第29話 迎え火

 大人のものとも子どものものとも判別のつかぬ文字に、この内容を信じて良いものかと頭を悩ませる。

 他に何か書いていないかと全てのページを覗いてみたが、何も記載されていなかった。


「前の所有者に、ノートを外に持ち出すな、と忠告されている。今読み上げた内容を覚えたか?」


 そう尋ねると、あおい莉奈りな亮平りょうへいが頷いた。

 直樹なおきはそれを確かめると、ノートを元の場所に戻し、その後、四人は逃げ出すようにその場を離れたのだった。


 ◇ ◇ ◇


 時刻は深夜二時。

 四人はバーベキューコンロを囲い、今後のことを話し合った。

 あのノートに記載されていることが真実なら、お盆を過ぎればあの子は姿を消すという。


 お盆とは、一般的には八月十三日から十六日までの四日間をさす。十三日に迎え火で先祖の霊を迎え、十六日に送り出すのだ。


 迎え火とは、先祖の霊を迎える目印に、玄関先や庭で焚く火のことを言う。

 図らずとも十三日の夕方からバーベキューだと言って、山荘の庭先で火を焚いてしまったことが、あの子を招く原因になったのかもしれない。

 それとも、何もせずとも、あの子は現れたのだろうか。


 あの子がいったい何者なのか分からないが……。

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