点滅しはじめたカラータイマー

藤光

残された時間

 わたしには三分以内にやらなければならないことがあった。もちろん、この地球という星を平和にするという作戦ミッションのことだ。そのために、はるはる遠い宇宙の果てからここまでやってきたのだから。


 これまでもわたしは、この星の生活に溶け込み、地球人たちと力を合わせて、数千万年の時を超えて海の底から蘇った巨大怪獣から街を守ったり、地球を植民地とするため異なる銀河からやってきた異星人を撃退したりしてきた。


 しかし、こうしたわたしの戦いもそろそろ限界を迎えつつあるように感じるのだ。わたしが数十年間戦い続けてきた結果、この星から怪獣の姿は消え、邪悪な異星人が襲ってくることもなくなった。


 だが、その一方で地球人同士の争いは無くならない。富める者と貧しい者、貧富の格差は広がり、人々の排出する大小さまざまな廃棄物によって、地球環境は悪化の一途を辿っている。


 なによりこの地球上から戦争がなくならない。お互いにお互いの正義を主張して譲らず、地球人同士で戦うのである。何日も銃を撃ち合い、何ヶ月もミサイルを打ち込み合う。男が死ぬ。女も死ぬ。老人も子どもも皆死んでゆく。彼らは互いに殺し合って飽きることをしらない。


 怪獣も異星人もいなくなったが、いまこの星に平和な場所はない。どこもかしも、あらゆる場所に争いは満ちている。怪獣や異星人がいなくなったことがかえって、地球人同士の争い招いているのだ。


 わたしが怪獣や異星人を相手に戦ってきたことは正しかったのだろうか。彼らのいなくなったこの星で、次にわたしはどうすればいいのだろう。争いをやめない地球人と戦うのか? 同じ地球人を善と悪とに区別して? 三分という短い時間しか与えられていないわたしに、このような難しい問いの回答が得られるのか? いったいわたしはだれのために地球を平和にしてきたのだろう。そもそもこの星にとって平和とはなんなのだろうか。


 ああ、警告音が鳴りはじめた。カラータイマーが点滅している! もう、決断しなければならない。わたしには、そして、残された時間は少ないのだ。

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点滅しはじめたカラータイマー 藤光 @gigan_280614

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