孤高の戦艦:艦隊との戦い

水国 水

敵艦隊はここで倒すッ!

 太平洋上空、その遥か先。


 大気圏にそれはいた。

 漆黒に赤のラインが入った色の魔導戦艦。

 前方には長く伸びた艦首、その下部は3本のレールが三角形状に設置され、それぞれの辺が接触しないよう空間が空けられていた。

 艦の中心からやや後方にブリッジ。左右には竜の羽を模した機械仕掛けの翼が大小2個付き、空中にて姿勢制御の役割を担っている。

 そして反重力エンジンを搭載し、後方——艦尾付近には予備の反動推進エンジン6基。

 世界を探しても個の艦としては唯一二つの動力を持ち合わせた艦だ。

 

 その時艦内にて突然、警告音が鳴り響きモニターに『ENEMY5』と表示される。


「敵艦感知ッ! 数5隻です!」


 レーダーを見ていた男が声を上げた。

 周囲に散布していた魔素の範囲に敵艦が入った通知である。 

 ブリッジにて艦長が一言「戦闘準備」と司令を出す。


「艦長より通達————全乗員は所定位置へ。本館はこれより戦闘体制に入る」


 ヘッドフォンを付け、座席に座る男がマイクへ言い、船内の全ての部屋へ流れる。それを聞いた乗員は一人残らず、動きだし、各々決められた作業へ取り掛かる。


「魔力充填——完了」

「全武装点検完了。」

「予備及び主力動力確認。完了」


 次々と報告が上げられる。


「システム、武装全てオールグリーン。準備完了、いつでも行けます」


 隣に立つ副艦長が艦長へ伝える。


「ではこれより本艦は戦闘に入ります————ブリッジ戦闘艦橋へ移行」

「戦闘艦橋へ移行します」


 合図により、モニターが起動。180度前方が障害物無く見渡せるように


「移行完了」


 それを聞いた艦長は前を見据え、


「それでは————発進ッ!」


 と力強く言う。


「発進ーーッ!」


 反重力エンジンが作動し、合計4基の両翼及び艦底より、ドーナツ型のエフェクトが出現。戦艦が雄叫びを上げるように動き始める。

 

「前方、敵艦4、その奥に旗艦を確認」

「来たか。誘導弾よーい、正面敵艦。先手で仕掛けるッ!」

「了解。誘導弾装填」


 左右それぞれ10基の誘導弾が装填される。


「撃てえッ!」


 一斉に誘導弾が敵艦へ向けて発射。望遠鏡を覗き、状況を確認していた副館長が誘導弾の煙幕から着弾を確認する。


「着弾確認」


 煙幕が風により剥がれるとそこには無傷の艦隊がそのまま進行中であった。

 

「防がれたか……」

「敵艦艦首に高エネルギー反応! 魔力砲ですッ」


 敵艦から主砲級のエネルギー波を感知。魔力砲のようだ。


「ならば、アンチマジック爆雷発射っ!」


 艦長はすぐさまアンチマジック爆雷の準備、発射を指示する。

 アンチマジック爆雷。主に魔素を利用した魔力砲を無効化するために搭載された爆雷。発射され、爆発することで周囲に高濃度の魔素を散布。魔力を扱う兵装を無効化することができる。ただすぐに霧散してしまうため、永遠に無効化できるわけではない。


 そして同時に敵艦より魔力砲が発射される。


「正面、敵艦。魔力砲発射を確認、また無効化を確認しました」


 この間にもそれぞれの艦は進み続けている。


「艦首砲『ソーサリーキャノン』照準、敵艦隊————撃てえっ!」


 艦首に設置されている左右二門からレーザーが4本放たれる。

 敵艦は左右と上へ回避行動を取るが、そのうちの一隻。先ほど主砲を撃ってきた敵艦へと直撃した。


「敵艦直撃。一隻撃墜しました。他二隻は左右へ回避行動」

「残骸が旗艦の射線を塞いでいるうちに落とすっ。推力最大、まずは右舷敵艦。面舵10」

「了解、面舵10」


 艦長の指示により、戦艦を右へ10度回転し、射線上に敵艦を入れるよう調節する。

 敵艦も即座に調整したのか、左右からミサイルが複数飛んできた。


「敵艦よりミサイル発射を確認。回避、間に合いません!」

「このまま行く。バリア展開。また、降下しつつ反重力場を後方に展開。最大推力、全速前進!」


 と指示を出す艦長。


「バリア展開します」


 艦正面にバリアが展開され、ミサイルがバリアへ衝突する。全てバリアを貫通することは無く、無傷の状態で敵艦の至近距離まで迫ることができた。

 

「『グスタフ』照準、敵艦」 


 艦尾に一門搭載した80m砲の照準を敵艦へ向ける。


「撃てえっ!」


 ドンッと轟音を立てて弾が発射される。

 敵戦艦もやられてばかりじゃいられないと言わんばかりにビーム砲を乱射してくる。が、それも放った弾が着弾することにより、撃たれることは無くなった。

 ちょうど敵砲台に着弾したようだ。


「攻撃の手を緩めるなっ! 対艦隊ミサイル、撃てっ!」


 間髪入れずに攻撃を続けることで敵艦は回避行動をとっていたが、逃さず仕留めることに成功する。


「敵艦撃破を確認!」

「気を抜くなよっ、あと三隻だッ!」


「左舷敵艦二隻確認」

「奴ら攻撃を仕掛けて来なかったが……状況確認急げ!」

「了解!」


 返事をし、オペレーターは戦況確認を急ぐ。


「左舷より高魔力反応! 先ほどの主砲より大きい反応です!」

「何!? 先ほど仕掛けて来なかったのはそれを溜めるためか……」

「モニターへ写します!」


 正面上に表示されたモニター。そこには戦艦二隻が並行に並び、停止している様子が写っていた。

 そして二隻の間、ちょうど中心に魔力の塊のようなものが浮かんでいる。


「一隻、囮に使ったのか!?」

「そのようです。私としては主砲を使う方がいいのではないかと」

「あれがどのくらいで発射されるのかわからないが、こちらの主砲も溜める時間が必要だ。どちらにせよ向こうが先に撃てるだろう」

「……ならば——」


 その時、敵艦を監視していたクルーが大声を上げる。


「敵艦中心に存在する魔力の塊が圧縮されていきます! まもなく発射されるものかと」

「射線上から離れつつ攻撃するッ! 取り舵いっぱーい、右舷魔弾よーい」

「取り舵いっぱーい」


 操舵手が左へ目一杯、舵を切る。

 そして艦の右舷が敵艦正面にきた時、


「撃てえっ!」


 艦長からの号令が入る。同時に右舷甲板から魔弾が複数放たれた。


「取り舵戻せ。そのまま全速前進」


「魔弾、着弾を確認。敵艦の損傷は軽微の模様」

「対魔装甲か」

「おそらくは」

「であれは……取り舵そのまま全速前進——ッ! いつでも回避できるように用意だけしておけ」

「了解。全速前進——!」

「敵艦照準修正中、魔導砲発射体制に入った模様」

「分かった。誘導弾全弾発射!」

「誘導弾全弾発射」


 乗員の一人がボタンを押す。それにより艦に搭載されている誘導弾が全弾発射される。

 瞬間、艦内を衝撃が襲った。


「なんだっ!?」

「攻撃です! 右舷方向。敵旗艦です」


 今まで傍観を決め込んでいた敵旗艦からの攻撃だった。


「なぜレーダーに引っ掛からなかったんだ!?」


 副艦長が驚いたように呟く。


「それは後でだッ、フェザーを出せ! 同時に反動推進エンジンを使用、旗艦より先に奴らだ」


 艦長が指示を飛ばす。


「六機全て分離し発射、右舷敵旗艦からの攻撃を防げ!」

「了解」


 複数人が画面を操作し、両翼の先、羽を模したパーツが分離し六機飛び立つ。

 再び敵旗艦から魔導レーザーが放たれる。それをフェザーが受け止め、無効化する。実弾に対してはフェザーが魔導レーザーを放ち、撃ち落とす。


「そのままの防御を維持。反動推進エンジン点火! 反重力エンジン停止」


 艦長はそう言うと、手元のレバーを押し込む。

 艦は急激に加速し、敵艦二隻が待ち受ける場所へ突き進む。


「敵艦、魔導砲発射されますっ!」

「反重力エンジン点火。左舷に重力場を生成しろッ!」

「はいッ!」


 そして艦長はマイクを持つと、


「本艦はこれより左舷に反重力エンジンのシステムを利用し左舷に重力場を生成、魔導砲を回避する。総員衝撃に備えよ」


 と艦内に向けて伝える。それを聞き、ブリッジ内ではシートベルトをよりキツく締める者も。艦内では何かに捕まる者やベルトを付け自身を固定する者たちがいた。


「いきますッ!」


 反重力エンジンを点火。左舷に重力場を生成し、艦は引き寄せられるように左舷方向へ移動する。

 真横を魔導砲が通り過ぎる。


「反重力エンジン停止。反動推進エンジン点火——ッ! 全速前進。右舷の射線が魔導砲で塞がっているうちに敵艦を落とすぞ!」

「全速前進——ッ!」


 艦は加速し、正面敵艦二隻へ向けて接近する。


「魔弾及びソーサリーキャノン発射よーい——————撃てえっ!」


 魔弾と艦首砲「ソーサリーキャノン」が敵艦めがけて発射される。

 敵艦も防ごうと弾幕を張り抵抗してくるが、魔導砲にほとんどのエネルギーを使っているのか弾幕量は少なくそれぞれに痛手を負わすことに成功した。


「敵艦損傷」

「攻撃の手を緩めるなっ! グスタフ照準、敵艦。対艦魚雷、対空ミサイル、陽電子砲———全弾発射よーい!」


 艦長からの指示が矢継ぎ早に飛ぶ。


「了解!」


 そして照準が定まったことを知らせる合図が届き————


「————撃てぇ!」


 艦長からの砲撃指令がブリッジ内に響く。

 瞬間、数々の砲門から射撃が行われる音が轟く。

 青、白、緑など様々な色の砲撃が敵艦へ迫る。敵艦は魔導砲を発射しているせいで自艦が被弾するため動けずにおり、格好の的となっていた。

 そこへ放った砲撃が到達し、爆炎と黒煙を上げ、魔導砲が急速に縮み消えていった。同時に敵二隻は沈黙。地上へと落下を始める。


「敵艦二隻撃破!」

「まだ旗艦が残っているッ! 気を緩めるなよ。旗艦の位置特定急げッ」

「右舷、まだ目視で確認はできません」

「目視で確認できない……? 退いたのか?」

「いえ、魔導レーダーによればまだこの空域にいるようです」

「何かをする気ということか」

「可能性は高いですね」

「主砲を撃てるようにしておけ。旗艦の位置を特定次第、発射シークエンスに入る」

「了解」


 その時、レーダーから敵旗艦の反応が消えた。


「——っ!? 艦長、敵旗艦がレーダーから消えました!」

「消えただと」


 その時————突如、艦内に轟音と共に振動がやってきた。


「なんだッ!?」

「右翼被弾っ! 火災発生、消火急いでいます!」

「右翼だと、一体どこから……」

「熱源探知を使用したところ艦尾方向から反応があります!」

「一度、この場から離れる。反重力エンジン起動、左舷へ旋回しつつ距離を取る」

「右翼の消火完了————了解!」


「後ろに遠隔式魔導ミサイルを展開。無点火状態でその場に維持」

「了解」


 艦の両舷から放り出すように射出される遠隔式魔導ミサイル。広く展開し、トラップとして役割を果たすだろう。

 そして艦が加速し、左へ旋回しつつ距離を取る。

 


 ————それから10分ほど距離を取り、敵艦の反応がレーダーの端に出現。


「そろそろか。急速旋回、艦首を敵旗艦へ向けろッ!」


 敵からの攻撃が収まり、距離も取れた時に次の指示を飛ばす。


「旗艦の位置はわかるか?」

「前方約300キロメートル先、魔導レーザー反応あります」


 艦の左右をレーザーが通り過ぎる。敵旗艦からの攻撃だ。


「フレア弾及び対魔弾装填————撃てぇっ!」


 艦側面のハッチが開き、フレア弾と対魔弾が発射される。

 敵の放ったビームや魔弾と接触し、周囲に煙が立ち込めた。


「敵旗艦、遠隔式魔導ミサイル地帯を通過しました」

「分かった。前方魔導バリア展開」


 艦を守るように半透明のバリアが艦首前方に出現。


「艦停止。本艦はこれより主砲発射体制に入る。『ジャガーノート』よーい」 

「反重力エンジン下部のみに変更、艦停止。ジャガーノート起動」


 主砲『ジャガーノート』船首下部に取り付けられた魔導式荷電粒子砲が起動し、艦首下部に備え付けられた砲身が青白く輝き、甲高い咆哮を上げる。


「チャージ完了まであと10、9、8、7……」


 エネルギー充填完了までのカウントダウンが始まる。


「敵旗艦に高エネルギー反応!」

「……3、2、1————主砲チャージ完了」


 砲身がさらに輝く光に包まれ、スパークが発生する。


「撃てえっ!」


 魔導粒子加速器により亜光速まで加速された荷電粒子が、光の奔流となり敵旗艦向けて放たれる。

 

「敵旗艦、主砲発射を確認。こちらの攻撃と衝突します!」

「来たか。押し切れえっ!」


 そして敵旗艦とこちらの艦の主砲が衝突し、激しい光が辺りを包む。


「遠隔式魔導ミサイル点火。敵旗艦の後方より攻撃を仕掛けろッ!」

「了解! 遠隔式魔導ミサイル点火——!」


 ボタンが押され、敵旗艦の艦尾めがけて突き進む。

 瞬間、敵旗艦から上がる煙を確認。

 

「遠隔式魔導ミサイル敵旗艦へ直撃を確認」

「出力最大。この隙を逃すなッ!」

「出力最大——!」


 ジャガーノートの出力が上がる。

 先ほどよりも膨れ上がった光の奔流。それは敵旗艦を飲み込むように突き進む。

 そして到達。

 敵旗艦は光に飲み込まれ、跡形もなく消滅した。


「敵旗艦消滅」

「戦闘終了。これより本艦はこの空域を離脱する」

「了解」


 こうして敵艦隊との戦闘は本艦の勝利で幕を閉じた。





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SEED FREEDOMと宇宙戦艦ヤマトを見てから無性に書きたくなってしまった結果、プロット無しでの突貫執筆となりました。

1日でヤマト2199TV版を見切ってしまった。面白い。


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