【KAC20241】ホットミルク。

雪の香り。

第1話 大好きだよ。

僕には三分以内にやらなければならないことがあった。

それは、ホットミルクを2人分作ること。


いつもならミルクパンで牛乳をあたためるのだけれど、それじゃ彼女が起きてくるまでに間に合わない。


ああ、どうして僕は寝坊してしまったんだ。

2月の下旬、この間はあたたか過ぎて季節を勘違いしたのか庭に一輪百合が咲いていたくらいなのに、今日はとても寒い。


ニュースで見たけど最低気温は5度らしい。

こんな日こそ、彼女に最高に美味しくてあたたかいホットミルクを提供したかったのに。


僕はあきらめて牛乳を注いだマグカップを電子レンジに入れる。

くそっ、電子レンジで作ったホットミルクなんて……。


寝坊した自分自身を脳内で罵りつつ、はちみつを用意する。

電子レンジからあたため終了の音がする。


マグカップを取り出し、中にはちみつを垂らしてスプーンでよく混ぜる。

彼女の指定席にランチョンマットを広げ、その上に今できたばかりのホットミルク入りマグカップを置く。


いつもより味が落ちるだろうお詫びに小皿にクッキーを二枚添えた。

そこまでしたところで、彼女が「おはよう~」と眠気の残る少しふらふらした足取りでリビングに現れた。


僕が「おはよう」と返すと微笑んでくれて、テーブルの上のホットミルクを目にすると目をキラキラさせる。


いそいそと座り、萌え袖になってる両手でマグカップを包むようにすると「あたたかい」と今度はふふふっと笑って「ありがとう。今日は寒いから余計にあたたかく感じる」とお礼を言ってくれた。


こういうとき、僕は心底思う。


「やっぱり、僕は君のことが大好きだな」


無意識のうちに口に出してしまった。

少し恥ずかしいなと目線を彼女から逸らす。


彼女は「知ってる。私もあなたのこと大好きよ」と、見なくても笑っているとわかる声で告げてくれた。


彼女が言っていた通り、今日は寒い。

でも、心はホットミルクよりあたたかだ。


君の身体は僕があたためているけれど、僕の心は君があたためてくれている。

それってすごく幸せな関係だ。

そうは思わないかい?


なんて、さすがに照れくさくて口には出せないけど。

今日も僕らは風邪知らずってね!




おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

【KAC20241】ホットミルク。 雪の香り。 @yukinokaori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ