第20話

 あれから数年後。

 私たちは教会にいましたわ。


「新郎、アルミ・ルール・フォレスト」


「はい」


 私の隣にいるのは、純白のタキシードに身を包んだアルミ様。

 数年前までは私よりも少し身長が低かったのですけれど、今では私よりも頭1つ分も大きく成長しましたわ。

 体付きもがっしりして、昔は小型犬という印象だったのですが、いまでは大型犬という印象が強いですわ。


「新婦、リアラ・ルリスト」


「はい」


 そんな私も、純白のドレスに身を包んでいますわ。

 幼い頃に夢見たこのドレスを纏えるなんて、アノス様に婚約破棄されたときは諦めましたのに。


「綺麗だぞ! リアラ!!」


「まぁ、お父様ったら」


 お父様にお母様、国王陛下に様々な親族の方々。

 みんなが教会に来てくれまして、私たちを祝福してくれますわ。

 

「ふふ」


「どうかしたのかい?」


「いえ……一度諦めましたのに、まさか掴めるなんてと思いましてね」


「?」


「婚約破棄された日に、私は結婚を諦めましたの」


「そうだったんだ……」


「ですけれど、こうしてまた結婚できるなんて……私は幸せですわね」


「これからもっと幸せにするよ」


「アルミ様……」


 地獄でアノス様とラリスタも、見守ってくれているでしょうか。

 私の幸せを奪い、死んだ愚かな2人。

 きっと今は地獄で苦しんでいると思いますけれど、それでも私の幸せを見せつけたいですわね。


「新郎新婦、こちらへ」


「はい」


「ええ」


 私たちは神父様に促されます。


「新郎アルミ、あなたはここにいる新婦リアラを病めるときも健やかなるときも、富めるときも貧しきときも妻として愛し、敬い慈しむことを誓いますか?」


「誓います」


「新婦リアラ、あなたはここにいる新郎アルミを病めるときも健やかなるときも、富めるときも貧しきときも妻として愛し、敬い慈しむことを誓いますか?」


「誓います」


 愛の誓い、なんだかムズ痒いですけれど。

 それでも、結ばなければなりませんわ。

 ラリスタとアノス様が羨むような。

 幸せを築くために。


「それでは、誓いの口づけを」


 アルミ様が私の肩を掴んできましたわ。


「リアラ、幸せにするよ」


「ふふ。既に聞きましたわよ」


「え、あ、ああ。そ、それじゃあ────」


「────私も幸せにしてさしあげますわ」


 口づけ。

 

「あ、ああ。り、リアラ……強くなったね」


「婚約破棄されたんですもの。誰でも強くなりますわ」


 そう、私は強くなりましたわ。

 アノス様とラリスタのおかげ……とは認めたくないですけれど。


「ふふ、強い女は嫌いですか?」


「そ、そんなことはないけれど……でも、僕にも守られて欲しいな」


「ふふ、もちろん頼りにしていますわ」


 再度、口づけ。

 私たちは、幸せになってみせますわ。

 必ず、絶対に。

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妹の方がかわいいから私を捨てるんですか? ええ、喜んで! ぜひ婚約破棄しましょう! 志鷹 志紀 @ShitakaShiki

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