人生最後の謎解きにバッファローを添えて~他になかったんですか、添えるの?~

秋野てくと

謎解きの時間だよー

私には三分以内にやらなければならないことがあった。


人類史上最大の殺人事件を解決することである。


なぜ三分以内に解決しなければならないかというと、このままでは全てを破壊しながら突き進むバッファローがメルトダウンを起こし、臨界点を超えたバッファローは地球を巻き込んで爆発するからだ。


だから、せめてその前に人生最後の謎解きといこうじゃなあないか、助手くん。


「はぁ。で、先生の言う人類史上最大の殺人事件っていうのはあのバッファローによる破壊行為のことですか? それともFGO 1.5章のシナリオのことですか?」


もちろん前者だよ。

この事件のかなり初期に、ほとんどのソシャゲ会社はバッファローの餌食になってしまったからね。

この件とは無関係、さ。


「とはいえ、バッファローは天災であって事件ではないでしょう」


いいや、事件だとも。


「あのバッファローはまったくの自然存在だと聞きましたが」


突然変異というやつだね。

全てを破壊しながら突き進むバッファローの存在は人為的なものではない。

それは確かさ。


「じゃあ……」


だが、もしもだよ。

そのバッファローに一定の指向性を持たせて、襲わせる対象を選んでいる人物がいるとしたら?


「それはつまり……人類史上最大の殺人事件において、バッファローは犯人の凶器ということですか?」


YES。


この事件では「どうやって?」を考える必要がない。

「だれが?」「何のために?」そこを考えるのが探偵の仕事となるわけだ。


「それは人類史上最大の殺人事件の話ですか? それともロード・エルメロイⅡ世の事件簿の話ですか?」


もちろん前者だよ。

……こんな事件がなければ、まだまだ新刊も読めただろうに。

残念だね。


「全てを破壊して突き進むバッファローを凶器として殺人事件を起こす……理屈ではわかりますが、実際にそんなことができるんですか? たとえば催眠術で操るとか?」


それは不可能だよ。

全てを破壊しながら突き進むバッファローは催眠術も破壊しながら突き進むからね。

根本的にバッファローを操るのは無理だと考えていい。


「じゃあ、どうやって凶器に仕立てあげるんですか?」


バッファローを操ることはできない。

ならば、発想を逆転させるんだよ、助手君。


「それは人類史上最大の殺人事件の話ですか? それとも逆転裁判の話ですか?」


もちろん前者だよ。

いいかい、催眠術はバッファローには通用しない。

だが、人間には催眠術は有効だ。それなら――。


「ま、まさか」


そうだ。



全てを破壊しながら突き進むバッファローは、当然ながら目の前に現れた哀れな被害者をも、破壊しながら突き進むことだろうね。


「完璧な計画じゃないですか」


そうやって犯人は次々と自分にとって邪魔な者を消していったんだ。

だが、働きアリの法則というものがある。

働きアリの中から一定の怠け者が出るように――邪魔者を消していった世界には、次々と新たな邪魔者が現れる。


「消しても消してもキリがないですね。それは人類史上最大の殺人事件の話ですか、それとも……」


もちろん前者だ。

デスノートでもドラえもん(どくさいスイッチ)でもないよ。


そして、犯人の誤算は――バッファローを自分の道具にできると思いあがったことさ。


「あぁ、そうか。全てを破壊しながら突き進むバッファローは、自分を利用して殺人を遂行しようとする小賢しい思惑も破壊しながら突き進むんですね。だから、メルトダウンを迎えたバッファローはこの惑星ごと爆発して『次』へ向かうんだ」


正解だよ、助手くん。

これは人類史上最大の殺人事件の話ではなく。

この惑星の、幼年期の終わりの話だったんだね。



<3分間が経過しました>



バッファローA「なんか、あの探偵の推理の通りに外宇宙まで突き進むのもむかつくな。よし、推理を破壊するために突き進むのやめるわ」


バッファローB「はぁ?ならお前のその逆張り精神を破壊してやるし」


バッファローC「やめなさいよ、私たちは群れなのよ。そのワガママな精神を破壊するわ」


バッファローD「同調圧力はんたーい!破壊する!」


バッファローE「破壊するのを破壊する!」


バッファローF「破壊するのを破壊するのを破壊する!」





バッファローαにしてΩ「ハカイ……ハカイ……」



<46億年が経過しました>



「いやぁ、意外と滅びなかったですね」


してみるものだね、長生き。



<了>

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人生最後の謎解きにバッファローを添えて~他になかったんですか、添えるの?~ 秋野てくと @Arcright101

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