第5話 球技大会当日

そしてとうとう球技大会当日を迎えた。球技大会に参加したチームは10チーム。ほとんどが我らが「貧血バッファローズ」と同じように、友人たちが集まって作った混成チームである。ただ、2チームだけ、本気で「優勝」を狙いに来ているチームがあった。一つは医学部保健学科で、野球やソフトボール経験者を集めて作った「保健学科 必勝チーム」、そしてもう一つが、医学部・歯学部野球部の有志で作った「野球部チーム」だった。


リクリエーションのための球技大会なので、本気でやってこられたらどう考えても勝ち目はない。俺たちはみんな、「まぁ、どちらかが優勝するんだろうなぁ」と思いながら、大会の説明を聞いていた。


チーム内に30歳以上の人が2人いれば1点、28歳~30歳の人が3人いれば1点、女性が2人いれば1点が付与されること、ゲームは5回まで。5回時点で引き分けの場合はチームの代表者でじゃんけんをして、勝った方を勝者とする。トーナメント式で、敗者復活戦はなし。あとは普通のソフトボールのルールに則ること、グラウンドを2面に分け、それぞれAブロック、Bブロックとし、決勝戦でそれぞれのブロックの勝者が対峙する、という事だった。


そして各チームの代表者が、トーナメントのどこになるのかを決めるくじを引くこととなった。当然くじを引くのは、なるさんしかいない。


くじを引き終わり、トーナメント表が発表されると会場から「うわぁ」というどよめきが起きた。


本気で勝負を掛けに来た2チームがどちらもBブロックとなってしまったのだ。なるさんのくじ運のおかげで、我らがチームはAブロック。しょっぱなからケチョンケチョンにされてお終い、という事はなさそうになった。


そして試合が始まる。俺たちの試合は第二試合、相手は1学年下の3年生混成チームだ。相手もこちらと同じようなチーム編成である。お互いに「お手柔らかに~」と言いながら、その場を離れた。


会場から少し離れたところで、第一試合のスターティングメンバーを決める。この人の年齢が何歳だ、というのは見た目ではわからないが、男性か女性かはわかりやすい。という事で、ねこさんとみやさんは2人でくじ引き、男性は全員でくじ引きをした。いわゆるフレキシブルなチームなので、「誰がどこを守る」というのは決まっていない。いや、それは嘘だな。とびぬけて運動神経の悪いしんちゃんと俺は、野球経験者ならだれでも分かるあの定位置、そこが暗黙の了解で割り当てられることになっている。


最近はサッカーの人気に押され、「草野球」という言葉もあまり耳にはしなくなったが、俺が子供のころには野球が今以上に人気のあるスポーツで、「スポーツと言えば野球」であった。


もちろんいろいろな草野球チームがあったのだが、時に欠員が出たりする。野球やソフトボールは9人いないと、ルールにのっとった試合ができない(子供たちは、「三角ベース」とか「透明ランナー」などのローカルルールで遊んでいたが)。そういう時には友人などを「助っ人」として呼んでくることになる。このような助っ人に割り当てられるのが、「遊び」としての野球では一番守りやすい守備位置と言われている「ライト」(ホームベースに立った状態で、右側、1塁と2塁の奥(外野)にあたる)である。打順は8番。なので、このような「助っ人」の人や、野球ダメダメな人は「ライパチ君(「ライトで8番」の意)」と呼ばれている。古い記憶では、小学生のころに「ライパチ君」という漫画が新聞に連載されていたような記憶があるのだが。


閑話休題。そういうわけで、しんちゃんと俺は自動的に「ライパチ君」となる。実際に下手な人間からすると、そういう場所に入れてもらえるのはありがたいし気が楽だ。


ただ、「本気」で野球をしている人にとっては、「ライト」は回転のかかった球が飛んできたりすることも多く、結構守備が難しいそうである。


さてさて、そんなわけで先発メンバーが決定した。


1番 タッシー

2番 兄やん

3番 きよ

4番 竜牙さん

5番 しょうた

6番 よっすぃー

7番 ねこさん

8番 しんちゃん

9番 師匠


ピッチャーはとりあえずタッシーが先発。あとは適当に。守備位置は先ほどのとおり、しんちゃんが「ライパチ君」、後はできる人は内野、苦手な人は外野、キャッチャーはクロスプレーとなった時、ガタイがいい方が有利、という理由でしょうたが守ることとなった。


時間を見計らって会場に向かうと、ちょうど第一試合が終わったところだった。勝者は「軽音楽部チーム」。彼ら、いつも夜にライブをしているのだが、結構健康的だなぁ。

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