「KAC20241」悪質転売ヤーは辞めます。

シーラ

悪質転売ヤー辞めます。



目当ての商品をゲットするには、三分以内にやらなければならないことがあった。それは、オナラを出して少しでも体を身軽にし、前に並ぶ奴等を悶絶させる事。

敵達を差し置いて、店内を駆け抜けて商品を買い占める。それが僕の目的だ。


だが、出ない。何の為の自由自在にオナラを出す能力だ!

僕が今窮地に立たされている理由。それは、この吹き曝しの寒さが原因だ。兎に角お腹が痛い!あと2分!


限定2本のバナナウォッチをゲットしたいから、デパートの開店12時間前から並んでいる。それでも前から6番目。しかし、幸運にも先頭に向かって風が吹いている。今出せば全員が倒れるだろう。だが出ない!

時間が迫ると、更に焦って出ない。頑張れ自分!あっ、店員さん達が出てきてしまった!キリンが大きなくす玉を持ち、カピバラが紐を引いた。


『あけましておめでとう御座います!では………オープンします!』


パァン!と勢い良くくす玉から紙吹雪が飛び出てきて。その衝撃に制御し切れずオナラが大音量で尻から飛び出した。その瞬間、風は後方に流れた。


『くっさーーーーーーい!!!!!』


後方に並んでいたバッファローの群れが飛び上がり、臭いから逃げようと店内に突入した。僕は勿論、前に並んでいた動物達も潰された。全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れ。もう、誰にも止められない。


バッファローが去った後には、見るも無惨な商品が散らばるだけだった。


「そちらのスカンクのお客様。大丈夫ですか?大変な目に遭いましたね。生理現象なので、弁償しようとか思われないで下さい。また買いにいらして下さいませ。」


自分のせいでこうなったのに、優しく声をかけて手を差し伸べてウマの店長。僕は彼の優しさに、つい泣いてしまった。


「これからは、真面目に並びます。」

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「KAC20241」悪質転売ヤーは辞めます。 シーラ @theira

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