manège

 それから僕は、仲間たちがJeanneの練習をしている時に、プチ・ブルボン宮を訪れるようになった。そして、陛下が主役のバレエに参加することになった。


 練習は、はっきり言って厳しかった。


「Yves、着地が甘いですよ。タイミングを合わせて」

「はい」

「しなやかさが足りません。もっと宙を舞うように」

「はい」


 自慢じゃないけれど、僕はバレエがそこそこ上手かったから、怒られるよりも褒められることの方がずっと多かった。だけど、ここでは指導されてばっかりだ。

 周りのレベルの高さに圧倒されつつも、僕は負けじと練習した。意地の張り合いなんだ、芸術家っていうのは。

 

 それにしても。


 僕は、ちらっと陛下を見る。


 それにしても、陛下の踊りは凄かった。国王であることを抜きにして、純粋にバレリーノとして比べてみたって、僕なんかじゃ敵いっこない。


「もう一度、登場のシーンをやりましょう」


 陛下はそう言って、美しく宙を舞う。

 ただ踊るだけじゃなくて、周りの演者に指示も出す。


「貴方は、もっとゆっくり」

「音を立てずに、なぞる様に」


 陛下は太陽の役だ。燦々と照りつける、光の役。

 でも、僕の知っている「太陽」とは違う。


 陛下は、儚い。なのに、芯がある。

 羽の様に柔らかくて、大木の様にしっかりしている。

 

 ……こんなこと、他の誰にも真似できないよ。

 僕はいつだって、陛下の踊りに見惚れていた。

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