バッファロースタンピード

大黒天半太

バッファロー群集疾走

 全てを破壊しながら突き進むスタンピードバッファローの群れ、そう見えないこともないMRAPバッファロー~六輪駆動6WD対地雷処理装甲車Mine Resistant Ambush Protected~の車列は、確実に足下の地雷原を潰して行った。


 作業アームで一つずつ分解され無力化される地雷や爆発物もあれば、バッファローの真下で炸裂する地雷もある。地雷がその本来の効果を発揮する、車体下面からの突き上げる打撃も、その打撃力を前提とした車底のV字装甲が衝撃を受け流し、ランフラットタイヤは、爆発と衝撃でのパンクを物ともせず走り続ける。


 アダムス中佐の部隊が送り込まれたのは、次元の門を潜ったくぐった先の異世界のはずだったが、中佐も部下達も、装甲車両を狙った地雷やトラップを撤去して進み続けると言う、地球と同様の任務通常業務を現状は繰り返している。


 違うのは、分解して無力化する対象の地雷の七割は、地球から持ち込まれたものではなく、魔法と魔術の産物で、対抗するための解体・無効化の技術もまた、新たに得られた魔法技術によるものだと言うくらいの違いだ。


 これに続くのが、IFV歩兵戦闘車Infantry Fighting VehicleとAPC装甲兵員輸送車Armored Personnel Carrierだ。


 IFVには、戦闘訓練を受け通常兵器で武装した兵士達が乗り込んでおり、APCに乗った冒険者とも呼称される異世界での戦闘力に覚醒した者達を援護して、異世界に送り込むため、ここまで乗り込んで来ている。


 覚醒者の中には、こうした装甲車両の装甲すら剣や槍で切り裂ける者や、呪文一つで車両丸ごと焼き払うことができる者もいるらしい。

 それを特殊な訓練を施されたとはいえ、通常装備の一般兵士が援護・護衛する必要があるのかと言われると、異世界への門ゲートが、せいぜい大型車両一台が通り抜けるのがやっとの大きさである以上やむを得ない。


 ゲートを開く魔力を感知され、早々に迎撃されたのでは、魔力も兵員も覚醒者達の命さえも無駄に費やされることになってしまう。

 魔術地雷で装甲車両を停止させられた部隊は、車体が門を塞ぎ、先行車両と人員はこちらに戻れず、後続車両は前進も救助もできない状態に置かれた。


 故に強引に向こう側へ通り抜けた後、実力行使で橋頭保を築き、覚醒者達が敵に相対することができる場を確保するまでが、アダムス大佐率いる『異世界部隊ディメンジョン・フォース』の役割だ。


 大きさも設定自在な敵側の異世界からの門ゲートがこちら側に開き、火を吐くドラゴンや魔法を駆使する怪物クリーチャーを送り込む前に、向こう側の設備と術者を倒さなければならないのだ。


 まぁ、魔法の甲冑ほどではないにしろ、攻撃を防ぐ装甲を備えた大型車両が、時速一〇〇㎞近い速度で蹂躙するのだから、我々が大型の魔物とその異能力を初めて見た時のショックと同じものを、異世界の住人も感じたに違いない。


 いや、そう感じて、こちらの装甲車両に警戒してほしい。そうであれば、いくらか心理面では互角に持ち込める。そこが、バッファロー・スタンピードの終着点であり、反撃のスタートだ。

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バッファロースタンピード 大黒天半太 @count_otacken

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