第3話 皇位継承権

 実は私にも皇位継承権は存在する。祖母が皇女だったからだ。厳密に言うと皇位継承権の順は1位がセドリック、2位が皇女・へルーベ、3位が皇女の娘である母、4位がお姉さま、5位が私、6位がテーシュ、あとはその他公爵家だ。


 何故、へルーベさまの継承順位が低いかというと、セドリックの母より身分が下のためである。皇妃はチェルバイユ侯爵家のネイリスさま。


 ネイリスさまは波打った樺の髪が特徴的で瞳は黒。気の強そうな美人だ。


 一方、へルーベさまのお母さまといえば一世を風靡した美人として有名なユウィジェさま。彼女はツレイ子爵家出身。


 ユウィジェさまはストレートの黒髪に神秘的な淡い緑の瞳の持ち主だ。今にも消え入りそうな瞳は儚げで美しい雰囲気を作っている。


 もちろん、へルーベさまもそっくりな容姿だ。


 ツレイ子爵令嬢が皇妃などチェルバイユ家も上位貴族も許すわけがなく、第二妃として迎えられた。


 へルーベさまは私と婚約破棄をしてはならないと弟に説いたようだが、鬱陶しげに異母姉を追い払ったらしい。


「母上、私が魔術師となった暁にはへルーベさまを推したく思います。公爵家としてもそちらの方が利は大きいかと」


「そうね、でも本当に魔術師になれるの?なれなければ元も子もないわよ」


「なれますよ、今のシグラならね」


 不敵に笑う彼女の手元に存在するのは蒼い薔薇そうび。固有魔法が炎の者であっても難しいとされる蒼い炎をいとも容易く扱う。


「驚いたわ、貴女とイリスールさまの言うことは本当だったのね」


「くれぐれもご内密に。1ヶ月後、私は魔術師試験を受けます。それに必要なのは実技のみ。師匠たちと戦うことになる」


 ですから、と満面の笑みを浮かべて続ける。


「皆様の固有魔法を見せていただこうかと」


「私たち家族は知っているでしょう?まさか、皇女殿下や騎士団の方々も!?」


「ご名答です」


 セドリック殿下は"炎"。メイリーは"治癒"。お姉さまは"転移"。テーシュは"拘束"。母上は"氷"。父上は"結界"。どれも重宝される、簡単なものは一般魔法にされる。そしておばあ様は"雷"。皇帝殿下は"強化"。へルーベさまはユウィジェさまと同じ"水"。


 水、炎、氷、結界は一般的。治癒、転移、強化などは珍しいが一定数存在する。


 魔力炉となり得る私の固有魔法は師匠が隠してきてくれた。でも、もう大丈夫。私ひとりで国ひとつに値する力をつけたから。


 遠い異国の師匠にそう語りかけた。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪逆令嬢ですか……あながち間違ってはいませんが、そんなに地味な真似は致しませんわ 彗驊 @suika0817

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ