第28話 山荘を抜け出すには

 少しゆがんだノートをめくると真っ先に飛び込んできた文字が、『あの子について』だった。


「この山荘には、女の子が住んでいる」


 あおい莉奈りなの肩がびくっと震えた。

 直樹なおきは二人を気にかけつつ、続きを読み上げていく。


「お盆の時期になると、あの子は目を覚ます。

 この山一帯が、あの子の遊び場。

 皆が去ろうとすると、あの子はそれを引き留める。

 あの子は正しい遊び方を知らない。

 鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ。

 あの子にはあの子のルールがある」

 

 直樹が前所有者から聞いた情報はここまでだ――。

 この先は都市伝説のサイトで見た内容とほぼ一致する。


「ここを抜け出すには、方法が二つ。

 一つはお盆が終わるまで耐え抜くこと。

 一つはあの子に見つからないように、この山を下りること」


 最後の一文に、莉奈が怒りをぶつけた。


「何度も試したけど、出られなかったじゃない!」


 確かにそうだ。何度も抜け出そうと試みて、その都度、山荘に戻された。

 だが、それには理由がある。

 直樹は、莉奈の怒りに目を背け、続きを読み上げた。


「山荘を抜け出すには、二人別々の道を辿ること。

 一人はあの子に捕まるけれど、一人は通りに抜けられる。

 ゆっくりしていると、二人とも捕まるよ。

 三人以上は、あの子にとってルール違反」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る