理沙の朝は危機一髪

アオヤ

第1話

 私には3分以内にやらなければならない事がある。

それは……



 占い大好きの私の朝は忙しい。

朝9時丁度にTVのモーニングワイドで『今日の運勢』をやっている。

私はその占いで今日の運勢を確認してからでないと気になって高校へ向う事が出来ない。


 何故か、いい運勢の時の私は最強だ。

大嫌いな数学の小テストだって良い運勢の時は勉強してきたところから問題が出てくる。

大嫌いな数学で90点もとれてその日は1日中ウキウキした気分で居る事が出来た。

またある日の私は体育の時間にバスケットボールで10得点もあげる事が出来てその日のヒロインだった。

お昼に私はいつもパンを買いに行く。

お目当てはスィートホイップ・メロンパンだが人気ですぐに売り切れてしまう。

でも運勢の良い日の私は見事にそれをGetする事が出来た。

大好きなゲームアプリの【王家の出逢い】でSSRアバターを手に入れた事だってある。

運勢の良い日の私はまさに最強だ。


だか、占いなんて平凡な運勢の日が殆どだ。

平凡な運勢の日の私は…

自分で言うのも変だか、ただのドジっ娘理沙ちゃんだ。

ご飯を食べるのは遅いし、リボンも上手く結べない。

体育の時間だって卓球の時間にスマッシュをスカッと空振りする事もしよっちゅうだ。

この間なんか立ち上がる時に父の口癖の『よっこいしょういち』なんていう昭和のおやじギャグをつい言ってしまった。


 だから私にとって良い運勢の日は特別な日なのだ。

私の高校生活は良い運勢の日にかかっている。


 でも、実は占いを見る事は私にとってあるリスクを伴っている。

私の家と高校までは徒歩3分の場所なんだが…

高校の始業のチャイムは9時に鳴る。

そこから担任が教室に移動してくるまで3分だ。

だから『占いを見る事は私が遅刻する』というリスクを伴っている。

でもこの108日間一度も遅刻になった事は無いしこれからもやっていけそうな気がする。



 今日も私はいつものルーティンで占いを見ている。

でも今日の私の運勢はいつもと違う様な気がする。

今日の私の運勢がなかなか出てこない。

9時から30秒かかってやっと私の運勢が…


 『今日のアナタの運勢は普段の生活を反省し、ユトリある生活を心掛けましょう』


……なんとなく今日は最悪の運勢の様な気がしてきた。

慌てて靴を履こうとしたら靴ひもがほどけていて慌てて結び直した。

約30秒のタイムロスだ。

私は普段と違って自然と小走りになる。

歩道橋を慌てて駆け上がった。

てっぺん近くまで上がったところで躓いて片方の靴が歩道橋下まで転がって行った。

また約30秒のタイムロス。


 私は息を切らして教室に飛び込んだが教卓の前には既に担任が……

「明日までに反省文を提出しなさい」


やっぱり今日の私は最悪の運勢だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

理沙の朝は危機一髪 アオヤ @aoyashou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ