第42話 空が明るくなってきた

「私が行く」

 と手を挙げたのはあおいだ。

 追随するように莉奈りなも手を挙げるのかと思いきや、尻込みしている。

 余程恐怖らしい。その気持ちは分からなくもない。


「じゃあ、俺と葵が行く。その間、あの子がここに来ることはないだろうし」

「……うん」


 莉奈はそう返事はしたものの、何か悩んでいるようだ。

 葵が小さなリュックにスマホを入れ、いつでも出発できるよう準備を整えている。


直樹なおき、向こうの道は私でも通れそう?」


 そう尋ねられて、直樹は葵の足元を見た。

 スニーカーだ。十分行ける。


「途中一か所、五十センチほどの落差があるが、そこさえ気をつければ大丈夫だと思う」


「私がそっちを通ってもいい? 直樹には悪いけど、あの子が現れるのはいつも私道の方だから……。その代わり、その段差を見つけたらハンカチで目印をつけておく。次にそこを通る人のために。もしかしたら、私かもしれないけど」


 最後は自嘲気味に笑っていたけれど、そうなってほしくない、と直樹は切に思った。

 そして、疲労で集中力が散漫になった頃、再びあの子の声が響き渡ったのだった。



『いぃぃぃちっ!』



 はずむような声に直樹は多少苛立ちながらも、葵と共にスタートを切ったのだった。

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