私は敗北を知らない

卯野ましろ

私は敗北を知らない

 私には三分以内にやらなければならないことがあった。

 まず、なぜ三分なのか説明しよう。

 空腹の私はカップラーメンを食べることにした。一番好きなカレー味。カップの中にお湯を入れて蓋をした瞬間、三分という時間が与えられた私。私はカップラーメンに待たされるのではなく、カップラーメンに三分の間を与えられたのだ。


「……よし!」


 座っていた私は立ち上がり、テーブルの上にある未完成のカップラーメンに背を向けた。

 私はカップラーメンが完成するまでの三分間(ものによっては四分間や五分間となるだろう)を、ただの待ち時間にしたくない私。この与えられた三分間を有効活用したいのだ。そんな私の考えについて、


「たったの三分で何ができる?」

「三分しかないなら、待っているだけの方が利口じゃない?」


 などと思う人間もいるだろう。それでも私は変わらない。

 たったの三分?

 三分しかない?

 三分は大事な時間。

 与えられた時間は三分もある。

 三分間を侮ってはならない。

 トイレタイム、ストレッチ、家事、メッセージなどスマホのチェック、水分補給などなど……。

 三分間でやれることは、たくさんある。

 特に何もしない、のんびりする時間……そんな時間も確かに必要だ。しかし、そういうことは三分だと厳しいのではなかろうか。休むことは大事だ。だからこそ休む時間は三分では足りない。私は、もっと休みたい。

 そんな私はカップラーメンによって与えられた時間を、家事に使うことにした。その結果、


「あ、過ぎたか」


 私は三分よりも長い時間、カップラーメンに蓋をしていた。しかし私は……。


「……いただきます!」


 むしろ、それで良かった。カップラーメンの量が増え、たくさん食べられるからだ。空きっ腹の私にとって、ありがたいことではないか。


「あー……おいしい……」


 私には無駄もなければ後悔もない。それに、三分以内にやらなければ私は死ぬというわけでもない。つまり私は敗北を知らない人間ということだ。

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