恋愛噺は、同期の映画制作スタッフに入ったことから始まった。

 冒頭に散々、春の話をしたが、実を言うと、この話は夏休みから始まる。


 その時期、一通り映画の作り方を先輩から学んだ1回生たちは、各々、監督作品を撮り始めていた。俺は、刈り上げのイケメン同期と仲良かったのだが、彼の映画にスタッフとして携わることになったのだった。

 俺は、その時、1人の女性とまともに知り合ったのだった。サークルでちょくちょく会っていたものの、初期から参加はしておらず、彼女のことをそれまでそこまで知らなかったのだ。話をしていくと、実は、俺と同じ学部だった。

 生粋の関西人で、ギャグを交えてめちゃくちゃ話しまくる明るく溌溂とした彼女は笑顔も素敵で、当時の俺には、とても魅力的だった…そして、俺は、その後、恋のアプローチ、いや、変なアプローチをし始めるのだった。

 ※彼女のことは匿名性を高めるため、”彼女”と言うが、世間一般で言う彼女ではなく、三人称の彼女なので、悪しからず。

 

 ①まず、俺は彼女の誕生日に誕生日プレゼントをあげた。(キモイ)


 学部の授業終わりなので、他の人に見られている状態でだ。

 今思うと、キモイ、きもすぎる!!!!!!おぇえええええええええええええええ。俺が彼女だったら、引くぜ…

 そんなキモイ行動も彼女は笑って受け入れてくれた…いや、表面上は…なのだろうが。優しさもあったのだろう。

 その後、その行動のせいで、俺が彼女のことが好きだという噂が学部内で流れ始めたらしい。いや、なんで知ってんねんというお思いだろうが、当時の俺の学部内は女性が多く、噂が流れるとコソコソ、コソコソ女性たちが噂するのが普通だったのだ。そして、大学の狭い教室では丸聞こえだった。

 まず、気づいたのはプレゼミだった。プレゼミで女子が集まって、こっちを見てコソコソ話しているのに気づいたのだった。笑いながら、コソコソコソコソと。そして、声が聞こえてきた。

「ええマジ!?ホモだと思っていたw」と…。(これしか聞き取れなかった)

 その時は何の話をしていたか俺はよくわからなかったのだが、その次の日くらいだったか、学部の必修科目の語学の授業でその噂が何だったのか気付いた。俺は引っ込み思案で、友達が欠席で居ない場合、1人でその授業を受けていたのだが、ちょうど1人で受けていたときのことだ。

 いつも無視されていたプレゼミも一緒の女子が、こちらを見てコソコソ話していたのだ。なんやねん、いつも無視しているのに…と思っていたら、こんな旨の話が聞こえた。…匂いも変わっているし、もうじき○○さんに告白…、と。

 俺はその時、自身の匂いに悩んでいて、柿渋石鹼を使っていただけで、匂いを変えたつもりではなかったのだが…俺がどうやら彼女に告白する話になっていたらしい。


②いきなり、彼女をデートに誘う。

 話は変わるが、とある日、俺はサークルの友達と相談し、突然、LINEで彼女にデートの誘いをした。指を震わせながら、送信ボタンを押したからね、俺は…

 いきなり、こんなことをするのは、よっぽどのイケメンしかだめだ。

 俺みたいな不細工な男にこれをされた彼女は恐怖だったに違いない。

 もちろん、その後、丁寧に断りを入れられた。そりゃそうだ。


③公園でのデート(同期、先輩付き)

 いつのまにやら、俺のサークルの同期が、俺が彼女のことを好きなことをサークルの先輩にもらしていたらしく、サークルの一部に俺が彼女のことを好きという噂がもう流れ始めていた。

 その噂を知る同期、先輩が気を使ってか彼女と一緒に学校近くの小さな公園で遊ぶことになった。俺はこのとき、緊張のあまり彼女とはほとんど話せず、先輩とばかり話してしまった。(いや、何しとんねん!!)


④飲み会後、逃げる

 サークルの飲み会後(確か撮影終わりの打ち上げだったはず)、帰りの電車の方向が一緒だった俺と彼女、サークルの女子(俺と彼女と同じ学部でもある)と一緒に帰った。が…

 2人が会話を続けている間に俺は緊張してしまい、全く声が出ず、無言で一緒に歩き、そして…そこは烏丸周辺で地下道がたくさんあったため、地下道に下る階段へ逃げ込んだのだった。LINEでそのことについて謝ったが、これが後の展開に関わっていく。


 実を言うと、彼女は俺が彼女のことを好きだということを誰かから聞いていたらしいのだが(サークル員からまた聞き)、①~④の気持ち悪い行動を経て、真底呆れ尽くしたのだろう。とある映画撮影の打ち上げであの事件は起きた。


 打ち上げ中に居酒屋でトイレを終えた俺が戻ってきたとき、俺と別の席で2人、先輩と彼女が話していた。まあ、そもそも最初から席は離れていたので、その時点で嫌われていたことがうかがえる。

 彼女は酔っぱらってて、リミッターが外れてめちゃくちゃ、大声で話していた。ここからのセリフは俺がいまだに覚えている部分のみなことは承知していただきたい。

「このあいだ、飲み会の後、村田君(本当は本名)が、私たちのこと無視して先に帰っちゃったんです」

 と彼女は笑いながら言っていた。

「最低だな、村田」

 と先輩は言った。

「本当最低…しかも村田君、LINE返すんめちゃくちゃ遅いんですよwもう無理!って感じです」

 彼女の大声が飲み会の会場で響く。


 飲み会の後、俺は1人帰路についた。

 そして、全速力で自転車を漕ぎ、下宿に着いた後、蒲団の上で仰向けになって、おもっくそ泣いたのだった…それは自分の行いに対する悔いの涙だった。

 

 まあ、当たり前の結果ではあったのだが、ここで俺の恋愛は終わった。間接的に振られたので、彼女のことは諦めたわけである。俺の気持ち悪い変なアプローチは失敗に終わったのだ。今思うと、あんな変なことばかりしていたら、振られるのは当たり前だ。


 ここで話が終わったら、よかったのだが、話は続く。

 

 彼女はその言葉を発したことを忘れていたのか、俺が聞いていることに気付いていなかったのか、わからないが、後からサークルの同期から聞いた話だと、飲み会の後も俺がまだ彼女のことを好きだと勘違いしていたらしい。

 そんな彼女だが、1回生の内にサークルの先輩と付き合い始めた。その時、俺が失恋して、、そう勘違いしたみたいだった。

 その後、俺はそのことが噂になり、Twitterのツイートがキモかったこともあり、学部の女子やサークルの同期の女子から嫌われ、卒業まで悪口を言われる、訝しむ目線を向けられるようになったのであった。


 ちゃん、ちゃん。

 

 因果応報である。タイムスリップできるとしたら俺は、大学1回生の自分をぶん殴りたい。恋愛に慣れていないのに、恋愛に手を出すな!!!!と。


 ちなみに、俺は自分の愚行が招いたことが軽くトラウマで、1回生の後にも可愛いなと思う女子ができても、アプローチすることはしなかった。

 ってか、約10年経っている、今もしてないが…

 正直、恋愛なんて、もうしたくねえよ!!!


 愛なんていらねえよ、春。

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