第2話 詰んだわ、私


 気が付いた時、そこは、駅ビルではないとはっきりわかってしまう恵里花だった。

 恵里花がへたりこんでいる床は、大理石に似ている石造りの床だった。


 〔えっとぉ~…やっぱり駅ビルの床じゃない

 って、ことはぁ~…………〕


 慌てて恵里花が周りを見ると、そこには…………。

 エレベーターホールに居た美少女が、6人全員呆然とした顔で床にへたりこんでいる姿が見えた。


 恵里花達以外に、体育館なみに広い部屋に居たのは…………。


 まるで、中世の騎士のような姿をした集団と、ラノベに良く描かれているローブを着て杖を握っている魔道師?と、白い神父服もどきを着た神官かな?という男達の集団だった。

 いや、足元の魔法陣を見て異世界召還という言葉が浮かんだ恵里花の瞳に、その時映った者達の姿がそれらだっただけで、詳細をみれば少しづつ違っていたが………。


 その中の一人が、恵里花を含む少女達の前に一歩踏み出し…………。

 見た目が神官らしい男性が、にっこり笑ってのたまう。


 「ようこそ、聖女候補の姫君達

 ここは、ドラゴニア帝国の帝都

 ドラグニールにある


 ……愛と美と戦いと豊穣の女神…

 ル・イシューの神殿です…」


 神官の挨拶?に、恵里花達は無言で答える。


 「…………」


 恵里花は、最初の挨拶の中に含まれた重要なワードに、茫然自失となってしまう。


 〔えっ…ちょっと待って…聖女候補? って

 だぁぁぁぁ~……私以外、美少女じゃない……

 あぅぅぅ……これは…詰んだわ……〕


 《召還》された少女達の不信感いっぱいの視線を、あっさり無視して神官は説明を始める。


 「皆様を異世界より《召還》しましたのは

 この世界に瘴気が溢れ、災害や不作と凶作に


 魔物が、魔の森より人間の居住区に

 大量に進出するようになったからです」


 滔々とのべる神官らしい男性の言葉に、《召還》された少女達は無言のままだった。


 「…………」


 そんな中、恵里花は黙ったまま考える。


 〔えぇ~とぉ…やっぱり異世界召還のようね

 言葉はチートで理解出来るってことかしら?


 一応、あの神官姿の男の人の言葉は理解(わか)るし

 こっちからの言葉も、通じるのかしら?〕


 困惑を隠し、他の少女達と同じように、恵里花はその言葉を黙って聞く。

 その視線の先では、恵里花達の様子を意に介することなく、続けていた。


 「その瘴気を浄化する能力が有るのは

 異世界から《召還》される聖女だけなのです


 しかし、瘴気を浄化するには

 神獣、聖獣、幻獣のいずれかと

 《感合》する必要があるのです


 聖女の《力》の全てを、瘴気の浄化に使う為の

 補助として…必ず…手にする必要があるのです


 それが出来て初めて、聖女認定されます………」


 「…………」


 「神獣、聖獣、幻獣を手に入れるには…………」


 説明の途中で恵里花は、ドサッという人が倒れるような音を聞いて、その方向に視線を向けた。

 そこには、真っ青な顔色の神官と、それを介抱しようとする神官の姿が…………。


 同時に、石造りの神殿のようなソコの大きく開かれている窓の向こうには、見たことも無いようなモノが蠢いていた。








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