【猫の日記念】飼い主はヒキニート、代わりに我が輩が働いているニャ !

るしあん @猫部

この素晴らしい飼い主に幸せを !


 ── きれいで……頭が良くて、しっかり者で……やさしくって……大好きな葉子ちゃんは、──


「ニャン太のうそつき~~

 アイス買って来るって約束したのにぃ~~ !!」


「冷蔵庫に、まだあったニャ !?」


「ガリっガリっくんじゃダメなの~

 ハ◌ゲンダッツの乳脂肪分たっぷりのじゃないと癒されないのぉ~~ !! 」


 ── すっかり自堕落に成ってしまった…… ──


「自分で買いに行けばいいニャ !

 ヒマなんだから 」


「無理だよぉ~

 外は危険で、いっぱいなんだからぁ~

 …… 隣の間茶美 まちゃみおばさんが何て呼ばれているか、知っている ?」


「ニャ ?」


「『ゴシップ拡声器』……ずっとお家に居るのがバレたら町内中にバレちゃうよぉ~

 そうなったら、もう私、生きてけないも~ん !

 私の心は、まだ傷心なのよ~ 」


「いい子、いい子ニャ、葉子ちゃん。

 我が輩が、付いているニャ」


 慰めているウチに葉子ちゃんは眠ってしまった。


 ── 我が輩の名前は、ニャン太。

 飼い主の名前は、茂内葉子もてない ようこ


 葉子ちゃんが生まれた時に拾われた我が輩は一緒に育ち、飼い主と飼い猫と云うよりは家族のように成っていたのだが……

 婚約破棄になり、勤めていた会社も辞めてしまう。

 こっそり実家に戻った彼女はお家にこもり立派なヒキニートに成ってしまった …… ──


 我が輩、とっくの昔に虹の橋に向かう予定だったのに、葉子ちゃんを残して逝けなく成ってしまったニャ。

 葉子ちゃんの両親は他界していて、我が輩まで逝なくなると天涯孤独に成ってしまう。


 そう、悩んでいた時だったニャ。

 見知らぬ黒猫がやって来て、


「ヤッホー はじめまして、ニャン太。

 ボクは隣町の本屋の看板猫のサファイアだよ、よろしくね !」


 ボク ? ボクっ娘かな……


「隣町のサファイアが我が輩に何の用 ?」


 そう我が輩が切り出すと、


「 ねえキミ、ボクと契約して猫又ねこまたに成らないかい ?

 猫又に成ると凄く長生き出来るだけでなく、不思議な力も使えるように成るから、絶対にお得だよ ! 」


 その怪しい誘いに乗ってしまった我が輩は悪くない !

 両親の残した財産があるとは云え、長くは続かないだろう。

 我が輩が働いて葉子ちゃんの面倒を見なければ !

 しかし、猫又に成って日が浅いせいか、人間に化けると顔だけは猫のままだった。

 サファイアに事情を話したら、彼女は親切にも仕事を紹介してくれたのだ。


 そうして、我が輩は夜な夜な商店街の奥にあるカクテルバーにバーテンダーとして通っている。

 お客様は妖怪だから身バレしても安心だニャ。

 令和の妖怪たちも人間社会に溶け込んで、働かないてダメだなんて厳しい世の中に成ってしまったニャ ──


「ねえ、ニャン太……

 いつもみたいにいやしてよ !

 さみしいよぉ~、お願いニャン太 ! 」


 すっかり、飼い主と飼い猫の立場が逆転してしまったことに不安を覚えながら、葉子ちゃんにモフモフされている我が輩。


 彼氏が出来るまで一緒に居ようと思っていたけど……

 ダメかニャ……コレ。


 この素晴らしい飼い主葉子ちゃんに幸せを !


 サファイアに願い事をしたら、同情されてしまった。


「ニャン太、

 飼い主がボク達、猫は苦労するね 」


 サファイアの言葉に一緒にため息をしたのは内緒にして欲しいニャ !



◇◇◇

近況ノートに、ニャン太のイラストが貼ってあります。


https://kakuyomu.jp/users/SHIGEMI/news/16818093072801697597



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