第31話 村の襲撃が始まった
「パキラさん!」
「ああ、わかってる。ついに来たか」
パキラさんは慌てずに指示を出す。
「奴らが再びやってきた!戦える者は迎え打つ準備をしろ!それ以外の奴はここで待機!戦える者のうち何人かは残る者の警護だ!いいな!」
パキラさんの呼びかけに村の人たちは「はい!」とこたえる。
それを聞いたパキラさんはわたしの方をみた。
「いけるかい?」
「はい!」
すでに魔力は回復している。
わたしの返事にパキラさんは満足そうに頷く。
「よし!行ってくれ!準備出来た者はカルミアに続け!」
わたしは外に向かって走り出す。
『危機察知』の反応はどんどん近づいてきている。
あと数分もしたらこの村にやってくるだろう。でも。
いや、あれこれ考えている暇はない。
わたしはいつでも『先導者』を発動させられるようにしておく。
わたしが外に出て少ししたら村の人たちも次々と出てきた。
辺りは暗く、壊れた村を月明かりのみが明るく照らす。
風の音すらしないのが嵐の前の静かさのような不気味さを放つ。
!反応が近い!
「来るぞ!」
森から何匹もの魔物が現れた。
いや、魔物だけじゃない?ただの動物も何匹か見える。
フェンリルは森の統治者っことだからこの動物たちもフェンリルの仲間なんだろう。
でも共通しているのはみんな獣の姿をしていると言うこと。
わたしたちの姿を見た相手は犬歯を、牙を覗かせて威嚇する。
両者しばらく相手の出方をうかがった。
先に動いたのは相手側。
わたしが前に戦ったベアウルフが一気に距離を詰めてきた。
早い!
おそらくフェンリルの能力で強化されているからだろう。前に戦ったやつより格段に強くなっている。
でも!
ベアウルフの牙が自衛団の1人を噛み切ろうと襲いかかった。
しかしその攻撃は難なくかわされ、逆に反撃の剣がベアウルフへと迫る。
ベアウルフはすんでのところでそれをかわし、再び距離をとる。
「な!か、体が軽い!それにいつもよりも力が出る!」
反撃をした自衛団の人は驚きながらそういった。
その言葉に他の人も「た、確かに」と驚きを見せる。
うまく『鼓舞』が発動したみたい。
「わたしが皆さんの力を強化しました!これなら一方的に倒されることはないと思います!」
自衛団の人たちから驚きの声が出る。
「これならいけるぞ!」
その言葉に「おう!」とおうじ、自衛団の人たちは反撃に攻め出た。
それに合わせて『奮起』で彼らの士気がわたしの力になる。
「まったくあんたはすごいね」
パキラさんもそう言って攻撃に出た。
わたしもいくよ!
『ティールセント』『ティールセント』『ソウェールビア』!
『ティールセント』と『奮起』によって強化された光の雨が魔物たちへと降り注ぐ。
さらに
「『イズレート』!」
『並列思考』で攻撃を維持しつつ『イズレート』で戦っている自衛団の人たちに当たらないように調整する。パキラさんは・・・ひとりでどんどん倒していっている。あの様子だとむしろ邪魔になりそうだからわたしは自衛団の人たちの援護とそのほかの相手への攻撃に専念しよう。
わたしたちの攻撃は次々と相手を倒していく。
しかし数は相手の方が圧倒的に多い。その上中には上位の魔物もいて自衛団への被害も少しずつで始めた。
一進一退。両者互いに譲らない。
でもこのままじゃ数が多い相手の方の粘り勝ちになってしまう。
わたしは『ソウェールビア』を複数発動する。
それをさっきと同じように『イズレート』で操作する。
数が増えればその分集中力が必要になるし魔力消費も大きい。
けどその分攻撃は強くなる。
光の雨。いや、もはや光線とも言うべき攻撃が相手に襲いかかる。
はぁ、はぁ
相手の反応が少なくなる。
「よし!このまま押し切るぞ!」
自衛団の人たちがやる気を見せる中、パキラさんは緊張のおもむきでわたしの方にやってくる。
「気づいているかい?」
「はい」
さっきからずっと『危機察知』は発動しているのに肝心のフェンリルの反応がない。
「まぁ来ないに越したことはない。が、それがまた恐ろしい」
そう言いながらもパキラさんは自衛団の援護に向かう。
わたしも!
ゾクッ‼
後ろから感じる強烈な威圧感。
『危機察知』にいままでの相手とは比べ物にならないほどの大きな反応。
パキラさんが「にげろ!」と叫ぶのとものすごい衝撃がわたしを襲うのは同時だった。
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