専任仙人の少女とバッファローの群れ

健野屋文乃(たけのやふみの)

全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ

少女には三分以内にやらなければならないことがあった。


なぜなら彼女は、専任の仙人だからだ!

この世界には、専任の仙人がたった千人しかいないので、やることがたくさんあるのだ。


遙彼方に、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが見えた。

鋼鉄の装甲で覆われたバッファローは、現代文明が持つあらゆる兵器を跳ねのけた。


専任の仙人の少女の飛翔時間は、たったの三分。

その間に勝負を決めなくてはならない。


このまま地上に立ち尽くしていては、専任の仙人と言えども危険だ。


バッファローの顔が見える距離に迫った時、少女は飛翔した。

直ぐ足元にバッファローの息吹を感じる高さだ。

すぐ足元では、何者も蹴散らすバッファローが、疾走していた。


少女は最大戦速で飛翔した。

「もつかな?」

バッファローの群れがどれだけの規模なのかも予想は着かない。

もしかすると力尽きて、バッファローの群れに蹴散らされてしまうかも知れない。


飛翔して一分が経過した。

まだ群れの最後尾は見えない。

「やばいな」

最後尾などないのかも知れないと、思ってしまう程のバッファローの群れだ。


飛翔して二分が経過し、最後尾が見えた。

「助かったかも知れない」


最後尾のバッファローが、少女を見上げたが、構わず群れと伴に走り続ける事を選んだらしい。


ギリギリのところで、瓦礫と化した廃墟の街に舞い降りることが出来た。

少女は、誰もいなくなった街で調査を始めた。


街の外れにあった牧草地で、バッファーローの群れが、穏やかに草を食べていた。

危険はない様だ。


『何があった?』


少女は、バッファロー語で話しかけた。

バッファロー語にバッファロー達は驚いたようだったが、より賢そうなバッファローが少女に近づいて来た。


『わたしたちは止めたんだよ、でもね狂気に走った奴を止める事なんて出来やしなかった。そう言うものだろ?狂気ってのは?』


『狂気って、そう言うものだね』

少女は、そう言うと地面に座り込んだ。



おしまい




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専任仙人の少女とバッファローの群れ 健野屋文乃(たけのやふみの) @ituki-siso

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