第2話 友達

マコ「ふんふんふーんふふふふーん」


マコが鼻歌交じりに帰り支度をしている。


シオリ「何か良いことあったの?」

マコ「そんなの決まってるじゃん!」

コウタ「何だ?」

ケンジ「マコ!俺は分かるぞ!」


ケンジ「今日二人も友達出来たもんな!」

マコ「そうそう!大正解!」


木乃香「何何?誰の話?」

コウタ「ここまで言って本人がわからないのかー」

シオリ「木乃香さん、知永くん、二人と友達になれて嬉しいのよ」


木乃香「本当!?私も凄く嬉しいよ!」

マコ「今日は最高の日だよー!」

ケンジ「知永はどうなんだよー」


ケンジが知永くんの肩を叩く。

知永くんはきょとんとした顔で言った。


知永「ごめん、友達って何?」

ケンジ「え」


場が凍った。みんな驚いていた。

しかし前のように無視にはならない。

みんな知永くんと仲良くしたいから。


ケンジ「友達は友達だって!仲良くなったらみんな友達なんだよ!」

知永「仲良くって具体的にどこからが仲が良いことになるの?」

マコ「話して笑顔になれたらとか?」

知永「じゃあ先生も近所のおばさんもみんな友達?」

ケンジ、マコ「う...ぐぐ...」


ケンジ「コウタ!助けてくれ!」


コウタ「うーん、しょうもない話で一緒に笑えたらじゃないかな」

知永「しょうもない話って例えば?」

コウタ「意味のない話とかかな」

知永「意味のない話って何?」

コウタ「う...ごめんシオリにバトンタッチで」


マコ「逃げたねー」

ケンジ「でも結構良かったぞ」


シオリ「友達の定義って難しいわよね、木乃香さんに聞いたら良いんじゃないかしら」

ケンジ「あ、逃げた」

マコ「すぐ逃げたね」

コウタ「一番ずるいぞ」


木乃香「しょうがないわね!私が教えてあげましょう!」


マコ「このちゃんって急に口調変わるよね」

ケンジ「何かノリノリだしな」

コウタ「実際調べてるのにね」

シオリ「これが正解かも分からないわよ」


散々な言われようね。まだこれ二回目なのに。


木乃香「本当の友達とかの定義って哲学みたいで難しくて、人それぞれだから正解なんてないと思うと楽かもね」


知永「でも今は僕の中で友達の基準とかないよ」


木乃香「そうね、だからこのことを踏まえて話していきましょう」


マコ「辞書は?」


木乃香「辞書には『互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだり喋ったりする親しい人。』とあるわね。

私たちには『一緒に遊んだり喋ったりする親しい人』のところが当てはまるんじゃないかしら。」


知永「それだけだと良く分からないよ」


木乃香「詳しく考えていきましょう。一つ目、損得勘定抜きで付き合えるか」


知永「損得勘定って何?」


木乃香「自分が損をするか得をするかで動くことよ」


ケンジ「損得で友達といようかとか考えたことなかったな」


木乃香「二つ目、お互いに本音で話せるか」


マコ「これ結構大事かも。本音で話せてなかったら本当に友達?って思っちゃう。」


木乃香「三つ目、さっきコウタくんが言ってたけどしょうもない話で笑い合えるか」


知永「さっきも聞いたけど、しょうもない話って何?」


木乃香「話す必要性のない話というと難しいけれど、例えば目の前のおじさんのカツラがずれているとか、本当にどうでもいい話よ」


コウタ「俺はやっぱこれが大事かな」


木乃香「四つ目、お互いリスペクトし合えるか」


シオリ「根底にこれが無いと悲しくなるわね」


木乃香「最後、一緒にいたいと思えるか」


知永「それはずっと...?」


木乃香「今この瞬間でもいいわ。とにかく今一緒にいて楽、まだ話していたい、一緒に遊びに行きたい、そんなこと思ったら友達じゃないかしら。」


知永「なるほど...」


木乃香「今五つ定義になりそうなものを上げたけれども、これにとらわれる必要は無いわ。友達と思ったら友達。いちいち定義を考えて友達になろうって思って友達作った人なんていないと思うわよ。」


知永「絶対?」


木乃香「多分ね」


この話をしたのに知永くんは純粋な目で聞いてきた。


知永「じゃあ友達を作るメリットって何?」


ケンジ「知永またメリット聞いてるぞ」

コウタ「友達を作るのにメリット考えないだろ」

マコ「友達は一緒にいて楽しいから!これ以外あるー!?」

シオリ「どうなの?木乃香さん」


木乃香「メリットは...」


私はしばらく考えた。

同時に当然のようにメリットを聞く知永くんに、シャンプーでも紹介しようかとも思った。

流石に可哀想だから普通に教えることにした。


木乃香「まず、楽しいことや時間は共有出来るわ」


知永「共有して何がいいの?」


木乃香「楽しいことがあったら誰かに話したくなったことはない?」


知永「ある」


木乃香「友達がいたら探さずとも楽しいことを話せるし楽しい時間を一緒に過ごすことが出来るわ」


コウタ「意識したことなかったけど最高の時間だよな」


木乃香「次に、困ったときに助け合え、辛いときは寄り添い合えるわ」


シオリ「どちらも友達がいて良かった、助かったって思えるのよね」


木乃香「最後に、一人では出来ないことも友達と一緒だと出来るようになるし、自分が想像出来なかったことも知れるのよ」


ケンジ「友達と一緒にいるときは色んなことが出来るしその時間も楽しいから最高なんだよな!」

マコ「私が知らなかったことを友達に教えてもらうと一気に世界が広がって嬉しーの!」


知永「一気に友達が欲しくなったよ」


目を輝かせながら知永くんはそう言った。


マコ「あ!知永くん気づいてないなー!」

コウタ「あ、本当だ」


知永「何?」


ケンジ「俺たちはもうとっくに友達なんだよ!」

シオリ「そうよ。みんなそう思ってる。」


ケンジたちは満面の笑顔で知永くんに話しかけていた。

だというのに知永くんは何て言ったら分からないみたいな顔で見ていた。


木乃香「知永くんにとって私たちは友達に入らないの?」


知永「いや友達だよ!」


木乃香「じゃあ友達でいいじゃない」


顔を真っ赤にして知永くんは笑っていた。


ケンジ「知永、顔真っ赤!!」

マコ「ほんとだー!」


こうやってみんなでワイワイ出来るこの時間は幸せな時間だなと私は思った。


木乃香「知永くん、メリット好き?」

知永「は?」

木乃香「え」


コウタ「鈴木さん何言ってんの?」

シオリ「教えすぎて疲れたんじゃない?」

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知りたがりの知永くん。 芯鯖 @shinsaba

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