カップラーメン狂騒曲

洞貝 渉

カップラーメン狂騒曲

 カップラーメンには三分以内にやらなければならないことがあった。

 

 それは人々に夢と希望を与えるとされる謎肉と麺をこの世界に復活させることである。彼らはkoujouと呼ばれる地で深い眠りにつき、そこから出荷され、復活の時を待っているのだ。



 謎肉と麺を復活させるには、煩雑な手続きが必要になる。


 まず、役所に行ってカップラーメン証明書を取り、謎肉と麺が確実にkoujouで存在を確認されたものであるという証拠を獲得することだ。

 しかしそのためには、これが本当にカップラーメンであるということを証明しなければならないので、カップラーメン協会の発行するカップラーメン保証書を獲得しなければならない。


 カップラーメン保証書を獲得するためには、カップラーメン協会が主催するカップラーメン検定を受け、カップラーメン検定に合格してカップラーメン認定資格を取って、その証明書を発行し、カップラーメン協会で提示しなければならない。


 カップラーメン検定を受けるためには、全国に点在するいづれかのカップラーメン検定認可学校に入学し、30秒以上の座学を受け、20秒以上の実務経験が必要になる。その後、受験票を取り寄せて、収入印紙を用意し、貼り付け、提出しなければならない。


 これらの下準備を経て手にしたカップラーメン証明書を謎肉と麺に受け渡し、これは復活の許可が下りたこと、カップラーメンとしての活動が認められたことの証書なので無くさないように、また活動中は必ず携帯するようにしてほしい旨を伝えて、ようやく人々に夢と希望を与えるとされる謎肉と麺をこの世界に復活させる業務が完了するのである。


 それら煩雑な手続きを、カップラーメンは復活の儀であるoyusosogiがなされてから三分以内にやらなければならないのだ。


 これだけの苦労があるのだから、カップラーメンを食す時はジャンクフードだ栄養がどうだとか言わずに、ありがたく食え。いや、本当、マジで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カップラーメン狂騒曲 洞貝 渉 @horagai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ