やねうらのちいさなしんせき

早乙女純章(さおとめすみゆき)

やねうらのちいさなしんせき

 ある日の朝、ジローは家でかくしかいだんを見つけた。



 やねうらにのぼったジローがそこで、みつけたのは、



 小さなおじさんと小さなおばさん。



 人形なんかじゃない。でも、人間でもないふたり。



 ジローの遠い遠いしんせきだという。



 ジローはふたりをりょううでに抱えると、部屋につれてかえった。



 机の上にふたりをならべて、どんな遊びをしようか考えていると、



 小さなおじさんは、ちゃんと手や顔を洗いなさいという。



 小さなおばさんは、ちゃんとごはんを食べないさいという。



 おかあさんよりもくちうるさい。



 手洗いうがいをして、顔を洗うと、ふたりをかかえてキッチンに行った。



 ふたりは、今まで食べたことのないものをつくって食べさせてくれた。



 おいしすぎておかわりしたくなるライスにおかずにみそスープ。



 そのうえ、お店で売っていそうなデザートまで。



 食事が終わると、



 小さなおばさんはおしえてくれた、下手でもたのしく歌うこと。



 小さなおじさんはおしえてくれた、描きたい絵を自由に描くこと。



 ぬいだふくはたたみなさい。ことばは正しくおぼえなさい。



 ふたりはどっちもくちうるさいけれど、何でも自由にやらせてくれた。



 それからそれから、宇宙へ願いごとをする時のきまりごとも、そっとおしえてくれた。



そんな、ふたりは お昼をすぎると、ねむってうごかなくなってしまった。



 つまらなくなったジローは、こっそりいたずらをする。



 あんなことやこんなことをして、



 おとうさんやおかあさんにしかられてしまうけど、



 やめられない。



 夜ごはんでは、こっそりきらいなおかずをのこした。



 ねるまえに、こっそりテレビアニメをみた。



 でも、朝になって小さなおじさんと小さなおばさんが目をさますと、



 ジローはふたりの言うことをちゃんと聞いた。



 やりたいことをたのしくできた。



 ところが、その日、お昼になると、



 ふたりは、小さな人形をひとつ残して、



 いなくなってしまった。



 それはジローに似た小さな人形。



 ふたりはどこへいったのか。



 ふたりは、宇宙へ飛んでいく船に乗って、



 地球人が知らない、遠い遠い星へ。



 ジローと同じ かわいい子どもたちの相手をするため。



 でも、ジローのことはわすれずに、



 毎月、新月の日に、やねうらにプレゼントを置いていった。



 ジローが宇宙にお願いした宝物の数々を。





おわり

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やねうらのちいさなしんせき 早乙女純章(さおとめすみゆき) @sumiyuki1129

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