第12話 異世界で、おでん作って、子供を産んで、結婚した

俺は急遽離宮の中の客室に運ばれて、医者を呼んでもらい、出産することになった。


普通は痛いのが治って、また痛くなってを繰り返すそうなんだが、俺は痛い大→中→大みたいに切れ間がなくてずっと痛いので、これ本当に死ぬかもと覚悟した。

母さん、ありがとう、こんな思いしてまで産んでくれたんだ。

俺は泣きながら遠い世界の母に感謝した。


しかも途中から痛さ倍増の最中、下半身丸出しで四つん這いを強いられ、医者にお尻を丸出しだ。

でも、恥ずかしいけど言ってられない。とにかく痛すぎるし、中から下へ向かってぐいぐい押してくる奴がいる。

これ絶対裂けるって!そら切るわ!


「シィズゥル!頑張れ!」

俺は幻聴を聞いた。

「俺が付いてる!もう少しだから頑張れ!」

シェーディ?思わず前に伸ばされた手を掴んだ。

見上げるとシェーディだった。

「シェーディ!めちゃくちゃ痛いよ、死んじゃう」

俺は思い切り弱音を吐いた。

「馬鹿、俺がいるのにぜったい死なせない!」


なぜがシェーディが傍にいても全く不思議に思わなかった。

「無理だよー、出てこないよー」

「今いきんで下さい!」

「ほら、お腹に力入れるんだ!」

2人から言われて、必死に力を入れる。

「もう、頭が出ている、頑張れ!いきめ!」

俺は最後とばかりいきんだ。


つるん、と子供が出ていった。あれほどあった痛みが一気に無くなった。

「はれ?」


「生まれたよ、生まれたよシィズゥル!!よく頑張った!」

這いつくばっていた俺はやっと顔を上げた。医者が手をお尻の穴に当てている。治癒魔法だ。あ、いつの間にか切ってたな!本当に気付かなかった!!


赤ちゃんは傍にいた看護師に軽く洗われてタオルで拭かれ、違うタオルでくるくるっと巻かれた。

シェーディは受け取ると俺の前に持って来てくれた。

「ほら、シィズゥルの子だよ、黒髪でシィズゥルそっくり」


俺はよれよれで倒れ込み、押し付けられた赤ちゃんを見た。

すると、赤ちゃんは目を開けた。

「目も黒い。顔、本当に俺そっくりだ」作りも日本人だ。

ミンティア遺伝子どこ行った。


「小さいなあ。こんなに小さいのに俺の中蹴りまくりやがって!」

出て来たらフニフニ言うだけで大人しい。

「泣いてた?赤ちゃん」

「泣いてたよ、直ぐ泣き止んだけど」

う、全然気付かなかった。多分意識半分飛んでた。


俺は身体を起こすと赤ちゃんを支えて乳首を含ませてみた。

「す、吸ってる、やっぱり痛い」シェーディは覗き込んで感心していた。

「さすがシィズゥルの子だな、食いしん坊だ」

俺は笑ったがお腹が途端に痛くなって息を呑んだ。

「う、シェーディ笑わさないで、笑うとお腹痛い」


俺達は見合って微笑んだ。久しぶりに見たシェーディの笑顔に胸が苦しくなった。

「ねえ、シェーディ」俺は思い切って言った。

「何だい?」

「この子の名前付けて」

「え!」流石にシェーディは驚いた。

「この子、ミンティア様との子だろう?俺関係ないよ?」

「関係ないけど、付けて欲しいんだ。ミンティア様には俺が付けたって言うよ」


しばらくシェーディは迷っていたけど、決めたようだ。


「ミシェル」


「ミシェル…うん、いい名前だ。ありがとう、シェーディ。ミシェル、君の名はミシェルだ、よろしくね。俺がお母さんだよ、こっちはシェーディ」

ミシェルは手を伸ばしたのでシェーディはそっと掴んだ。

「よろしく、ミシェル」

ミシェルはにっこり微笑んだ。

「良いのかな?勝手に付けちゃって」

「いいの!俺が決めたんだから」


「あの」

恐る恐る医者が声を掛けた。

「外で皆様騒いでおられますけど」


「え?扉は?」

「僕が閉め出した」

「えー⁈」イテテ腹に力入れたらダメだった。

「シィズゥルの出産に立ち会いたくなった。あんなに苦しんでたし」

「ありがとう、心強かったよ」

「死ぬーとか言ってたけど」

「だって、痛すぎて」

「五時間なら普通ですよ」医者が突っ込んだ。


「五時間⁈」俺はシェーディに寝てしまった赤ちゃん、ミシェルを預けると倒れた。

「やれやれ」

シェーディは看護師にミシェルを預けたので、「行かないで」と言った。


「僕はまだ、シィズゥルを許した訳じゃない」


シィズゥルは少し大きな声で言った。

俺は「そうだよな、当然だ」とシュンとした。


「外でクロルが、俺が刺客を入れて、殺そうとした実行犯だと騒いでる。もう、付き合いきれないよ。ロドウェルとミンティアも居る。二人には会いたくないし。僕はこの国を出るよ。元気でね、シィズゥル!」


シェーディは窓を枠ごと吹き飛ばすとそこから外へ躍り出た。

「シェーディ!」起きようとしたら腹筋が死にかけだった。

「ここ3階!」看護師が叫んだ。

「えー!!」

まあ、魔法使うから大丈夫か。俺は今度こそ気を失った。



俺の目が覚めた時、ミンティア様がミシェルを抱いてベッドの横に置かれた椅子に座っていた。

「ミンティア様」

「シズル!大丈夫⁈」

「はい。シェーディがずっと付いててくれましたから」

「…そう」

「子供の名前、決めちゃったけど、良いですか?」

「まあ!ええ、いいですよ。なんて言う名前にしたの?」

ミンティア様はあっさり言った。


「ミシェル、です」

「ミシェル…ミンティアとシェルディエルから?」

「そうかもしれません」

俺はため息をついた。

「俺をまだ許せないって」

ミンティア様は汗ばんでいる俺の額を軽く押さえた。浄化魔法だ。

「まだ、なら、いつかは許してくれるでしょう。私達のした事」

「そうだと良いんですが」冷んやりとした手は心地良く、俺は再び目を閉じた。



俺は次の日サッシェント邸に帰って来た。

ロドウェル様とミンティア様は、俺が産気付いて産むまでの間に離宮に到着していたのだが、シェーディが誰も入れなかったので、仕方なく隣の部屋で待機していたらしい。その間に話し合い、お互い謝罪する事で和解したそうだ。


てか、ミンティア様に全く似なかった、ほぼ日本人ミシェルを二人が奪い合うようにして抱っこして可愛がっている。

俺がミシェルを抱っこできるの、おっぱいをあげる時だけだ。ちょっとー!



あの後の顛末を聞いた。俺が運ばれていった後、クロル王子とハーヴァは目覚めた。クロル王子は、刺客から自分を積極的に守らなかったと2人を糾弾し、捕縛させようとしたらしい。

その時、ハーヴァはクロル王子に剣を突きつけた。

「私達が刺客だったら、もうとっくに、あんたみたいな馬鹿殺してる。刺客を寄越したのが誰か、本当にわからないのか?」

クロル王子はブルブル震えて答えられなかった。


「ミランベル第一王子と宰相に決まってるだろ!証拠はもう無いがな!」

ハーヴァは剣をしまうと出て行き、その行き先は誰も知らないそうだ。

シェーディは俺が気になって部屋に入って扉を閉ざした。

そして、俺に付いててくれて、出産後に姿を消した。



クロル王子は前から強引に迫っていた宰相の息子、つまりグラハムとの結婚話を取りやめ、王とミランベル王子に王位継承権の放棄を申し出た。

そして、地方の離宮に完全に引き篭もった。何年か後にその土地の貴族と結婚したらしい。




猿みたいだったミシェルが、色白の黒い目ぱっちりの愛想良しになってくると、ひっきりなしに三人がやって来る。


グラハムは相変わらず来るたびに僕とミシェルに詩を捧げてくれる。

でも、最近父宰相の仕事にも興味を持ち始めて勉強を始めた。宰相は喜んで、最近第一王子とグラハムを結婚させようとしているとか。


ヒュールイスは結婚して、只今妊娠中だ。でも、まだ官僚として仕事している。最初は子供は直ぐ乳母に預けて働くって言ってたけど、ミシェルを見て、考えを改めたようだ。

「人の子でも、こんなに可愛いのに、自分とサイモンの子なんて、これの比じゃないよね⁈」

旦那様と上手くいってるようで密かに安心した。


ジョゼフはあの騒動の時本当に怖かったようで、一時王室との取引に自分が行くのを避けていたが、やはりジョゼフを指名する人が多かったので、また応対を始めた。護衛を新たに雇っていた。


ジョゼフに米料理のレシピを渡したら、本格的に米を輸入して売り出した。

俺の欲しかった日本の米の種類もあった。

やっと、やっと塩お握りを食べた時は、涙が止まらなくなって、じっくり米の粘りと甘さを噛み締めた。


もう、前の世界に帰る事は諦めていたが、吹っ切れて、心からこの世界を完全に受け入れられた気がした。

たかが、米だけど、おでんに次いで俺には重要な食べ物だった。


ジョゼフには、もちろん浮気は止めさせて、リカの良さを挙げて説教したら、リカ一筋に戻った。



俺は邸でようやく仕事に復帰したロドウェル様の秘書をやっている。非常に気まずかったんだけど、ミシェルが取り持ってくれた。


俺のおっぱいは早々に出なくなったので乳母に預けている。良かったような寂しいような。

しょっ中サボってミシェルを抱っこしに行く。

本当うちの子可愛い。


お腹を痛めて産んだからか、ミシェルが本当に愛しい。母の気持ちを存分に堪能していると思う。

ミシェルの性格はミンティア様に似て活発で怖いもの知らずだ。誰にでも愛想が良いので、俺そっくりなのにみんなミシェルの虜になる。

シェーディに会って最初のほうに言われた通り、人種関係無く、産んで良かった。

ミシェルがシェーディの子ならな、とは考える。



シェーディが去って3年が経った。

俺はミンティア様と、これ以上子供を作りたく無いと言ったら了解してくれた。

避妊する方法はあったので、それを用いて偶にミンティア様からの要求に応じて身体を繋げている。やっぱり、ミンティア様を完全に切る事はできていない。お互いに足りないものを補っているような関係だ。



シェーディの事はミシェルには言ってない。名前は俺が付けたことになっている。シェーディとミンティア様に約束しているからな。

ミンティア様や乳母に任せておけば貴族の子としてきちんと育ててくれている。俺は悪戯が酷い時は叱るが、基本甘やかすだけのダメ親だ。



シェーディの家には時々行って、中に風を通しに来ている。壊れそうなところは道具屋に頼んでちゃんと直してもらっている。

シェーディがいつ帰ってきてもいいように。

家は人が住まないと直ぐ駄目になると言うからな。



今日はミシェルも連れて来ているので、外でミシェルを追いかけ回してる方が多かった。

そろそろ迎えが来るし、帰ろうと思って、俺は窓を閉めるためにミシェルを連れて家へ向かった。


バタン!


「え?」

ドアが勝手に閉まった。

パタパタと今度は窓が閉まっていく。

「ええ?」


風が吹き抜けた。


「シィズゥル」

俺は後ろへ振り向いた。

森の方角から思った通りの人がやって来た。


「シェーディ!」

近付こうと、ミシェルを抱っこしたら、向こうの方から駆け足でやって来てミシェルごと抱きしめられた。


「こんな時間に森に居たら危ないんだろ?」

俺は泣きながら言った。

「そうだね、シィズゥルがここに居たから出てきたんだ」

「どうしてわかったの?」

「ネックレス、まだしててくれたんだ」

俺は思わず首に手をやった。

「これ、場所までわかるの?」

「ある程度近くならね」


「そんなの、聞いてないよ」

俺が泣いてると、ミシェルが

「お母様何故泣いてるの?この人だあれ?」と不思議そうに聞いてきた。

「う、嬉しくて泣いてるの。この人はシェーディ、お母様の、恋人だよ、ね?」

俺は不安になってシェーディに確認した。

「ああ、そうだ」シェーディは明るく頷きながら力強く言ってくれた。


「ふーん」ミシェルはわかってるのかよくわからない顔をしていた。

ようやく抱擁から離されて物足りなさを感じつつ聞いた。

「一緒にサッシェント邸に来る?」

「いや、止めとく。シィズゥルに会いに来たんだ。直ぐ出るよ」

「え、シェーディがここに帰って来ても大丈夫だよ?クロル王子は遠くへ行っちゃったし。どこに行くの?」

「僕の義父の父の国。二つ向こうにある。そこで薬屋やってるんだ」


「そんなとこまで行ってたんだ。俺のせいだよね、ごめんなさい」

「違うよ!何となくそこまで行ったって感じ。シィズゥルのせいだけじゃ無いよ」


間が空いた。

「ミシェル」俺はミシェルを下ろして重い口を開いた。前から決めていた。

「お母様はこの人に付いていく。迎えが来たらミシェルはお父様達のいるサッシェントに帰りなさい」

「シィズゥル⁈」

「え、どうして?お母様は?」

「お母様はシェーディが大好きだから、シェーディと一緒に行く。ミシェルはお父様達が大好きだろう?だから帰りなさい」

「嫌だ!お母様も一緒じゃなきゃ帰らない!お母様も大好き!」ミシェルは俺にしがみ付いた。


「シィズゥル、駄目だよ、ミシェルには母親が必要だ。それに叔父上も、ミンティア様も君を必要としている」

「俺はシェーディさえいればいい!ずっと待ってたんだ、シェーディに許して貰えるのを。今度こそ、ずっと一緒にいたいんだ」

俺は身を切られる思いで叫んだ。


「お母様、ミシェルを、置いてかないで、良い子になるから、お願い」

案の定ミシェルは泣き出してしまった。

「ミシェル…ごめん、ミシェルは良い子だよ」

俺はミシェルに申し訳なくてそう言うしかなかった。


「僕は余計なことをしてしまったね。ミシェルのお母様を連れていかないから、安心して。僕1人で行くから」

シェーディはミシェルの前で屈んで言った。


「駄目」ミシェルは泣きながら言った。

「シェーディも行っちゃダメ、お母様の大好きな人だもの」


「ミシェル、ありがとう」シェーディも泣き出した。


ミシェル…なんて優しい子なんだ!

俺は本当に駄目な母親だ。そう思いながらミシェルを抱きしめた。

「ミシェルも一緒に付いて来てくれる?お母様はシェーディもミシェルも大好き。シェーディとミシェルとお母様とで一緒に生きていきたい」

ミシェルは笑顔になった。

「それなら良いよ、お母様。シェーディとお母様とミシェルで行こうよ!」



シェーディには今晩はシェーディの家に居てもらい、俺とミシェルは迎えの馬車に乗ってサッシェント邸に帰った。

そのままミンティア様の部屋に行った。


当然反対されてミンティア様にも泣かれた。俺もミンティア様に身体の関係抜きでも情は感じているし、ミシェルの父親でもあるから、とても辛かった。

でも、シェーディへの想いの方が勝った。


ミシェルはミンティアに残って欲しいと何回もいわれたが、最初は泣いていたミシェルの方が思い切りが良かった。

「ミンティア父様にはロディ父様がいるでしょ?お母様は本当はシェーディがミシェルより好きなの。だから、そばにいてミシェルも絶対同じ位好きでいてもらうの」


この子本当に3歳⁈賢すぎるんだけど!

ミシェルの言葉でミンティア様は泣く泣く諦めて、シェーディの国まで送るための準備を直ぐ始めると言い出し、止めるのがまた大変だった。

もう貴族としては生きていかないので大袈裟な荷物は要らない。


サッシェントとの妾契約は終了してもらった。

でも、ミシェルがサッシェントに帰りたいと言えば、いつでも受け入れると2人は言ってくれた。

貯めておいた妾手当は返そうと思ったけど、ミシェルの為に貰っておくことにした。



次の日、見送りは邸の前までにしてもらい、馬車でシェーディの生家まで送ってもらった。

少し不安だった。本当にまだ居るのかな?


バタン、と勢いよくドアが開いてシェーディが出てきた。

「おはよう、ミシェル、シィズゥル!」

シェーディは待ってくれていた!

俺はシェーディに飛び付いた。


「どうやってシェーディの国に行くの?」ミシェルと俺の疑問にシェーディは笑った。

「こっち」

シェーディに導かれて着いたところは森の入り口手前、俺たちが会ったところだ。

草原の一角が刈られていて、覗くと丸い円の中に文字や線が色々書かれている。


「僕の研究してた転移陣だ。シィズゥルの国には行けないけど、僕の国なら直ぐ行ける」

シェーディは俺達と共にその円の中に立った。

俺はイマイチ不安だったのでミシェルを抱っこした。


「行くよ!」

シェーディが片手を上に上げてから下に振り下ろした。

円陣が文字や記号と共に光り出した。

「わあ、きれい」ミシェルははしゃいだ。


眩しくて二人とも目を閉じたら「着いたよ」と直ぐ言われた。

「「え?」」

俺とミシェルが目を開けてびっくり。知らない家の中だった。


「ようこそ!僕の新しい家へ!」

俺達は三人で抱き合った。



俺はシェーディと結婚して漸く初夜を迎えた。

初夜と言っても、それはシェーディだけなので、俺は申し訳無くて、緊張で身体が固まっていた。

ベッドの上で座り込んだままシェーディが来るのを待った。

「シィズゥル、どうしたの?」

ベッドルームへ来たシェーディは俺を見て可笑しそうに言った。

「緊張してる」

シェーディは俺の横に腰を下ろした。

「今更?」

「今更だからだよ、俺が今までどういう生活してきたか知ってるだろ?貴族の妾やってて、君の叔母の子供まで産んでさ。改めて、酷いな俺って」

シェーディは俺を押し倒して抱きついた。

「シェーディ」

「今更だよ、シィズゥル。全て承知してる。でも、もういいんだ。シィズゥルは僕を待っててくれた。僕はやっぱり君を忘れられなかった。僕は」

シェーディは俺の頬を包むと、そっと唇にキスした。

「僕はシィズゥルが好きだ。それが全てだよ」

「シェーディ、俺も好きだよ。こんな俺を許して」

「もう、言わなくていいよ」


シェーディと身体を重ねて、奥で出された時、やっと俺がシェーディと心も身体も一緒になれたんだと実感した。二人とも感無量でそのまま抱き合って泣いた。


あまりの気持ち良さと嬉しいのとで何回もねだり、シェーディも応えてくれて毎日のようにしてたら、すぐ子供ができてしまった。

え?薬無くても、こんな簡単にできるんだ。知らなかった…あっ!シェーディも確信犯だな!


またシェーディに励まされて、死ぬ思いで子供を産んだ。要領はわかっていたが、痛いものは痛い。今度はミシェルまで付いててくれた。子供の手前、弱音は吐かなかったぞ!


今度はシェーディに似てると良いな、と思ってたけど、また、黒髪黒目の俺そっくりな子だった。

な、何で⁈


シェーディとミシェルは大喜びしてたから、まあ、いいか。

名前はジュード。ミシェルが決めた。読んでた絵本の主人公の英雄の名前から付けてくれた。英雄…ミシェル、フラグを立てるのは止めてくれ。


しかし、諦めきれない俺は、ミシェルとシェーディに請われたのもあり、半分意地で、三人目に挑戦した。

シェーディに出産を代わって貰おうと、俺もシェーディに入れて出したが、交互にやったのに俺だけが妊娠してしまった。ショックだ。俺のじゃダメだったのかな?


生まれた時、ちょっとだけ髪も目も茶色だったので喜んだが、直ぐに真っ黒に変わったし、顔付きはやっぱり俺似。えーん。可愛いけど、どうしてだー。名前はニコル。シズルの子のニコル、でなんか良い感じと思った俺が付けたんだけどね。


子供達の顔は俺似なのに、魔力は全員父親に似ていて、しかもなかなか強力だ。喧嘩になると洒落にならない!

ミシェルは水、ジュードとニコルは風魔法を全力で使い出すので俺では到底抑えられられず、終いにシェーディに来てもらって納めている。


魔法を使える子供の通る道で、ある程度の怪我は仕方ないと考えてるシェーディだが、俺には色々な防御魔法を掛けた石のネックレス2本、ブレスレット4本、ピアス4つ、カチューシャ、アンクレット4本、と次々増えていく。邪魔なのでピアス以外は外してたりすると、すぐに見つかって、また全部付けさせられる。

だから、過保護なんだって!


荒ぶった子供達は、いつもシェーディに怒られて、揃って並ばされ、大泣きで俺に謝っている。


やっとミシェルが最近2人の挑発に乗らず、2人に水を風より早くぶっかけるようになった。その後風を起こされてもそれを利用し、水竜巻にして2人を巻き上げて水で叩き落とすのには驚いた。

どこで覚えた⁈

さすがミンティア様の子、容赦無い。躾が厳しい。


でも、対抗する為にジュードとニコルは身体強化魔法を覚えようとしている。ミシェルは既に取得しつつある。普段は仲良しなのに。


もう、俺の手には負えない。

三人揃って仙人とかに修行に出したい。

なんて子達を産み出してしまったのだ!



異世界おでんを仕込みながら、自在に魔法を使って遊ぶ子供達を眺める。


近頃は

『俺がこの世界に来たのは、シェーディと結婚して、おでんと日本人最強種を産み出す為では?』

と半分本気で思い始めている。




《終》


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異世界に来たらしいが、持ってたおでんはまだ暖かかったから、出会った人と食べたら結婚する事になった Koyura @koyura-mukana

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