第2話

 夜の世界は、一変も二変も変わり出す。例を挙げるなら、それこそ私のような魔法使いや魔法、幽霊やら妖怪、怪奇現象等まで。それらあらゆる、人の頭を持ってしても説明し難いものが、夜を徘徊しだす。 

 一括りに『夜の狂気』と呼ばれているが。私個人では、それは狂気なんかじゃなく、夜の魅力だと思う。

 夜は誰にだって等しく訪れるべきだ。


 あの少女にだって、同じことが言える。少女にも夜を等しく。間違っても、あんなに残酷で寂しいよるを与えるべきではない。


 私は、夜空に手を重ねる。触れる。少しばかり、集中する為に目を閉じた。

 イメージは、無限に溢れる数字のなみ。その流れる方向を──溢れる数字がしていく流れを知覚する。


 収束──それは数学的にいえば、ある値に限りなく近づくこと。或いは物理的にみれば、光の束が一点に向かって集中すること。

 私たち魔法使いは、その二つの観点から収束を捉え、に干渉してきた。魔法使いにとっては初歩中の初歩、始まりの魔法に当たる。

 最も、『ゼロの概念』がインドで発見されていなければ、魔法という神秘領域など確立していなかったことだろう。


 それほど、ゼロと収束という概念は、魔法にとっては大事な決まり事だ。


 今の私の場合、何も構築やら生成やらの高度魔法を使う必要はない。

 ただ空に近付ければいい。空まで飛ぶより、こちらまで方が楽でもある。


「よし。捉えた」


 確かに、この手の先にある、不確かな透明な“点”がある。後は、この“点”に干渉するだけ。


「ふぅ~。無いとは思うけど、失敗っていうこともあるにはあるし....万が一の対策に、自己暗示でもかけとこうか」


 私の師匠も言っていたっけ。確率は、万全に万全を重ねて、初めて成功率へと昇華すると。

 自己暗示そのものは、詠唱とさして変わらない。効果は、精神強化といったところ。

 どうせなら、本来の詠唱(唱えるつもりはなかったが)と交ぜて使うことにしよう。柄にもないが、折角だし格好つけさせて貰おう。

 

「....拙い夢物語の一ひと場面。

 が廻り続ける星と夜の一頁。

 詩的ぶっても何も変わらない。

 見慣れた夜空に伸ばしてなぞる。

 星と星がおちる星星すいせい


 迎えに来て欲しかったんだと思う。

 だからこうやっていつまでも待っている。

 ほうきと彗がぶつかる時また星と星が繰る

 

 交じり離すな収束へ」


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