ポッキーの日
さい
ポッキーの日
「ポッキーゲームだけがポッキーを祝う日の遊びではないと思うのよ」
「なるほど、プリッツの立場はと」
そうじゃねぇと、彼女は私の頭をかすめるように叩いた。
ふわりと香るのはたぶん、推しVtuberのコラボ香水。残る香りが思った以上に甘い柑橘系。
「だいたいアレ今日以外やらないじゃん。ポッキー食べるだけで、別に特別でもないのに」
それをダシにやれるから特別なんじゃないの、バレンタインと同じく。
私は彼女の視線の先をチラ見した。女子に囲まれて男子同士でポッキーゲームしてる当人は、小学生のノリではしゃいでいる。
彼女は恨めしそうな顔だ。そうだよね、あの騒ぎを持ち込んだ女子は、あわよくば自分も巻き込まれるのを期待してる。そして彼女はここで見てるだけ。
「そしたらさー、こっちもやる?」
一瞬間があって、彼女は私に向いた。彼女が握る箱から一本いただいてそのまま口にくわえる。軸を彼女に向かって振ると、彼女は「私が持ち手側かよ」と顔をしかめた。
「逆でもいいよ」
一口分折って彼女に差し出す。彼女は不満そうな顔でがぶりと食いつくと、そのままもりもり一人で食べた。わかってたけど。
君だけが私と間接キスで私の勝ち、なんてね。
ポッキーの日 さい @saimoon
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