待ち合わせまでの3分間

蔵樹紗和

第1話

 僕には三分以内にやらなければならないことがあった。それは、友達との待ち合わせ場所に辿り着くことである。


今日は映画を見に行く約束をしているのだ。友達が特に楽しみにしていた映画なので、ここで遅れてしまったら友達に合わせる顔はなくなるだろう。


それだけは避けなければと、現在、僕は待ち合わせ場所の最寄駅から猛ダッシュをしている。


本当なら走っても五分かかるはずの場所に三分で着こうというのだから、相当大変なことである。いや、ほとんど無理な話である。


僕の気分的には「走れメロス」のクライマックスシーンで街へ向かうメロスのようだ。


なぜこうなってしまったのか。責任はもちろん僕にある。


朝起きて、朝ご飯を食べ、着替えをして……と、ここまでは良かった。いつも通りの朝だ。


問題はその後の行動である。


出かける支度を終えた僕は、出発時間まで1時間ほどあったので、少し暇つぶしをしようと考え、ゲーム機を取り出した。


当初の計画では、五十分だけやって終わりにし、そのまま出発するはずだった。


しかし、ついつい楽しくなってしまった僕は、出発時間をかなり過ぎるまでゲームを続けていたのだ。


もともと余裕を持たせた計画だったため、なんとか間に合いそうだったのだが、なんとここで電車が事故により遅れているという災難が。


やっと駅に着いたときにはあと三分しか無い状態だったため、物凄い勢いで走っているのである。


そうこうしているうちに、残り時間は一分を切る。


まだ僕は半分の距離しか走れていない。ペースとしては三分の二の距離を走っていなくてはならないのに。


友達をがっかりさせないために、信号をギリギリで通り過ぎ、スーパーの人だかりを超え、死に物狂いで走る。


そうして僕は、やっとの思いで辿り着いた。


結果は……間に合わなかった。友達がいるはずの場所には、すでに別の人物が立っていた。


友達は僕をおいて映画を見に行ってしまったようだ。


僕は、過去の自分を恨んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

待ち合わせまでの3分間 蔵樹紗和 @kuraki_sawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ