遠く遥か彼方の時

亜夷舞モコ/えず

遠く遥か彼方の時

 アルティマルトには三分以内にやらなければならないことがあった。

 この場合の三分とは、天の川銀河に属する太陽系第三惑星である『地球』の時間における三分である。このアルティマルトは、地球を遥か遠く、三〇〇光年ほど離れた星からやってきた戦士である。アルティマルトは、二万と五八歳であり、地球の時間とはかけ離れた時間を生きるものである。それでも地球の時間に多少の理解があるのは、現在地球人の黒部ハヤテと一体化しているからである。一体化の理由はと問われると、それはアルティマルトが地球に逃げ込んだ宇宙人を追いかけている最中に、戦闘機の訓練を行っていた彼とぶつかってしまい、彼に重傷を負わせてしまったからだ。彼に自分の超人的な回復力を貸し与えつつ、地球の平和を守るという一石二鳥の作戦だったのだ。

 だが、ここで地球の環境というものが問題となってきた。地球までは三〇〇光年も離れてしまい、また違う星の環境下なのである。彼が戦闘に仕えるための時間には、限界があったのだ。それが三分である。

 三分というのは短い。二万年を生きる彼にとっては、一瞬というほどの時間だ。ジャネーの法則というらしい。地球の人間も面白いことを言うものである。

 アルティマルトはゼータロッドにて、人間状態から超人状態へと戻る。この戻った時点において、自分の中で数を数える。一、二、三……気合を入れるためにいつもここで叫ぶのだが、本来はそんな時間さえも惜しい。さっさと片付けなければならない。思考を超高速でめぐらせる。超高速でめぐらせた結果、そもそもこちらがテキトーに戦う意味もないと判断する。片付けてしまえばいいのだ。それでなんの問題もない。地球にさえ害が無ければいい。開始わずか三秒。

 ハア! という掛け声と共にはじき出した結論である。

 アルティマルトは体の前で腕を十字に組み、力を集中させ全身全霊を込めた光線を放つ。地球外の超自然的エネルギーに基づいたアルティマルトの最強の必殺技である。

 開始四秒。光線は敵対宇宙人に命中。次の瞬間には、それは炭を通り越し、粒子となって消滅した。ふう、終わった――とアルティマルトは思考の速度を緩めつつ、息を吐く。

 彼は、自分の時間の思考に戻って、結論づける。

 次も変身後、即光線を打って終わらせようと。

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遠く遥か彼方の時 亜夷舞モコ/えず @ezu_yoryo

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